32.そうか、子宮無しでね……-もしもこれが実用に足りる性能を有しているのであれば-
全46話予定です
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「事情は理解したよ。そうか、子宮無しでね……。気が付きもしなかったよ」
[襟坂]も驚いている。それはそうだ、今の[襟坂]の元になっている人物である千歳は、応用生命学の研究で名をはせて所長になったのだから。子宮システムを組み上げたのも彼女と恵美が中心になったチームである。
「もちろん、現行のシステムを否定するつもりはないけど、もしもこれが実用に足りる性能を有しているのであれば」
「うん、レイドライバーという兵器のコストカット、つまりは部品点数の大幅削減につながるもんね。それに秘密も、もっと言えば女性に限らなくてもいい」
――そう、未来が広がるんだ。
[襟坂]のいう部品点数と秘密とは。
それは現行のシステムでは成しえなかった情報開示という話になる。[器官]も[子供]も不要なら、パイロットであるサブプロセッサー周りだけ秘密にして他は本州であらかたの製作が可能になる。もっと言えば本州以外の、たとえば旧ヨーロッパなどでも作ることが出来るだろう。
もちろん機密扱いの機体だから、そうおいそれとそこらかしこの州で作る等とはいかないまでも、レイドライバーとていずれは一般兵器になる時が必ず来る。そうなった場合に、部品点数が少なく、かつ秘密の部分が少ないとなればどうなるか。サブプロセッサーだって、極論を言えばブラックボックス化して供給すれば、同盟連合の各州に配備が可能になる。人間の脳、と明かさなくとも[これだけ定期的に交換してね]と言って栄養パックもブラックボックス化してしまえば、それは既に一般整備と何が違うのか。
――そう、そしてサブプロセッサーの性別だ。
一番のポイントは、サブプロセッサーを女性だけに限定しなくても済むのではないか、という点である。
今までは子宮リンクシステムがあるから、どうしてもパイロットは当然としても、サブプロセッサーも女性でなくてはならなかった。だが、もしも[子供]も無しの単独運用するのであれば、子宮リンクシステムが不要になる分、サブプロセッサーは必ずしも女性である必要は無くなる。
しかしながら、帝国や共和国の手前、まったくの[無人機軍団]を出す訳にはいかない。可能性はあるにせよ、無人機構想はまだ秘密にしておきたいというのが人情だろう。だから従来型の、パイロットとサブプロセッサーという組み合わせというのは無くなりはしないだろう。それでも、今後生産されるレイドライバーの何割かが[完全無人機]に置き換わればどうなるか。それは製造スピードの向上に始まって、重要拠点へのレイドライバーの駐屯、等という夢も広がる。
カズも[襟坂]も、恐らくアイザックもであろう、その可能性を近い未来に見出しているのである。
「そうすれば上の人々も増産に踏み切ってくれるだろうし。そして三八FIだけど、これも複座化して三八FDIにしてサブプロセッサーを乗せれば。もっと現実的な話を言えば、現行モデルの最新鋭機種である三五FDIのサブプロセッサーを自我のあるタイプにしてしまえば。その試金石は既にゼロフォーが掴んでくれたし。[高度なAI]として通せばそんなに難しい話ではない。実際そうやって通したから日本戦や旧エストニア戦を戦えたわけだし」
カズは未来を語る。それは方向性、と言い換えてもいい。現行の研究所内のトップ同士の話し合いだ。それは詰まるところ研究所の思考になるのである。
「分かりました、直ぐに[人の脳]とは言い出せないにしても、レイドライバーも三五FDIもいずれは一般兵器になるのでしょうから」
アイザックのその言葉で当面の目標は決まった。まずはレイドライバーにサブプロセッサーを単独で置いて運用する。その結果次第ではいずれはメインになり得るという話である。
「これで全部埋まりはしましたが、予備機を作成となるとパイロットはともかくとしてサブプロセッサーはどうしましょうか」
とアイザックに尋ねられる。
――まだ、時間がかかりそうなんだけど、これも実験のうちかな。自分で考えておいて非道だと思うよ。
ふとそんな考えが頭をよぎったが、カズは、
「今現在の予備機には残念ながら弾切れですね。こればかりは四期生を待つ他ないかな、って思っています」
カズはそう返してから、
「実はここ一年二年で直ぐには使用できないものの、サブプロセッサーの候補に当てがありまして。近々そちらに送る予定でいます。ちょっとした実験をしようと思って」
いつもと違う雰囲気を察したのだろう、
「何か被検体候補でも掴んだの?」
[襟坂]が聞いてくる。
――ちょうどよかった。
「きみに頼みたい事があるんだ。これはちょっと酷な話かもしれないけど」
カズはそう前置いて話しを始めた。
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