30.カズのいう話-ゼロフォーは先の戦闘のその後を話した-
全46話予定です
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カズのいう話。それはゼロフォーとのやり取りにさかのぼる。
…………
それはカズがゼロフォーから今回の事の顛末を聞いている時だ。
「という話を聞くに、スリーツーはゼロフォーを庇って被弾した、と。そうか、それだけ仲間意識が強かったんだろう」
カズはそう答えながら更に話を聞いた。もちろん、マリアーナは一言も発さない。それだけスリーツーの消失がショックだっただろうし、
――まぁ、ゼロフォーが完全掌握して戦った、なんて話をされたら立場ってものが無いだろうしな。
ゼロフォーは先の戦闘のその後を話した。
自分が子宮リンクシステムをすべてカットしてレイドライバーの操縦を行ったという話を。そしてそれは相手の撃破をもたらしたという話も。
その上で、
「私は自分が優秀だとは微塵も考えません。そんな己惚れた思考はあまりにも無意味だからです。ですが、その上で敢えて言わせて頂ければ、今回、すべて自分にレイドライバーの感覚を自分に回してみて、実際にその身で戦ってみて感じたのは、もしかしたら私のような、サブプロセッサーという存在であれば単独行動が可能なのではないか、という点です」
つまりは最悪の場合、パイロットも[器官]も[子供]も不要ではないか? ゼロフォーはそう言っているのだ。
そんなゼロフォーに、
「それは実に興味深い内容だよ。実際のデータをここでメモリーに落として行ってくれないかい? オレもこれから研究所にトンボ返りだけど、ちょっとデータを精査してみたいんだ」
とカズは伝えた。もちろんそれは[はい、マスター]という言葉と共にその場で実行に移されたのだった。
「あ、あの、マスター」
ひとしきり話が終わったところでマリアーナがすまなそうに話に入って来る。
「どうした?」
と聞けば、
「今回は失態をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!」
おそらくコックピットの中でメインモニターに頭を擦り付ける程深く詫びているのだ、というのはその口調から聞いてとれる。
そんなマリアーナに、
「スリーツーとは身の上話が出来た?」
少し意地悪な質問をする。その質問は、塞ぎかけたかさぶたに敢えて爪を立てるようなものだ。もちろん相手の動揺を誘うのは目に見えてはいるのだが、
――ちょっとどんな答えをするのか気になってね。
カズはそんなちょっとした好奇心でそう聞いたのだ。しかしながらその質問は、マスターであるカズのその質問はマリアーナに矛盾を生じさせてしまう。
マリアーナたち二期生にとって、マスターの命令は絶対だ。それは[今ここで死ね]と言われれば、皆が声高らかに[はい、マスター]と言って、手にした銃の引き金に指をかけるだろう。それくらい脳科学というのは進歩したし、その脳科学によって刻まれた、深く深く刷り込まれた思考というのは絶対なのだ。だから、その銃口を自分ではなく、肉親に向けたとしてもそれは同じく[はい、マスター]と言ってしまうのである。
戻ると、カズの先ほどの問いに対してマリアーナが[はい]と答えれば、肉親の事を聞かないという以前に交わしたカズとの約束を破る事になる。逆は言うまでもないが[いいえ]と答えれば、今のカズの問いに対して嘘をつく事になるのは明白だろう。
もちろんカズは本当にスリーツーと話をしたか、もし話をしたとしてもその内容までは知らない。だが、マリアーナ自身は知っている。もしも、スリーツーと実際に話をし、何某かの家族情報の交換があったなら、それはカズに嘘をつく事になってしまうのだ。
マリアーナがどちらを選択しても矛盾してしまうのだ。そんな時、彼女たち二期生以降のパイロットはどういう反応を示すか。カズの見立てでは、マリアーナが自爆スイッチを起動したという点、ゼロフォーが[耳を塞いだ]と言っている点からすれば、マリアーナはスリーツーが実の姉であると知っているはずだ、と踏んでいる。
矛盾に対する反応、実はちょっとだけそんな研究心がそう囁かせたともいえるのだが、
「あ、あの、その、あ、あ、あ」
明らかにおかしくなったマリアーナの声がする。命令がコンフリクトしてしまっている状態に似ている。それはパソコンで言えばフリーズ状態になるのだから、高等な脳みそを持つ[ヒト]でもその状態は起こり得るのだろう。
――これは、ちょっと運用には配慮が必要なのかもな。確かにマスターの命令は絶対だ。それは守ってもらわないといけない、の、だ、が、自力でコンフリクトから脱せないのではより慎重に運用が必要だ。
そう、複数のマスターが矛盾した命令を出した場合はどうなるのか、という話である。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
カズがしばらく待ってみてもその状態から抜け出せないでいる。五分が過ぎてなおマリアーナに変化が見られないのをカズは確認してから、
「ゼロフォー、回線をきみだけにして、コックピットへの音声はカットで」
手早くそう命令してから、
「今からオレが言う言葉を録音するんだ。そしてもしもマリアがもう十分ほど待ってもこのまま復帰しないようなら聞かせてあげて。復帰できたならそれでいい。どちらにせよ結果をあとで教えてくれるかい」
「はい、マスター」
というゼロフォーの言葉を待ってから、
「今の質問は無しだ。よく頑張ったね、それ以上は聞かないであげるから」
そう告げてゼロフォーたちを送り出したのである。
…………
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