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27.なるほど、オレは見初められた訳だ-あたしはカルラっていうんだ-

全46話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 ――なるほど、オレは見初められた訳だ。


 当時、そう思ったマタル・ハキームにその人物が[理解が早くて助かるよ]と言われて同盟連合の軍に入ったのはもう何年前か。そして彼はつい最近、一度除隊している。それはその人物に[共和国の内情を]と言われたからだ。


 ハッキリと言えるのは、今までマタルは二度、見初められている。一人目は[その人物]と呼ぶ彼の雇い主、そしてもう一人というのが共和国の研究所の主任だ。


 ミラールで雇い人へ電話したあと、マタル・ハキームは件の人物に言われた通りエルミダス基地に出入りする業者となっていた。名目は基地への食材の搬入業者、という扱いだ。もちろん、それはマタルの雇い主がそのように話を通したからである。


[人を一人、雇うこととします。まぁ、元々が軍、それもエルミダス基地所属でしたからその辺りは大丈夫でしょう。過去を探れはちょっと経歴に難はありますが、身元は私が保証しますので]


 そんな紹介をしておいたからと、半信半疑でマタルがエルミダス基地に行ってみれば、

「あんたかい? 新しく食料を入れてくれる業者ってのは。んー、あんたの顔は見たような気もするんだが」


 来て早々、割腹のいいおばちゃんにそう声をかけられる。


「あぁ、ちょっと前までここに籍を置いていたんだ。色々と事情があってね。今度からこちらで食材を扱うように言われてきた。何なら食材以外のものでも用意するが」


 ――少しだけ先制パンチを、だな。


 マタルがそう思う間に、


「ウチは女の子は間に合ってるよ。まっ、男の子も間に合ってるがね。そういうのは別に本業がいるんだ」


 どこまで見透かしているのがそんな返しが来る。


「おっと、そうだったな。ここの厨房じゃあ下働きの確保に苦労してるかと思ったんだが。何ならそいつらの[世話]とか何かもな」


 おどけてそう返してみる。マタルはこれでも対人スキルはある方だ、と自覚している。でなければとうの昔に騙されて大損を喰らっているか、夜道で襲われているかしているだろう。そんな裏稼業をしてきたのだから、これくらいの先制パンチはかませて当たり前、相手が乗ってくれば良しだし乗らなければ別の手を考えるそれくらいは出来ないとやって行けない。


 だが、


「うーん、そうさねぇ、それだけ口が回れば大丈夫だろう。んで、ちゃんとしたものを入れてくれるんだろうね」


「あぁ、もちろんだとも。で、どちらを?」


「食、材、に、決まってるだろう?」


 怒りこそしていないが、いわゆる[おばちゃん]は次の話がしたそうにしている。


 ――まぁ、これだけ場を和ませておけば。


「さてと、紹介がまだだったな。オレはマタルという。ファーストネームは……」


 と言いかけたところで[呼び名だけでいいんだよ]とおばちゃんに言われる。


「あたしはカルラっていうんだ。覚えといとくれ。まぁ、ここを預かってる」


「ああ、了解だ。じゃあ、先任の食材屋に恨まれないように働かないとな」


 マタルはそう言いながら少しばかり辺りを見回す。


「ああ、この基地が気になるかい? そう言えばつい最近まで元々ここに居たんだったっけかねぇ」


 カルラはそう言うと[大方は知ってると思うが]と前置いて、改めて事情を話してくれた。その事情の中には台所事情なんかも含まれているのだが。


 同盟連合がこのエルミダスという土地を再奪還してからおよそ四年。しばらくは司令塔も含めて仮設テント暮らしだったのが、司令塔が出来、宿舎が出来、事務棟が、とった具合に徐々に基地らしくなっていったのだそうだ。そしてテントでの運営をしていたこの食堂も隣にあったラウンジと一緒にコンクリートの建物に統合された。


 今でこそ本来の需要も少なくなっては来ているものの、その当時は基地から出られない隊員も少なからずいた。その最たるものはレイドライバー関係の人間なのだが、そういった人たち用にラウンジと呼ばれる酒を提供する施設が設けられていた。


 レイドライバー隊の前線がミラール、アルカテイルと移るに従い、ラウンジの存在も一時は消えかけていたのだが、それはそれで街まで出なくて済むから、という理由で隊員たちから存続の声が上がったのだ。


 なので、現在は食堂と同じ棟に設置される運びとなったのだ。


 そしてラウンジには当時とは違う付加価値が付けられることとなった。それは[そういう意図]で外部から人を入れるのだ。


 しかしながら、直接基地内に直接見知らぬ他人を呼び込むのは如何なものか、という意見が上がったのもまた事実である。喧々囂々、色々と議論が交わされた結果として、ラウンジにはそれ用の個室を作ってそこにだけ外部から人を入れる、という話で落ち着いたのである。


 ここには夕方になると定期的に街から[人]が訪れるのである。それは若い女性だったり、若い男性だったりと様々であるが、食堂の業者同様、人の出入りが出来るのはそこだけなのである。


 あとはこの基地に入れるとすれば、正門玄関だけで、周りはぐるっと高い柵が設置されていて出入りは困難なつくりとなっている。


全46話予定です


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