4.本部との通信の際には私も混ぜて頂きたく-私の口からも言っておかないといけない-
全46話予定です
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イリーナたちはとりあえず自軍の機械化部隊が展開している地点まで戻って来ていた。いわゆる駐屯地である。
こちらの損害は相当なものだ。何と言っても四体いたレイドライバーのうち半数の二体を失う、という結果を招いたのだから。損害報告だけを見れば部隊長であるイリーナ中尉の責任はとても大きい、と言わざるを得ない、のだが、
「中尉殿、本部との通信の際には私も混ぜて頂きたく」
シュエメイはそう申し出たのだ。それくらい今回の相手というのは、特にヴィクトーリヤ准尉を仕留めた相手というのは、それほどに難敵であると言わざるを得ない。
必然、クラウディアへの通信時に自分も混ぜてほしい旨を上申したのだ。
――これは私の口からも言っておかないといけない。
それくらい正確な射撃と冷静な判断を相手はしてのけたのである。
「話は聞いたよ、二人は残念だった。当然、我が方の損失が大きいというのを加味すればイリーナ中尉の処遇は変わって来るのが普通なのだが」
というクラウディア少佐に、シュエメイは[あれはどこかおかしい機体だ、あんな動きが出来る筈がない]と声高に言ったのだ。
それは、
――別に貴方を擁護したい訳じゃあないが、貴方には戦ってもらわないといけない。少なくともこの戦線を私が無事に脱する為にはそれが必要なの。それに、あれは報告しておかなければならない機体だ。
そんな下心ともつかない心の声に突き動かされての事である。
「そうか、それほどな存在なのか。あとで戦闘データを皆で協議しよう。それで、だ。まずはリアクティブアーマーと弾薬の補充をして、その陣地で待機せよ」
とクラウディアからは言われたのだ。
「例の敵に襲われれば、こちらは二体しか……」
とまで出た弱気のイリーナの声を、
「大丈夫、こちらには秘策がある」
とクラウディアは返したのだ。
「秘策、ですか?」
無線に参加していたシュエメイも分からないでいる。そんな二人に、
「大陸製の新型機械化部隊が現在南下中だ。もう既に二都市陥落させた。そして損害は一両のみという性能ぶりなのだよ」
――そんな武器が、帝国にあるの!?
シュエメイが驚くのも無理はない。正直レイドライバーの性能にしたって同盟連合が一歩、いや二歩以上は上だと言うのに、そのレイドライバーをも上回る武器が存在するというのがまず信じられなかった。
「今まで機密事項だったから誰にも情報が降ろせなかったのだが、これで晴れて解禁、という訳だ」
聞けばその形状が独特らしく、弾丸を弾いてしまうのだそうだ。これはレイドライバーのマシンガンとて例外ではない。
事実、
「こちらが持っている兵装すべてでテストしたのだからな。その防弾性能は折り紙付きだ」
と言わしめる程の性能があるらしい。
そして、実際に二都市に布陣していた機械化部隊をあっさりと全滅に追い込んだのだから。ここは同盟連合の中でも武装としては新型が配備されている場所である、と推測が付く。それを上回っているのだから、
「勝ったも同然、とまでは流石に言わないが、相手には相当のプレッシャーを与えられる。ただし、南下しているとはいえモノは戦車部隊だ、流石に乗用車のような速度は出ないし、戦闘しながらだからな。まぁ、その分、相手にはじわりじわりと恐怖してもらおうじゃあないか。そしてあわよくば」
――撤退させられればこちらの勝ち、か。
シュエメイはここに来て自分の生存確率が上がった事に気が付いていた。
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