41.帝国は直ぐには動かないだろう-エルミダス軍港までたどり着いた-
全46話です
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カズに[帝国は直ぐには動かないだろう]そう信じさせるもの。それは旧トルコ戦で手に入れた鹵獲機体である。船便で輸送されてきて、ようやくここエルミダス軍港までたどり着いたという訳だ。
「しかし、よくもあの帝国がレイドライバーの拿捕なんかを良しとしましたね」
傍らで控えている整備士がカズに語り掛けてくる。
「自賛するつもりはないけど、相手が理知的でよかったと思ってる。あのまま戦闘を続行されたら、負けこそしないだろうけどゼロフォーかスリーワンのどちらかが危うかっただろうし。それにゼロツーの帰還はほぼ絶望的だっただろう。そういう意味でも作戦がバチッと嵌まってくれた結果だよ」
――実際、一時は撤退も視野に入れてたくらい劣勢だった。空爆で優位には立ち帰れたけども、それにしたってこちらの完全優位、という訳ではなかったからね。その辺りはイリーナ中尉に感謝、かな。
使えるものは何でも使う。その精神と頭の回転と、少しの話術が今回の逆転譲歩を引き出したのだから。
「さてさて、どんなお宝が眠っているのやら」
カズは今か今かと待っている中、作業は進められていく。各部の関節はフリーにしてあるという話なので作業はすべてクレーンで行う。船体へワイヤーを出してクレーンで吊り下げて、ゆっくり丁寧に待機させてあるトレーラーへと積み込む。実際の検分はエルミダス基地内でやろう、という手はずになっている。その理由は言うまでもないだろう。こんなのを研究所に持ち込んでは帝国の思うツボという訳だ。実際に、積み下ろす際のチェックで微弱ながら特定の周波数で電波が出ているのを確認している。電波強度を考えれば索敵用なのだろうとは考えられるのだが、危険な[ブツ]に変わりはないのだ。
――見た目がスリムだが、やっぱり大量生産の兆候が見えるな。
カズにそう思わせるもの。それは外見からでも伺えるというものだ。現に、
「これは……ちょっとこちらも考えたほうが良いのかもしれませんね」
隣にいる整備士も同様の感想を抱いたのだろう、カズにそう話しかけてくる。
「そうだね、これはちょっと考えないといけないかも知れない」
…………
ある工業製品を大量に作るとしたらどうすべきか。
一つは極力角を減らす、つまりはより平面を多くするという手法だ。兵器も工業製品である以上、ある程度の凹凸は必要である。それは強度を増したり、あるいは装飾という側面も持っているのだが。極端な話、四角いパーツだけでレイドライバーを作れば、それこそ一晩もあればガワだけなら一体、二体くらいは余裕であろう。
だが、この方法は[突き詰めればそうなりますよ]という話で、とても現実的ではない。平面だけで作った兵器などは、装甲をいくら厚くしてもレイドライバーの、いや戦車の大砲だけで打ち抜けるだろう。それに動きも制限されれば、装甲を厚くした分だけ重量増にだってなってしまう。
もう一つが、予め型を作ってそこに鉄鋼を流し込んで作るという方法だ。これなら理想的な形をいくらでも作れるだろう。しかしこの方法にも欠点はある。それは設計変更が出来ないという点と、ある程度加工しやすい金属に限定されるというものだ。これに似た手法で、一枚の板を型で打ち抜いて作る、というものがある。自動車の部品に代表されるようにこれも広く実用化されている技術なのだ。レイドライバーはこのような技術を複合して作られている……のはその通りなのだが、どうしても各部位を人の手で仕上げる関係上、大量生産には向かない代物なのだ。
…………
カズたちをしてそう言わしめる理由。それは型を使った作成方法が多くの部品で採られているという推測である。もちろんこれは推測の域を出ないが、それでも鋳型を中心とした作成方法が広く採用されている、ように見えるのである。
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