17.旧トルコの戦況はご存じで?-そちらのレイドライバーを一体ほど-
全46話予定です
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カズは相手の心理を探ろうとしていた。だから直ぐに本題に入らないのだ。
「旧トルコの戦況はご存じで?」
とりあえずカマをかけてみる。だがもちろん、
「ああ、分かっている。痛いほどにな。二対二、数の上ではイーブンだが、これは戦力的にイーブンではない」
――そう、イーブンじゃあない。
同盟連合が、こちらが勝っているのである。もちろんそれが分からない相手ではないとは知っているが、人間、言葉にしないと伝わらない事もある。
だから、
「では回りくどいのはなしにいきますね。半年の停戦と、そちらのレイドライバーを一体ほど貸しては頂けませんか?」
と切り出したのだ。
しばらくの沈黙。だが、相手のため息でそれは崩れた。
「捕虜の次は機体を、か。中々どうして。しかし、いいのかね? 捕虜を取った方が実利があるのでは? 今、現場にいるのは以前にそちらでお世話になったイリーナ中尉だが」
と返って来た。
――おぉ、彼女ね。元気してたんだ。んじゃあちょっくら。
「閣下、回線をイリーナ中尉ともう一人のパイロットにも繋いで頂けませんか?」
と聞いてみる。向こうは[ん?]と言ったものの、
「ああ、了解した、少し待ちたまえ」
そう言って数十秒後に、
「イリーナ中尉であります、閣下。お呼びでしょうか」
「シュエメイ准尉であります、閣下」
と目的の相手が出たので、
「イリーナ中尉? お久しぶり、元気してたみたいだね」
わずかながらに声のトーンを上げて話を振ってみる。
「そ、その声は、貴様」
「ちょっとちょっと、こっちは中佐だってば。貴様呼ばわりは良くないでしょ」
その声はまるで恋人にでも会ったかのような声色である。
「お望み通り繋いだが」
とクロイツェルに言われたので、
「四人でお話でも、と思いまして。ところでイリーナ中尉。クロイツェル閣下とオレは今、停戦交渉をしているんだよ。そこで、クロイツェル閣下が[捕虜を取った方が良いんじゃあないのか]と言うんだ。我々としては、そちらのレイドライバーを一体貸し与えて貰えれば良いかなぁと思ってるんだけど、どう? また捕虜になってみたいかな?」
相手の小さい声で[ヒッ]という音をカズは逃さなかった。
「ウチに来てくれれば、それはそれでまた[おもてなし]が出来るとは思うんだけど、どうかな?」
――うーん、これは面白くなってきたぞ。
カズは純粋に会話を楽しんでいるのだ。ここでイリーナが[ハイ]という訳が無い。ならばあとに残されてるのは機体の譲渡だけである。そして、それを決定する権利があるのはクロイツェルなのだ。
もしここでクロイツェルが[いや、捕虜を差し出すから機体は譲らん]と言ったならどうなるか。カズは間違いなく捕虜にイリーナを指名する。そして捕虜になったイリーナは再び捕虜として連れてこられ、いずれは解放される時が来る。その時、部隊にはどんな空気が流れるのか。
[二度も捕まっておいて何もされてない訳がない]
大抵の人間がそう考えるだろう。では、イリーナはその時どんな処遇を受けるのか。それは既にパイロットを一人殺したのと同義である。
では相手が[もう一人のパイロットを差し出すから]と言ったら? イリーナはその時にどんな反応を見せるだろうか。あれやこれやあって[何もされなかった]イリーナが相方を差し出すとは考えにくい。間違いなく[自分が行く]と言うだろう。イリーナにしてみれば、行きたくはないのは百も承知だ。だが、自分が進んで行くと言い出せば?
考えだしたらキリがない。そういう話をする為にカズは敢えてイリーナを交渉のテーブルに引きずり出したのだ。
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