13.それは言うほど簡単な話では-きみ、随分といい意味で人間臭さが出てきたな-
全46話予定です
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それは言葉で言えるほど簡単な話ではなかった。それはそうだ、性能差はほぼ無し、数量で倍の違う相手とやり合おうというのだから、まずもってして厳しいといわざるをえない。
しかし、ゼロフォーは微塵も悲観していなかった。自分が持てる演算能力を駆使して最適解を出し、カレルヴォや他の機体にそれぞれ指示を出していく。相手が予測からズレれば直ぐに修正をかける。それをレイドライバーの制御をしつつ行っているのだから、これほど高性能な[頭脳]もないだろう。
事実、
「よし、随伴を一機まで減らしたぜ」
相手のM三一DIはやはり通常機を二機従えて戦闘をしていた。それは以前の戦闘データから学んだのだろう、いわゆるスリーマンセルである。
これは二機しかいないツーマンセルよりも自由度が上がる。それは作戦上という意味合いもあれば回避行動的な意味合いも強い。二人より三人、という話なのだ。もちろんこの陣形にはフォーマンセルやファイマンセルという四人一組、五人一組という形態もあるが、そこまで来るとやれ陣形だの、部隊指揮官だのという別の問題が発生してくる。その分ツーマンセルやスリーマンセルであれば意思疎通も行いやすいというメリットもあるのだ。ある意味、最小単位ともいえる部隊編成であり、もっとも機動力に優れた陣形ともいえる。
そんな中、カレルヴォたちは三機いたM三一DIを含む集団の一翼を撃墜して、一対二まで持って行ったのである。
一対二、これは性能でほぼ同格の三五FDIとM三一DIという二機に加えて、通常型のM三一が含まれている点を考えれば、決して楽観視できるものではない。だが、それでも事実、カレルヴォ機は旋回中に一発も喰らう事なくM三一を一機撃墜しているのである。
「さて、ここからどうする?」
カレルヴォがゼロフォーに問う。当のゼロフォーは他の三五FDたちに予測線を示しつつ、
「そうですね、少し欲張りかもしれませんが二機一緒に落としてみるのはどうでしょう?」
普通の感覚で言えば[狂ってやがる]と言われそうだ。相手はM三一DIとM三一である。いわゆる最新鋭機というやつである。だが、このペアならやってのける、それだけの実績を積んできたのだ。
だからカレルヴォも否定はせずに、
「具体的には?」
と問う。ゼロフォーの出した回答は、
「旋回して急上昇、のちに急降下しつつ右旋回そのまままた急上昇して追い付けていない機体から順に狙いましょう。あとは、出たとこ勝負で」
「きみ、随分といい意味で人間臭さが出てきたな、素敵だよ」
カレルヴォも、そんなお世辞とも本音とも取れる言葉を掛けれらるほどにはリラックスしているというところか。現に、ゼロフォーの言葉を聞きつつも既に実行に移していた。左旋回で敵機が付いてきたのを見計らいつつ急上昇をかける。
旋回ののちの上昇、それは乗っている人間には相当の身体的な圧力になる。もちろんそういう行動をとる可能性があるからこそ耐G対策の施されているパイロットスーツなのだが、そうは言っても実際にパイロットに襲い掛かる耐Gというのは相当のものがある。
過去には、旋回によっておこるG負荷によるブラックアウトや、機首引き上げに伴うG負荷で生じたレッドアウトで失神、墜落という事例が無い訳ではない。それは耐Gスーツであるパイロットスーツを着ていても、二千年も既に五十年経過している現在でも可能性はゼロにはならない。現実問題としていまだ起こり得る現象だ。
ゼロフォーだってそれくらいは承知している。しかしかながら以前の戦闘のように、同性能機相手の、数で圧倒されている状況を一転させるには「危険だから」等と言ってはいられないのである。
そして、カレルヴォもそれが分かっているからゼロフォーの立てる作戦に異を唱えたりしないのである。
現に、急上昇ののちの急降下で一機ついて来られない機体が出た。隊列が崩れたのだ。
「カル、エアブレーキをかけて直ぐに」
「ミサイルロックだな」
言うが早いか、エアブレーキをかけて速度を落として敵機を追い抜かせる戦法に出た。敵機は隊列が崩れたのに動揺したのか、それとも急降下の最中にこちらが減速したのに驚いたのか急降下を止めようと機首を上げた。
そこが致命的なミスにつながったのだ。機首上げ、つまりは機体上面をカレルヴォ機に晒す結果になったのである。
「ミサイル、通常、ファイア」
に続いてバルカン砲も併用する。ここだ、という場面では発砲を出し惜しみしてはいけないのもまた事実なのだ。
こうして、
「スプラッシュツー、そしてスリーだっ。M三一DI含めて全機落としたぜ。よし、他の僚機のサポートに回るぞ」
そう宣言して、この空域から移動したのである。
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