43.で、他には?-全体の印象として簡素化されているのかな、と-
全46話です
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「で、他には?」
カズがそう尋ねると、
「コックピット周りでは特にこれ、と言ったものは無いですね。ただ、全体の印象として簡素化されているのかな、と」
それは前述の大量生産の痕跡へと繋がる。つまりは同盟連合のレイドライバーより[簡素化されて]作られているのだ。部品を一つ一つとってみてもそれはいえる話だ。同盟連合の機体であればここはこう、というものがとても簡素な作りになっている。それはそれだけ簡素化しても差し支えない、もしくは簡素化せざるを得ないとも言い換えられるだろうが、逆をただせばそれだけ簡略化してもあれだけの性能が出せているのである。
――それはつまり、帝国のほうが運用面では上手くやっているという話になるんだよな。これはこちらも少し考えないと。
カズにそう思わせるくらいには帝国の技術というのは、現状自分たちが持ちうる技術をフルに活用しているとなるのだろう。重要区画以外はできるだけ簡略化して大量生産をし、それを操るパイロットも相当数の人数輩出する。それがどれだけ大変な事かはカズが一番よく知っている。それほどこの、レイドライバーという存在は特殊なのである。
「製造に関してはこちらでも簡素化できる部分は洗い出してみて。もちろん本州の研究所とも打ち合わせを。パイロットとサブプロセッサーに関して言えば……これは要相談だよなぁ」
カズでなくともそう思えるだけのペースで帝国は増産をし、パイロットを載せてきているのだ。しかもそのレイドライバーに搭載される生体コンピューターは、自我を保持していない分だけ製造が簡単である。
「まぁ、今回これだけのものが手に入ったんだ、帝国さんもそうそう手出しはしてこないだろう。共和国に関して言えば、まだまだ道半ばだ。こっちは通常戦力さえ気にしていれば、ってそれは上の人の考えることか」
そんな話を交えながら整備に立ち会っている。現在の作業を主導している整備士は皆、研究所の、それも上位に位置する整備士ばかりである。それはカズがあえて呼んだのだ。[どんな機体か分からない、だとすれば手慣れた人間のほうがいい。それに上位の人間に直接見せることで何かの意見が上がるかもしれない]と。いわゆる百聞は一見に如かずというやつである。こんなところにもカズのやり方が出ている。皆で情報共有をし、皆で考える。そうすれば一人で考えていたものが大きく前進することだってある。
もちろん[人員整理]のあとも毎朝のミーティングは副所長のアイザックを中心に欠かさず行っている。専門用語を極力排した言い方で全員に研究報告をし、質問を受ける。もちろん、その質問にも[一般人でもわかるように]説明するのだ。研究所にいればそれなりの知識もつくし、多少の見分もできる。だが、それに頼らずあくまでも[一般人でもわかるように]説明するというのにこだわっているのだ。そうする事で自分がしている研究内容への再度の検証にも繋がるのである。
作業もほぼ終えて、これ以上はリスクのほうが大きい、つまりは誘爆しかねないというところまでバラしたあと、元の状態まで組み上げていく。もちろん記録はしっかりと取った。何なら材質の鑑定機器まで持ち込んでいたのだから、それはもう既に研究所で行っているのと同義と言っていいだろう。それだけの人員、資材を持ち込んで、このエルミダス基地という場所で行ったのだ。
――さてさて、帝国のクロイツェル参謀だっけか? どう出てくるのか。こっちとしては、ただただ黙られるのも困るしなぁ。
カズはそんな事を考えながら、これからの方針を考えていた。
カズが考える一番いい時間の過ごし方は[何もない]という理想だ。帝国も、同盟連合も、共和国もそれぞれが兵器を生産せず、人員の育成をせず、ただ時だけが粛々と流れていく。それが理想なのだがそんなのは夢物語なのは子供でも分かる。現に戦闘まで行かないものの、にらみ合いは世界中の国境線で行われているし、つい先日まで帝国と同盟連合は戦っていたのだから。
話を元に戻して、この鹵獲機体をいつまで持っておけるだろうか。もちろん、同盟連合にしたってレイドライバーの、三五FDIの生産は続けている。もっと言えば三八FIを途中から設計変更して複座化した三八FDIにした最新機種も、テスト飛行を順調にこなしているという。帝国ももちろんそうだろう。M三一DIというのが最新鋭機ではあるものの、その先の戦闘機を開発しているだろう。もしかしたら共和国だって、何某かの兵器を生産しているのかもしれない。
しかしながらこの時、まだカズの頭の中は帝国しか見えていなかったのだ。
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