1.史上最強アスリートの理論
「うわ、本当だ!すっごく早い。」
「でしょう?一日中家の中を動き回っているの」
「鴎くんはハイハイがとってもお上手でちゅねー」
そうやって呼びかける母親とその友人に「ねー。」っと笑顔で答える俺の名前は湊 鴎賀。
この間一歳になったばかり、ムチムチほっぺのナイスガイだ。
なんで一歳の子供がこんなスムーズに思考化できているかといえば、人生二周目だからである。一度目の人生を病で早めに終えた俺は、気がついたら前世の記憶を持ったまま0歳時点まで逆行していた。
幸い、前世嗜んでいたなろう系作品のお陰で『やり直し』とか『回帰』とか『タイムリープ』という概念はすぐ理解できた。
ただ、0歳スタートは中々きつかったわ!
特に、ゴロゴロ寝返り打てるようになり、視力が大人並みになる5ヶ月目くらいまでは出来ることがなさすぎて一日が長い長い。
まあ、暇だったお陰で今世の指針をゆっくり考えることはできたんだけどね。
「ねえ、鴎くんは将来どんな大人になるのかな?」
「やきゅ、やきゅ」
『大好きな野球をとことん突き詰める』
これが、二度目の人生グランドデザインだ。
前世で死ぬ前に妄想していた通りだね。
語弊を恐れず言えば今世はボーナスタイムみたいなもんだし、前世同様に30過ぎには厄介な病が発病する確率も高い。だからとにかく前のめりに生きようと思う。
というわけで、現在は前世で得た医学やトレーニングの知識を活かして身体を鍛えている最中だ。そうでもしないとやる事もできる事も少なすぎて退屈なのもある。
「なのに、なかなか歩きはじめないと」
「そうなのよ、ねー鴎くん。なんでかしらね〜」
おっと、よい質問ですね母さん。
現在、俺は生後十三ヶ月。
正常発達だと十ヶ月でつたい歩きが始まって、十二ヶ月頃には数歩歩けるようになるから、確かに俺の歩き始めは多少遅れている。
それでも一応正常な範囲ではあるんだけど、他の子よりも立って歩けるようになるのが遅いと親として気になるのは当然と言えば当然だ。
でもこれには二つの理由があるのですよ。
一つ目は、足の骨が歪むリスクを避けるため。
足の骨や筋肉が未発達のうちに立って歩いてとしてしまうと、踵の骨が外に歪んで扁平足になったりすることがあるのだ。まあ、今の月齢なら多分もう大丈夫なんだけど、俺の場合は普通の赤子よりも運動量が多いからね。
二つ目は、ハイハイの方が歩くよりも上半身や腹筋背筋の良いトレーニングになるからだ。ただのハイハイと侮るなかれ。
ほら大人だって100mを歩いて移動するのは楽でも這って移動するのは結構しんどいじゃん?つまり、それだけいい全身運動になるってことだよ。加えて最近は前後左右に這ったり膝をつけないより高度なハイハイ、いわゆる高這いもよく行っている。
加えて言えばこの這うという運動はハンマー投げで金メダルを獲得した日本史上最強アスリートの一柱がトレーニングに組み込んでいたりするのだ。まあ、あのレベルになると筋力強化というよりは人間本来の効果的な身体の使い方やバランス感覚を再獲得するという意味が大きんだけどね。
というわけで、歩き始めはあえて遅くしている。ぶっちゃけるともう立って歩いてもできるんだけど、一度スタスタ歩けるところをみせてしまうと、また四つ這い運動に戻るのが不自然に見えてしまうからね。
なので、両親には悪いがあと半年くらいはハイハイをメインの移動手段にするつもりだ。勿論、ガチで心配し始めるようならその限りではないけどね。
「志帆の子供だし、貴女に似てのんびりしたところがあるのかもね」
「あはは、そうなのかも」
そうそう、何も心配いらないから。こいういうとき、母さんが元々大らかな人で本当に良かったと思うわ。
Re:ゼロ歳児から始める野球小僧生活




