8.また一緒に飛べるんだな、嬉しいぜ-本当に大丈夫なのか?-
全46話予定です
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アルファ隊をはじめとする各隊は、警戒の哨戒機を残しつつ順次弾薬と燃料の補給へと降り立っていた。その中でもアルファ隊とブラボー隊は優先的に補給を受けて、
「順次離陸を」
と言って直ぐに空の人となる。そうは言っても先ほどの話ではないが、時間にして隊が完全に飛び立つのに二十分以上はかかっている。それぞれの機体が弾薬を補充して、燃料を給油してとなれば必然的に時間がかかるというものだ。
それでも二十分ちょっとで全機が上がって来られたのは、基地部隊の練度の賜物だろう。何と言ってもここ旧トルコは地理的に大陸の国々とアフリカを遮る要所だ。必然的に同盟連合としても重点を置いている。そして元々のトルコという国だったころから旧NATOの主要国だったのだから、必然的に配備されるものも、配備されている人員も良いものが割り振られているのだ。
「さて、と。ちゃっちゃとM三一DIを落として他のサポートに回らないとな」
カレルヴォはそんな言葉を口にしながら内心は、
――また一緒に飛べるんだな、嬉しいぜ。
この転機を喜んでいた。それはそうだ、現在ゼロフォーはといえば[本業]に戻っているのだから、まさかそれが意思疎通を取りつつ、なおかつサポートに回ってくれるなんて。
しかし、
「本当に大丈夫なのか? そっちのほうもコントロールしてるんだろ?」
と素直に口にすると、
「そう難しい事ではない、と言いたいところですが、流石にそちらの機体のフルコントロールは不可能です。なので基本的には自分自身で動いてください」
とその相手から返事が返って来る。ゼロフォーだ。
「まずどうする?」
と尋ねてみる。こちらは一機失っているからアルファ隊だけで言えば全部で七機だ。その頃には何処で補充を受けたのか敵機もこちらに向かって来ていた。
思考する時間はそれほどない。敵も七機、おそらくM三一DIの部隊から優先的に補給を受けたのだろう、するとなると後続が来るのにそんな時間的な猶予もない。まぁ、それはこちらの陣営とて同じなのだが。ブラボー隊は別としてチャーリー隊以下がすぐに追って来る手はずである。
「一対一での戦闘を提案します。アルファツー、スリーで両翼に付けている通常型のM三一を引き剥がしてもらって」
「そこからがオレたちの戦いって話だ、聞いてたか?」
と無線で呼びかければ[イエッサー]という何とも威勢のいい声が返って来る。それくらいゼロフォーの戦績は既に軍内部で知れ渡っているのだ。一部では[戦の女神が付いている]という声すら上がっているくらいである。
「じゃあタイマン、張りましょうかね」
――きみと一緒ならどんな敵だって打ち勝って見せるさ。
カレルヴォはそんな事を考えながらスロットルを入れて敵機との距離を詰めていく。
双方が旋回で互いを避けたあとからが本番である。正面切ってのミサイルやバルカン砲などは大体がかわされる。かわされると分かっているのに無駄玉を打つ人間は両陣営にもいない。必然出来に[やぁ、こんにちわ]と互いに左旋回で避けたあと、いかにして敵の背後に回り込むか、それに尽きるのである。
そしてゼロフォーは、
「旋回中に一機落します、照準を」
そう言って予測線を出す。そこにはM三一DIの後方にいた機体にロックをかけるように指示が出ていた。
「了解だ、ロック、通常、ファイア」
という声と共に旋回中の機体からミサイルが放たれる。それは見事に目的の敵に命中したのだ。
――旋回中にロックオン、か。彼女が敵でなくて本当に良かったよ。
カレルヴォは次の作業に取り掛かっていた。M三一DIの背後を取るという本来の目的にである。
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