11.大丈夫ですか?-オレは中佐の指示で来たんだ-
全46話予定です
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「大丈夫ですか?」
援軍からコールが入る。
「もうじき死にそうだったけど、生きてます。貴方は?」
と返すと、
「私はサンド、サンド・ギルベルト大尉です。そちらは?」
と返って来る。
――サンド・ギルベルト大尉と言えば、最新鋭機のパイロットのハズ。
「私はトリシャ、トリシャ・エカード、中尉であります。助けて頂いて感謝、します」
ペインアブソーバーを弱に設定していた為か、躰のそこら中が痛む。そのレベルは[痛い]どころの騒ぎではない。頭部からしても吹き飛ばされているのだから、それだけでも相当な痛みである。しかし、それが気持ちいいと感じてしまうのは、やはりトリシャという人物は変質してしまったのか。それ程カズの[調律]や[ミーティング]が功を奏した、いや裏目に出たのかも知れない。
「とりあえず、周辺に敵軍はいない。そちらは単独で動けるか?」
とサンドに言われて傍と我に返る。
「片脚を、損傷していますが、何とか、動けそうです。支援に、感謝を」
痛みのせいで途切れ途切れにしか話せない。気を失ってもおかしくないレベルだ。
そんなトリシャに、
「オレは中佐の指示で来たんだ。もちろんきみの名前は知っている。だけど良かったよ、間に合って」
その言葉にトリシャは瞬時に痙攣してしまった。カズの指示で来たという事は、トリシャが何をしたかを彼は知っているという話になる。それは[お仕置き]では済まないだろう。
――私は、見捨てられなかった、という事、なの?
トリシャの現在、一番恐れている事。それはどんな酷い[お仕置き]でもない、カズという存在から[お前は要らない]と言われて捨てられる事である。
そんなトリシャをよそにサンドは、
「中佐はきみに生き残ってほしいからわざわざオレたちを寄越したんだと思う。今回のきみの行動は確かに損耗を減らすという意味では正しいのかも知れない。だけど、それはきみの確実な死亡を意味している。中佐はそれを良しとしなかった、これはきみのマスターとしては正しい事なんだと思う」
そう静かに諭す。
――私は、私は、まだ貴方にすがって生きていい、の、ですか?
そればかりが頭の中を巡る。元はと言えば、自分で踏みに行った虎の尻尾だ。それが痛いほど良く分かっているからトリシャは余計にカズの事を考えてしまうのである。
独断専行の結果、死亡こそしなかったものの危うくレイドライバー一体の喪失を、いやこれだけやられているので、もしかしたら実際にはこの機体は使い物にならないかも知れない。そんな損失を出してしまった自分は[要らない]と言われなかった。だからこそ、こうして航空支援が来ているのであろう。
トリシャが掴んでいるちょっと前の情報では[空はアテにできない]という話だった。敵も最新型の戦闘機を持ち込んできている。そして敵も日々進化し続けている。だからこそ、こちらも最新鋭機である三五FDIが相手をしているのに苦戦を強いられていたのだ。それは時間のたった現在でもそうあまり変わっていないだろう、と推測が付く。
そこで数少ない最新鋭機をわざわざこちらに回して来た、というこの状況は、やはりカズはトリシャを見捨ててはいないという表れなのだろう。
「とりあえず一通り爆撃したから、オレたちはまた空戦に向かう。すまないが帰りは自分で何とかしてくれ」
サンドはそう言うと[それじゃあ]と言い残して去っていった。
「さてさてトリシャよ。とりあえずここからゼロフォーたちのいるところまで戻るにはどうすべきか考えようぜ、痙攣はそのあとだ」
――!!
ゼロツーのそんな一言にも反応してしまう。それほどあのシチュエーションからの死への羨望が大きかったのである。それこそ一人で悦に入るほどに。
「そ、そうね。貴方には、全部分かって、いるんですものね。とりあえず、脚部の関節を、固定しましょう。そうすればローラーだけで、何とか、できそうだから」
トリシャはとりあえず生き残った機能を使って、ペインアブソーバーを強くかけるところから作業を始めた。
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