3.ただいま、ちと……[襟坂]さん-いいですよ、ここは研究所の所長室ですから-
全46話予定です
以前に書きましたがレイドライバーシリーズは全22巻で完結となります
もしよろしければ、22巻の最後までお付き合いくださるととても嬉しいです!
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
そんなやり取りをして、その結果をアイザックと[襟坂]にしてしばらくしたあとに第一陣のゼロゼロが返って来た。時間は日付が変わる頃である。
トレーラーを、艤装した建物内に引き込んでそこから地下道に通し、そのまま整備ドックへと移る。そこで、当のゼロゼロは機体から降ろされて移動型の、所内で使用している生命維持装置へとつながれる。
そしてカズとアイザック、それに[襟坂]とゼロゼロというメンツになって、
「おかえりなさい」
[襟坂]がそう言うと、
「ただいま、ちと……[襟坂]さん」
そんなぎこちない会話をカズはアイザックと眺めていた。
「いいですよ、ここは研究所の所長室ですから、誰も聞いてはいません」
気を利かせたのか、アイザックがそう申し出る。
カズは三人を所長室に呼んだのだ。研究所、それ自体が機密のカタマリだから何処で話をしても外部に漏れはしない。ただし、外部に漏れないのと他の所員が話を聞かないのとでは事情が違う。[チトセ]から千歳を取り戻すにあたってカズは一つ、自分に枷を嵌めたのだ。
プライベート以外では千歳の事を[襟坂恵美]と呼ぶ。これが千歳を助ける為に必要だったルールであり枷なのである。
「ではお言葉に甘えて」
カズはそう言うと、
「アイザックさんと千歳には、引き続きこの研究所を切り盛りしてもらうという事で。研究に関しては」
とまで出たカズの言葉を、
「それは私が千歳ちゃんに直接送ってるから大丈夫だよ」
ゼロゼロがそう言う。
ゼロゼロの中の人こと襟坂恵美は主任研究員である。免疫機構を抑えるクスリを作ったのも彼女だし、その改良を指示してきたのも彼女だ。
しかし、現在の[襟坂恵美]は本人ではない。その整合性をどうとるか。もちろん皆が薄々気が付いているのは事実だ。中身が誰か、までは分からないものの、現にこうして本人が所内で目撃されているのだから。
ではどうするか。
研究に関して言えばさほど問題ではない。通信系も暗号化してしまえば、それだけ注意を払った暗号というものはそれはただの信号かノイズでしかなくなる。二人はゼロゼロがいるアルカテイル基地の通信網を使ってやり取りをしているようだ。
元々、千歳の研究領域というのは生体系全般を担って来ていた。子宮リンクシステムの基礎を築いたのも千歳だ。その頭脳をもってすれば他分野である生理分野もそれほどハードルは高くない、といったところか。
つまりは他分野の知識が増えた分、俯瞰してものを見られるようになっているのである。
「本当ならゆっくりと話していたいところではあるんだけど」
とカズが言うと、
「カズ君は責任者でしょ? 積もる話は二人でするから、仕事、してていいよ」
恵美がそう言う。
何度も出てくるが、カズはここの研究所の所長であると同時にレイドライバー部隊の責任者でもあるのだ。
そして、現在進行形で作戦が続いている。戦場を一見すると三対二でこちらの優勢、となるのだが。
「それじゃあ、隣の部屋に移動するよ」
カズはそう言うと所長室を出てすぐ隣の小部屋に入っていく。この部屋も所長室同様完全防音、かつ秘匿通信が誰とでも出来る。それこそ、現地にいるゼロフォーにも。
「聞こえているかな?」
と問えば、
「はい、マスター」
相手はそう言って通信に出たのだ。
全46話予定です