34.きみへの試金石でもある-そっか、そこまで考えてくれてたんだね-
全46話予定です
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[これは実験なんだ。今から三年でどれだけのものが出来上がるのか。そして、きみへの試金石でもある]
つまりはこの三名を上物に出来れば[襟坂]にハクがつくのだ、という話である。
先日、カズがグランビア戦に投入した無人機の試作の件は研究所内でも共有されている。それを提案したのが[襟坂]であるという事実も含めて。そこで、
「この三名を三年で仕上げられれば。だから孤児院ではなく、研究所で[保護]して仕上げてくれれば」
もしその時が来て、いざ[襟坂]から千歳の脳みそが摘出された時に、一介のサブプロセッサーではなく、ゼロゼロのように[ヒト]として見られるサブプロセッサーになれる道が可能性として残る。
「そっか、そこまで考えてくれてたんだね」
[襟坂]の声は少しだけトーンが低い。
それは当たり前と言えばそうなるだろう。簡単に言えば三名という人命を供物にして自分の生き残る道を開こう、とカズは提案しているのだから。そして[良い結果]というのは、当の本人たちにしてみれば、刷り込みによる[望まされて]なった結果なのである。
「三名の身の回りの世話なんかは、例の日本人職員を使うといい。彼、彼女たちにはちょうどいいんじゃあないかな」
その[ちょうどいい]にどんな意味が込められているかは別として。
「しかし、三年で実戦配備できたとして、どうされるおつもりなんですか?」
アイザックが割って入る。確かに、マリアーナやゼロツー、ゼロファイブにしてみれば身内が中にいるのだから、
「バレれば良くないでしょうが、現在の脳科学を使用すれば」
名前のデリートは確実であろう。その上で[互いに素性を話してもすり合わせは行わない]というのを動作条件に組み込んでしまえば。
「これはより強い脳科学が必要になるんだ。それこそ人格と呼ばれる思考回路に近い部分まで弄る必要だって出てくるかもしれない。それだけの施術をしてしまえば[こちら側]について言えば問題なくなる」
つまりは、仮に身の上話をしたとしてもそこで思考にブレーキがかかればそれ以上の話に発展しないハズである。
「そしてマリアーナとゼロツー、ゼロファイブにしてみれば[人質]が出来る訳だ」
もちろんこの三名も脳科学が施されている第二期生である。マスターの命令は絶対だし、仮にもマスターが[聞くな、話すな]と言えば黙るであろう。もしも身の上話から自分の姉妹だと推定できたとしても、いや推定できたなら余計に逆らえなくなる。[何て酷い事を]と思ったところで、その思考はマスターの一言で消し飛ぶのだから。
これは相当なサディズムを刺激されかねない。
しかしながらこの状況に、
「マリアーナが耐えられるかどうか」
というアイザックが問う。
カズは[今回は見逃しますから]と前置いてから、スリーツーとマリアーナがお互いの素性を知った可能性について言及した。そしてその事実を問いただすと、マリアーナがフリーズしてしまったという事実も。
「まぁ、ここで事実を知ってしまったらフリーズこそしないものの、心にダメージが行くかもしれない、とは考えてる」
とまでカズか言ったところで、
「何故その三人をわざわざ探してまで拾ってきたの?」
[襟坂]が尋ねる。その回答は、
「人質というのが一点。テストをクリアできている親族であるというのが一点。あとは戯れかな。サブプロセッサーになるのか、それともパイロットとして実戦配備されるか、それとも例の実験に供するか。それから男子を入れたのは……流石にわかるか」
まぁ、戯れで非道な実験に巻き込まれるのは当人としては辛いだろうが、
「あたしの事も考えて一点?」
と[襟坂]が尋ねれば、
「それは否定しない。だから[最低でもサブプロセッサーに]と言ったんだ。それがもしもパイロット候補や別の候補になればもっと面白いものが出来上がるよね。それに例の実験もまだ進めないといけないし」
と言ったカズは、笑っていた。
「声、笑ってるよ。まぁ、分からなくはないけど」
と[襟坂]からフォローが入るが、
――もしもゼロツーのパイロットにディーナがなったら、当のゼロツーは何と言うだろうか。それでなくともペトラがパイロットとして配属されたなら? もっと言えばクィンテンに関して言えば[ヒト]でなくなる可能性が高いんだからね。現行のシステムではパイロットは女性でしかなれない。だとしたら、男性のサブプロセッサー。面白いじゃあないか。まぁ、こんな事を考えているようじゃあ地獄行きだろうな。まぁ、天国なんて望むべくもないんだけど。
カズはそんなことを考えながらさらに打ち合わせをしていた。
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