一旦エピローグ
最後の総体は優勝で幕を閉じた。
全国では途中若干ヒヤッとする場面もあったけど、終わってみれば全試合無失点。匠や河野の活躍もあり運の要素も大きく絡むタイブレークまでつれることなく勝ち切ることができた。
「本日は遠方よりどうもありがとうございました。」
「こちらこそ、キミがウチに来てくれることを期待しているよ」
その効果もあり複数の野球強豪校からスカウトも来るようになった。
笑顔で見送りほっと一息をつく。
現在の俺のスペックを数字にすると大体こんな感じだ。
球速:132km 打率:6割5分 身長:173㎝ 体重:63㎏。
だが、これで世代のトップに立ったわけではない。
競技人口が多い都会の野球エリートは中学生のころから部活の軟式野球ではなくて硬式野球のクラブチームで活動しているからな。その中にはこの時期に140km近い球速を出す選手だっている。骨端線が閉じる前に重い硬球を投げまくるのは故障リスクが高いし近くに適当なチームもなかったから俺はその道を選ばなかったが。
そんな、本気でプロを目指している上澄みたちと競うこれからが本当の勝負だと言える。
だから現在、前世と同じく地元の高校に進学する場合と、地元を離れ強豪校に進学する場合、それぞのメリットとデメリットを天秤にかけて進学先を熟考している最中だ。高校ではより本格的な筋力トレーニングをやっていくつもりだし、試合だってより高度で戦略性の高いものになってだろう。時代が進み、周囲の選手もより賢く成長する高校では今までより転生のアドバンテージは減る。
当然、前世以上に心身ともにハードになるし難しい場面も出てくるはずだ。
俺の身長と体重は前世よりも高い数字になっているが、おそらく遺伝的に身長は170㎝後半で止まる。将来180㎝が小柄の部類に入るプロの世界で活躍するためにはやるべきことが山積みだ。
だが、望むところである。
「ふ......ふっふっふ」
「どうしたの鴎賀、えらく上機嫌ね。」
「さっきの高校に行きたくなったのか?」
同席した父さんと母さんがが尋ねてくる。総体の活躍により息子が地元でちょっとした有名人になった今でもこちらの自主性を重んじ、心地よい距離間で応援してくれる尊敬できる両親だ。高校も「好きなところに行けばいい」と応援してくれている。まあ、母さんは若干さみしそうではあるが。
「いや、それとは別に高校生になるのが楽しみだなぁって」
幸い中学軟式では望外の結果を出すことができたが、自分のプランではここまでは膨大な基礎作りの時間だった。
そして、それはある程度達成できたと思っている。
『四肢の指先までイメージした通りに動ける神経系』
『お手本とする動作を最速でコピーする能力』
『スポーツ用の視力』
『他人よりも0.1秒以内に処理できる情報が多い脳』
『しなやかで強い肩甲骨周り』
『野球に必要な持久力』
『睡眠法や食事法など自分に一番合ったリカバリー方法の確立』
建築で言うなら、次はその基礎の上に城を建てる時期だ。
漫画で言えば若干退屈なダイジェストが終わり、手に汗握る本編が始まる頃。
「さてと、ちょっと夕方のトレーニングに行ってくるよ。2時間以内には帰るから」
「寒くなってきたのに、今日も精が出るなぁ」
「夕飯作って待ってるから、前みたいに遅くならないようにね」
「うっ......その節はすみません、つい熱中しすぎまして」
あの日は匠たち高校でも野球する奴らと合同練習して、締めに勝負したらつい熱が入りすぎたんだよ。やっぱり、気のおけない仲間とやる野球って超楽しいな。
ウォームアップがてら目的地まで軽いジョギングをしつつ、沈みはじめた夕日に誓う。高校野球ではもっと高いステージへまで昇り栄冠に輝いてやると。
「みてろよ、今の俺よりも高みにいる黄金世代ども……これから先の3年間で、まとめてぶち抜いてやるからな!」
たぶん今の俺、めっちゃ笑ってる。明確な目標をもって力を蓄えるこの日々が、今は楽しくて仕方がない。しかもこの先甲子園に行けば、将来プロ野球を席巻する黄金世代と闘うチャンスまであるときたもんだ。二度目の人生でもこの道を選んでよかった。
というわけで......今日も今日とて鍛えるぞい!
と言うわけで一旦完結。
もし続きを読みたい方がいれば感想欄で名門校ルートと地元校ルートのどちらが好みか、その人の希望をきいてから続編を書く予定
……にしていたんですが、尊敬する先輩作家さんからお薦めされた高校野球テーマの小説が超面白かったのでもう既に高校編を書き始めてしまいました。
なので、もうちょっとだけ続くんじゃ!
ストックはあるからキリ良い所まで週一くらいの投稿は出来ると思います。WBCと並行してこちらもお楽しみ頂けますと幸いです。
次回、2/27に投稿。




