18.そこに出てきたのが、例の鬼畜である-まさか、そんな……-
全46話予定です
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イリーナは無線でクロイツェル参謀から[お前に話がある]と言われて回線を開いた。そこに出てきたのが、例の鬼畜である。
――まさか、そんな……。
出来れば一生関わりあいたくない人物がまさに自分を指名して来たのだ。
そこで先ほどのやり取りである。
「さ、参謀閣下は、どうされる、お、おつもり、なのですか」
抑えようとしても声が震える。人間、必死に自我で押さえつけようとしても内側から噴き出てくる感情程抑えられないものは無い。
それを察したのだろう、
「何ならきみが決めていいぞ。自分が捕虜になるもよし、シュエメイ准尉を行かせるもよし、レイドライバー一体をくれてやるのもよし。もちろん、最終的な責任は私がとるから安心したまえ」
とクロイツェルに言われたものの、どうしていいか分からないでいた。
自分から行くと言い出せば何某かの嫌疑がかけられるだろう。勿論それで直ぐにどうこうという問題にはならないと思うが、自らが進んで行くと言い出せばそれは、一度捕まった相手の手前、やはり何か疑われてもおかしくはない。
ではシュエメイを行かせるか? それは絶対に避けなければならない。彼女が捕まれば間違いなく[あれやこれや]されるだろう。あの鬼畜の事だ、場合によってはもっと酷い扱いを受ける可能性すらある。
そして、時が来れば解放もされるかもしれない。その時にイリーナはシュエメイになんと声がかけられるか。[大変だったね]だろうか、それとも[何かされた?]だろうか。いずれにせよ元の関係は保てなくなるのは間違いない。そうなればやはり自分が行かざるを得ない、という結論になるのだが、それは既に自分を保っていられる自信がなくなる。
また[あれやこれや]されるのか、と思うとゾッとするのもそうだし、それに自分から進んで行くというのがまず考えられない。だが、どの選択肢を取っても捕虜になるのは自分だ。そして無事に帰って来られたとしても、今度こそ[壊れてしまう]だろう。
ではレイドライバーを差し出すか? そんな決定を自分が出来るのか。いや、自分ごときがしていいものなのか。
――私は、どうすればいいの? このままいっそ……。
死んだほうがマシ、とも思う。だがあの鬼畜が、自分がここにいると知った今では、もしも自分が死んだ等と知られればあとで何かしでかさないとも限らない。
少なくとも何事もなく現状維持さえしていれば、あの時の事を喋らずに、針のむしろである部隊で、悶絶しながら日々を過ごしてさえいれば済む話だったのだ。
――よりによってシュエメイ准尉まで無線に引っ張り出すなんて。
ここでイリーナがどのオプションを採ってみても、それは[イリーナが言った]決定になってしまうのは間違いない。
自分が行くと言えば蜜月関係を疑われ、シュエメイを差し出せば無事では帰って来られない挙句の命令されて行ったという事実が残って傷も増える。では庇って自分が行くと言えばもう既に自分を保つ自信がない。ではレイドライバーを引き渡すか……。
――あぁ、おかしく、なりそう……。
イリーナは既に[壊れている]のかも知れない。すべてはあの戦闘で捕虜になった時点から始まっているのだ。恍惚にも似た感覚に襲われる。
「わ、わた、わたしは、ど、どう、どうすれば」
既に言葉を失っている。良く聞けばそれは上気を疑われてもおかしくない声色だ。
そんな状況を察したのだろう、
「まぁ、イリーナ君に一任は少々酷だろうな。だが、今更帝国の機体を手に入れたとしてもあまり実益はないと思うが、中佐?」
クロイツェルがそう助け舟を出したのである。
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