42.さて、バラしますね-所ち……中佐、これは思った通りですね-
全46話です
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その鹵獲機体は、エルミダス基地の整備ドックへと持ち込まれた。予め関節はフリーになっているので、まるで糸が切れた操り人形かの如くハンガーに固定される。
「さて、バラしますね」
という研究所付きの上級整備士の号令の下、慎重に一つずつ外せる部品を外していく。これは人が思っているよりも大変な作業なのだ。なんといっても相手はレイドライバー、その存在自体が機密のカタマリであると同時に、内部に爆弾を抱え込んでいる機体だ。下手なところを触れば即爆発、となりかねないのである。
それでもレイドライバーという存在は、どの国でもある程度構造が似てくるのか、少しずつではあるが分解が進んでいく。
「所ち……中佐、これは思った通りですね」
カズに整備員が声をかけてくる。
――やっぱりか。
と思わせるその事実。それは極力人の手を介さない、機械だけで作れる手法で製作された可能性が高い、というものだ。
「まぁ、それだけでも分かれば今後の方針の立て方もあるからね。コックピット周りは?」
とカズが聞けば、
「ありましたよ。これは生体コンピューター、と呼ぶべきものなのでしょうか、それにしても小さいサイズだ」
と返ってくる。流石にそれを外すという訳にはいかない。
それは引き渡しの際の話である。
「き、機体はこ、これでフリーになっているから、釣り上げてくれれば運べるはずだ。あ、ああ、ただし」
イリーナ中尉がそう告げた内容。それが[この機体には生物組織が使われている、なので栄養パックはいじらないでくれ。栄養パックは背中のハッチの中に入っている]という内容だった。イリーナは極力平静を装って告げたのだろうが、
「あれは相当動揺した人間のそれです」
とあとでゼロフォーがカズに告げるほど声が震えていたという。
――まぁね[人の脳みそを使っている]とは言えないよなぁ。捕まえて全部吐かせた、なんて言えないわなぁ。
そう、カズたちはこの機体に人の脳みそが使われていることは既に知っているのである。だからこそ、初期の同盟連合のサブプロセッサーよりも小型の入れ物に入れられているというのが驚きなのだ。
「小型化する技術はあるんだね。それで?」
と促すと、
「どうやら脳波を読み取って行動予測をするような回路が組まれていますね。何かの電気的信号に感応してリアクションを起こしているようですから」
と、こちらも手慣れた様子で端末を操作しながら答える。整備士が手にしている小型端末、それは同盟連合が整備の際に使用している端末そのものなのだ。だが、それをそのまま繋いだのではこちらの情報が筒抜けになる。
だから、このような整備用端末には自身から特定されるような固有信号は出さないモードというものが存在する。純粋にアクションを起こして、返ってくるリアクションを読む、そういうモードがあるのだ。
彼が言うには[疑似脳波信号を送るとリアクションがあり、その反応は人間の脳波波形に合致する]というものだそうだ。
「つまりは、パイロットの思考を読み取って補助するという仕組みなわけだ」
この点から言ってもカズたちが作ったレイドライバーとは似ても似つかないシステムで動いているといえるだろう。
――確かに、初期段階ではそれも考えたけどね。
同盟連合は帝国よりも脳科学に優れている、と言えるだろう。そして、レイドライバーという兵器を初めて実用化したのもまた、同盟連合なのである。その中心にいたのは、もちろんカズたちである。途中で千歳という所長を、トップを失ってなおレイドライバーの完成に漕ぎつけたのだから。そのカズをして[捨てた]という技術、それが脳波測定によるレイドライバーの制御だ。
一見すれば、これは実用的に見えるのだが、カズたち研究者は[双方向の通信システムがないとそもそも成り立たない]と考えたのである。つまり、パイロットの意思が汲み取れてもサブプロセッサーからの情報がパイロットに行かない。それではシステムとしては完成形にならない、と。
確かに第一世代がロールアウトするころまでなら帝国方式でも良かったのだ。何故なら第一世代のサブプロセッサーには自我がないから。あくまでも機体制御の介在役としてしか機能していなかったからだ。しかしカズたちはその先を見据えていた。
それは、現在のシステムの中心と言える[自我のあるサブプロセッサー]の存在だ。つまりはサブプロセッサー側からのフィードバックがあるのである。それを伝える手段が、帝国のこのシステムでは存在しない、つまりはカズたちにとっては[旨くない]のである。
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