3.5 とある居酒屋での会話
居酒屋で四人の男が酒を片手にダベっている。
肴は、かつてよくチームに遊びに来ていた子供の話。
「鴎ちゃんはワシが育てた」
「いや、俺が育てた」
「いやいや某が」
「誰も育ててねー(笑)」
男達はお揃いのユニフォームを着ている。
どうやらスポーツ帰りの打ち上げのようだ。
「しかしまあ、あの小さなかった鴎ちゃんが今ではもう地元の星だもんな。歳をとると一年が早い早い。」
「昔キャッチボールしたの、いい自慢話だよ」
「当時から上手かったよな」
「覚えてるか、確かあの子が十ニ歳の時に……」
酒も回り、思い出話に花がさく。
「あー、はいはい。」
「ゲンさんが試合前に肉離れして」
「そういえばアレが鴎ちゃんの野球デビュー戦になるのか」
「まあ、ソフトボールだけどな」
男達の脳裏には、急遽人数合わせで入れたはずの子供がその日のチーム最優秀選手に輝いた光景が思い出されていた。
「チームに入っている誰かの子供が急遽人数合わせで入る事はたまにあるけどよ、基本あんな活躍できないよな。」
「だな、間違いない。」
「しかも鴎ちゃんの場合、本格的に野球を始めたのは中学生になってからだしな。それであれだけやれてたんだからモノが違うよ」
「航希も、鴎ちゃんが中学に上がる頃にはキャッチャボールの相手が大変だって言ってたな」
いい歳になった自分達。選手としてはもう下り坂だ。だが、プレーとは別に、こうして可愛がっていたチームメイトの子供がどんどん高みへ昇っていくのをみて、思い出話に花を咲かせるのもまた草ソフトの醍醐味である。
「今のうちにサインでもお願いしとくか」
「俺はもう貰ったぞ。『サイン、考えてないです』って、色紙には『湊鴎賀』ってがっつり漢字で書かれたけど。」
「いいじゃん、逆にレアだよそれ」
「あの子がプロになったら店に飾ろうぜ」
ははは、と笑い声が響く。
話はまだまだ長くなりそうだった。
草野球メイトのおじ様の息子、会うたびに上手くなっていくんですよ
次回は1月21日に投稿します。




