11.学生野球における淘汰
名将、竹中監督の育成方針の一つに紅白戦の多さがある。練習試合よりも紅白戦の方がサブ組の出場機会が増え、チーム内競争の活性化や選手間の相互理解が増すという考えからだ。
また、そこで気づいた個々の課題を元に平日の個人練習を行って行く事で、八幡高校はこの一年で急速なレベルアップを果たしたという。
「いやー、しかし入部一週間でいきなり紅白戦があって、また湊鴎賀くんとバッテリーを組めるなんて嬉しい誤算っスね」
「試合の真っ最中に説明くさい台詞をありがとう、大樹匠くん。その調子で二巡目も上手い事リードしてくれよ」
現在、紅白戦の真っ最中。3回の裏まで終わり、こちらの攻撃中に匠と打ち合わせをしているところだ。投手としての途中経過は無死球、被安打が一つに、奪三振が二つ。
「……で、ぶっちゃけどうっすか?Aチームの先輩達と真剣勝負してみた感想は」
「……流石は高校野球だ。わかっちゃいたけど、レベルが高い。」
中学時代は全国大会でも、『純正縦回転ストレート』に打者の目が慣れない一巡目は半分以上三振を奪っていたんだが、現在の奪三振は僅かに二つ。
本日の俺は『球数制限70球、最長5回まで』と指示をうけていることもありツーストライクからもガンガンストライクゾーン勝負しているんだが、それにしても三振がとれない。
また打つ方も、細川やニックと言った各中学のクリーンナップ級が軒並み押さえ込まれている。新入生で長打を打ったのは、今のところ匠だけだ。
理由はシンプルに、先輩達のレベルが中学生軟式の全国クラスよりも高いから。硬式野球用のバットの重さについては全員入部前から素振り位はしてきてるだろうしな。
当然のことながら、小学校、中学校、高校とカテゴリーが上がっていく中で野球のレベルもまたグンとあがっていく。
一番の理由はもちろん身体が成長し技術も向上するからなんだけど、もう一つ大きな理由としてカテゴリーが上がる中での淘汰がある。野球部というのは人気がある一方で結構ハードな部活という事もあり、控え選手だった者や上のカテゴリーで通用しないと思った者は違う部活を選択する事が多いのだ。データをみると今の時代中学野球の競技人口は30万以上いるが、高校野球部員になるとその数は12万人にまで減少していた。
つまり、高校野球部員の殆どは中学、高校とカテゴリーがあがる二回の淘汰を生き残った各校の精鋭という事になる。敷居高めだから未経験者もあんまり入部しないしな。
しかし、田舎の公立高校でこのレベルとは流石、野球大国日本……名将の竹中監督に一年鍛えられてきた人達とはいえ、高校野球って中学軟式とは全然違うわ。
「でもまあ、それはそれとして折角のアピールチャンスだから、五回は投げきりたいしもう少し三振も奪っておきたい」
「同感ッス、でも正直ストレートとチェンジアップだけだと少し手詰まり感があって、二巡目はもう少しヒットも打たれると思うッスよ」
「だよなぁ……」
今の俺の球速は130キロちょっと。
中学軟式野球では上の上だが、高校野球だと中の上か、よくて上の下くらいのスピードだ。匠はうまくリードをしてくれているが、これとチェンジアップだけだとちょっと手札が足りない。
ならどうするか?
「よし、プランBだ。奥の手を使おう」
決まっている、使えるカードを増やすのだ。
本日はWBC2026の初戦!
大谷選手、衝撃の満塁ホームランでしたね
次回、3月13日に投稿予定です




