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第三話 『断絶』


「チリリリ...チリリリ」

いつものようにアラームの電子音が鳴り響く。

窓からは朝日が差し込む。

「カチッ!」

部屋の中は静寂に包まれる。

アーシェンは珍しく自分でアラームを止め、リビングへと向かう。


ア「おはよう。」


母「あら、自分で起きてくるなんて珍しいね。」

母は驚きつつも、どこか嬉しそうだった。


世界は昨日のことなどなかったかのように、何も変わらない。

しかし、アーシェンの頭の中には昨日の父の言葉が何度も繰り返す。


ア「光と影...真実は自分で掴めか...」


朝食を食べながらアーシェンは一人呟く。


胸の奥の小さな棘はまだ取れずにいた。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか家を出る時間になった。


母「アーシェン!早くしないと遅刻するよ」


アーシェンは急いで制服に着替え、玄関を飛び出した。


ア「行ってきます!」



レ「アーシェン、おはよー!昨日なんか変だったよ?」


教室に入るなり、友達のレイトが笑いながら背中を叩いてきた。レイトとは幼い頃からの友達だ。そしてもう一人の友達、エリアスはじっとアーシェンの顔を覗き込む。


エ「また寝不足?ほら、目の下。クマできてる」


ア「うるさいなあ...大丈夫だって」


そう返しながらもアーシェンの心はどこかふわりとしていて、掴みどころがなかった。

あの"声"の正体はなんだったのか。父に話したが、謎は余計深まるばかりだった。

ホームルームが始まるとアーシェンは窓の外に視線を向けた、雲ひとつない快晴のはずなのに、どこか濁って見えた。



その頃、アーシェンの父、リアンは研究室にいた。

いつもは静かな研究室。だが、今日はリアンのキーボードを叩く音がやけに早く、力がこもっていた。


一緒に働く研究員が言った。


研A「リアンさん、本当にやるんですか。危険だって言ってたじゃないですかーー」


リ「わかってる。でも時間がないんだ。息子が..."声"を聞いた。」


研A「まさか!そんな...適合の兆しが」


リアンは返事をしなかった。だまって分厚い資料と膨大な研究データに向き合う。


リアンは一冊の古いノートを手に取った。そこには長年研究してきたエーテルの構造、世界の真理や古代コア(エインシェントコア)に関して、さらには強大な"光"が生み出す"影"についての記述が雑多に書き込まれてあった。


震える手で新しいページをめくる。


リ「アーシェン...お前には伝えなければ...」


リアンは独り言を呟き、書きかけの資料に走り書きを続けた。


古代コア(エインシェントコア)の適合者レゾナント、エーテルの意思、レゾナントが科される代償、そしてエーテルの"闇"についてーー


どれも世界の根幹を揺るがす真実だった。



昼休み。


レイトがパンを半分にちぎって放り投げる。


レ「ほら、ちゃんとキャッチしろよー!」


ア「お前もっと上手く投げろよ」


エリアスは呆れながらも笑っている。

そんな他愛もない日常がアーシェンの心を少しだけ軽くしていた。

その瞬間だったーー


「ドクン」


胸の奥で低い音が鳴った気がした。ただの心臓の音ではない。何かが外から叩いたかのような異物の音に感じた。

アーシェンは無意識に胸をおさえた。


エ「どうしたアーシェン。体調悪いのか?顔色も悪いぞ」


ア「いや...ちょっと変な感じしただけ。」

「大丈夫だよ」


ふざけていたレイトも首をかしげ、心配そうに見つめている。何気ない日常の中に、また違和感が溶け込んだ。



同じ頃ーーリアンの研究室


?「お前は知りすぎた」


不意に誰かが背後から呟いた。

リアンは咄嗟に振り払うが誰もいない。それどころか、どんどん"何か"が近づいてくるようにさえ感じた。


リ「ここまでか...」


資料をまとめる手が止まる。

机の上には銀色の鍵と一通の手紙があった。


アーシェンへーー


そう書かれた手紙の上に黒い影が落ちた。


リ「想定より早かったな。すでに知っていたのか...」


リアンは椅子から立ち上がる。次の瞬間ーー

強烈な光がリアンの視界を覆った。

心臓が掴まれたかのような痛み。呼吸が止まった。あの声がもう一度囁く。


?「お前は...知りすぎた」


床に崩れ落ちる音だけが、研究室に静かに響いた。光はゆっくりと揺らぎ始めやがて炎へと変わった。普通の炎ではない。低く鈍い音を立てながら、広がっていく。まるで研究室そのものの魂を喰らうかのように燃え盛った。やがて炎は深い蒼へと色を変え、全てを焼き消した。



午後の授業が終わった頃、教室の扉が静かに開いた。


先生「アーシェン、ちょっと来なさい。」


アーシェンは嫌な予感がした。


先生に連れられて校門まで来た時、母が立っているのが目に入った。

母の目は赤く充血しており、頬には泣いた跡があった。母は震えた声で


「アーシェン...お父さんが....」


その瞬間アーシェンの耳にだけ、別の"声"が届いた。


?「奪われた。間に合わなかった...」


とても冷たく、悲しい声だった。

アーシェンの唇が震える。


ア「.....うそだ...」


第三話『断絶』完



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