19.カズはその言葉を待っていた-何もタダでくれ、等とは言いませんから-
全46話予定です
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カズはその言葉を待っていた。
「いえいえ、この分野について言えば私たちもまだまだ研究途中です。学ばなければならない事も、未知な事も多い。それならいっそ機会が得られるのならば他国のレイドライバーを拝見したいと思いまして。もちろん、拿捕という扱いではありますが、色々と勉強させて頂いたあとにはビス一本残らずにきっちりとお返ししますよ。何もタダでくれ、等とは言いませんからご安心を」
――まぁ、中身を丸裸に出来れば本体なんて要らないからね。
カズはそこまで考えていた。調べつくしたあとに、出し殻になったその機体をもう一度交渉の材料にしようというのだ。
それは相手にも伝わっていたようで、
「ふん。先のイリーナ中尉のように、何か交渉ごとに使う予定かね」
とため息交じりに聞かれたので、
「もちろん、ご相談に乗って頂ければそれはそれで」
といつもの声のトーンで曖昧な返事を返す。
――さてと、どちらを貰い受けるか。
「ところで失礼な事をお聞きするようですが、二体とも同型機なのでしょうか? こちらの作戦行動記録から推測するに旧エストニア戦とは別の機体が使われたような?」
ととぼけてみる。
実際、ゼロフォーが送ってきている映像からすれば第一弾である旧エストニア戦の時よりもデザインが変わっているのは事実だ。旧エストニアにいた機体よりも野暮ったさが取れている気がする。
そんなカズの言葉にクロイツェルは、またため息を一つついて、
「ふん、きみに腹芸は効かなそうだな。見ての通り、同型機だよ。最新かどうか、までは言う必要はなかろう?」
と返して来た。
――という事は。じゃあこれで。
「旧アルゼンチンはもう引き揚げられたので?」
と問う。そんな何気ない一言に、
「ああ、遊ばせておく余裕はこちらにはないからな。もちろん、同盟連合とてそれは同じだろう?」
と来た。それは、
――原潜搭載型、つまるところの最新、か。それはそれで中身をじっくりと見てみたいぞ。
カズは、
「貸与願える、という認識で良いのですね。こちらも原子力潜水艦を用意しようとも考えたのですが、旧トルコはアルカテイルからもそんなに遠くない。という事を考えて船の輸送をしようと思いますが」
カズはこういうチャンスに少しでも相手に[必要な]情報を流しておく。カズが[原子力潜水艦を用意しようと考えた]と一言いえば、クロイツェルの頭には[同盟連合は原潜搭載型のレイドライバーをすでにを配備しましたよ]という意志表示に伝わるからだ。そうしておく事で[原子力潜水艦に搭載出来るのは貴方方だけではない]と認識してもらえるのである。つまりは[我々だって何処にでも駆け付けられますよ]と。
そんなカズの言動を見てクロイツェルは、
「やはり、一度どこかでお会いしたいものだな。きみは中々に食えない人物のようだ、それは同盟連合内でもさぞかしもてはやされているだろう」
と、嫌みとも賞賛とも取れる発言をする。そんなクロイツェルに、
「いえいえ、たまたま交渉の場を任されているだけですよ。私なぞただの中佐ですから。私も貴方とどこかでお会いできればいいな、とは考えております。ただ、今はその時でない事も承知しているつもりであります」
――どのみちまた会う事になるんだから。
こうして交渉はほぼ決まったのである。
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