44.今回はよく頑張ってくれたな-まぁ、実はこちらにも秘めた策がある、という話だ-
全46話です
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クロイツェルはクラウディアたちと一緒だ。もちろんこの場には帰ってきたイリーナもいるのだが。
「今回はよく頑張ってくれたな、被害も大きかったが」
一同を介しながらクロイツェルがそう切り出す。
ここはミーティングルームである。それもレイドライバー部隊用のミーティングルームなので、盗聴対策がしっかりと施されている。入室できる人間も限られていれば、電波を出す機器はすべて持ち込み禁止、それがたとえスマートフォンでも、である。更に何処へだって繋げられる有線回線が敷かれている。もちろんこの基地、つまりグランピア基地の司令室にも、もっとやろうと思えば同盟連合の、共和国のホットラインにだって繋げられる。
世の政というのは国のトップがいて、その人間が各部に指示を出し、というのが普通であろう。合議制をとっている同盟連合とて大統領がいる。そして帝国にも。
しかしどうも、ここ帝国ではこの人物の影響が大きいのかもしれない。基本的には軍の指揮権はクロイツェルが握っている。それは上位の人間の意向があってのことなのだが、事実上はこの国の軍隊のほぼ全権を掌握しているといっていい。それは、それだけの駆け引きと、知性と、実績を積み重ねてのことなのだろう。
だから、
「レイドライバーの増産は引き続き行っている。もちろかパイロットの育成もだ。M三一DIの増産にも手を入れている。機体を失った人間は……あぁ、イリーナ君か、じきに補充されるだろう」
という言葉に繋がるのである。
しかし、
「参謀閣下、補充がなされるというのは?」
言葉の言い回しに気が付いたのが、レイドライバー部隊隊長のクラウディア少佐だ。彼女はクロイツェルの補佐官としてそれこそ色々な箇所に出席しているし、視察に連れていかれている。それは当のクロイツェルが[私の補佐として働いてもらうつもりでいる]と言っているくらいなのだからそうなのだろう。
そんなクラウディアが気付いた言葉の言い回し。それに対して、
「あぁ、そうだったな。イリーナ君の機体は現在不在だ。それを今どうこう言うわけではないし、皆もそれについては口にしないように。彼女は持てる範囲の力で、持ちうる範囲の結果を持ち帰った、そういう話だ。ああ、話が逸れたな。最終的には現在拿捕されている機体を再び充てるつもりでいるが、それまでのつなぎが必要だ、という話だよ。ほぼ出来上がっているのでそれを使うように」
クロイツェルは顔色一つ変えない。笑いもしないが、怒りもしていないのだ。
「それは……」
とまで出かかったイリーナの言葉を遮って、
「諸君、今回の戦線は非常に大変だったが、得るものもあった。一言でいえば、同盟連合はわれわれの想像しているよりもはるか先を言っている可能性がある、という話だ」
クロイツェルは自我のあるサブプロセッサーの存在に気が付き始めていたのである。
「今回の実戦データを分析した結果だ。それから言えば、同盟連合はやはり我々よりも二歩ほど先を行っているという話だよ。だが、二歩先を行っているからと言っても悲観してはならない。我々にはそれ以上の生産スピードがある。それに研究も引き続き続行中だ。あれから研究所ではほぼ自我を保ったコンピューターと融合した脳みそが作れた、という報告が上がっている。もちろん直ぐに実戦にとはならないかもしれない。まぁ、一言でいえば、楽観は出来ないが悲観する必要はない、という話だよ」
とまで言ってから、
「まぁ、実はこちらにも秘めた策がある、という話だ」
クロイツェルは笑みを浮かべながら、このパイロットたちがいる場で話を始めたのである。
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