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ep 5

『ブレイブ勇機!鬼神龍魔呂伝』

第二話:兎と鬼神と姫君と

たつまろは、開かれたラビークのコックピットを見上げ、躊躇なくその内部へと足を踏み入れた。異星の技術で作られたそれは、彼が知るどんな機械とも異なっていたが、不思議と拒絶感はなかった。中央に配置されたシートに腰を下ろすと、周囲のパネルが淡い光を放ち、何かが起動する気配が伝わってくる。

『マスター認証…パイロット・シンクロナイズ開始。神経接続…感覚リンク、最適化レベル3…4…5。システム・オンライン』

ラビークAIの合成音声と共に、凄まじい情報と感覚がたつまろの意識に流れ込んできた。まるで、自分の神経がこの巨大な機械の隅々まで繋がったかのようだ。手足を動かせば、コックピットの外で巨体が同じ動きをする。周囲360度の視界情報、機体のダメージ状況、エネルギー残量…それらが、自身の五感と同じレベルで、リアルタイムに認識できる。

「…なるほどな。面白い」

たつまろは口角を上げた。これが、異星のロボットの操縦システムか。自分の動きが、そのままこの巨体の動きになる。鬼神流の体捌きが、この鉄の塊で再現できるとしたら…?

「ちょっと! あなた! 勝手に乗り込まないでよ!」

コックピットの外から、ルミナス姫の甲高い声が響く。彼女は、自分の大切な相棒に見知らぬ男が乗り込んだことに、怒りと不安で一杯だった。

『マスター、プリンセスがお呼びですが…』

AIが、少し困ったようなニュアンスで報告する。

「放っておけ」たつまろは短く答えた。「それより、状況は?」

『機体各部に中程度のダメージ。特に左脚部の装甲が損傷。ですが、戦闘行動に支障はありません。エネルギー残量78%。…! マスター、敵性反応、急速接近中! 上空及び地上より、複数! おそらく先ほどの部隊の増援です!』

レーダーには、森の向こうから迫る複数の光点が表示されていた。コルヴス・ファントムとヴォルフ・イェーガーの混成部隊だろう。

「試運転にはちょうどいい相手だ」

たつまろはシートの上で軽く体を動かし、拳を握り、構えた。その動きに完璧に連動し、コックピットの外で、巨大な白い兎ロボット「ラビーク」が、力強く大地を踏みしめ、ファイティングポーズを取った。その姿は、もはや怯える兎ではなく、戦場に立つ武人のそれだった。

「ひぃっ!」

その威圧感に、今度は外で見ているルミナスの方が小さく悲鳴を上げた。

森の中から、ヴォルフ・イェーガーたちが飛び出し、一斉にビームガンを発射してきた。同時に、上空のコルヴス・ファントムがミサイルを放つ。

『マスター! 回避! 回避です!』

ラビークAIが悲鳴のような警告を発するが、たつまろは動じない。彼は迫りくるビームの弾道を見切り、最小限の動きでラビークの巨体を滑らせるように回避する。同時に、右腕を振り抜いた。

ガギンッ!!

ラビークの右拳が、飛来した実体弾の一つを、まるで小石でも払うかのように殴り飛ばした。弾き返された弾丸は、別のヴォルフ・イェーガーの装甲に命中し、火花を散らす。

『ええっ!? 今の…!?』

AIが驚愕の声を上げる。

「硬いだけが取り柄かと思ったが、この拳…使えるな」

たつまろは、ラビークの拳に施された特殊加工素材の強度を確かめるように、ギュッと握りしめた。

空からはミサイルが迫る。ラビークは両腕を素早く動かし、飛来するミサイルを次々と拳で叩き落とし、あるいは掴んで投げ返し、同士討ちを誘発させた。機体周囲に搭載された妨害装置も作動し、誘導精度を狂わせる。

「な、何なのよ、あの動き…! ラビークが、あんな…!」

ルミナスは、信じられないものを見る目で、ラビークの(というより、たつまろの)戦いぶりを見守っていた。それは、彼女が知る臆病で優しいラビークとは全く違う、荒々しく、しかし洗練された、まるで鬼神のような戦い方だった。

ヴォルフ・イェーガーの一機が、クローを振りかざし接近してくる。たつまろはそれを紙一重でかわすと、ラビークの巨体で懐に潜り込み、強烈なアッパーカットを叩き込んだ。特殊加工された拳が、狼型ロボットの顎(?)部分の装甲を砕き、機体を大きく宙に吹き飛ばす。

『マスター! やりすぎです! あんなことしたら…!』

AIが悲鳴を上げるが、たつまろは聞かない。彼は、吹き飛んだ敵機を追撃するように跳躍(ラビークの脚力は凄まじい)、空中でさらに追撃の蹴りを叩き込み、地面に叩きつけた。

残りの敵機は、その圧倒的な戦闘力と、こちらの攻撃が(弾き返されて)通用しないという事実に完全に戦意を喪失し、撤退を開始した。たつまろは追撃しようとはせず、ラビークを静かに着地させた。

戦闘は、再びあっという間に終わった。周囲には、さらに増えた帝国ロボットの残骸が転がっている。

コックピットのハッチが開き、たつまろが姿を現した。彼は、まだ興奮冷めやらぬといった表情で(あるいは単に面倒事が終わったという顔で)、呆然と立ち尽くすルミナスを見下ろした。

「な…なんなのよ、あなたは一体! どうしてあなたがラビークに乗れるの!? しかも、あんな乱暴な使い方して! ラビークを返しなさい!」

ようやく我に返ったルミナスが、涙目で詰め寄る。

たつまろは、そんな彼女の剣幕にも全く動じず、肩をすくめるようにして、静かに言い放った。

「ダンスの相手は、上手い方が良いに決まってるだろう?」

その言葉は、どこか芝居がかった響きを持っていたが、彼の本心か、それともラビークAIの意志を代弁したものか、あるいは単なる皮肉か…。ルミナスは、その言葉の意味を測りかね、ただあんぐりと口を開けて、目の前の謎めいた男を見つめるしかなかった。

こうして、星から来たお姫様と、心優しい(?)臆病なAIロボット、そして「鬼神」の過去を持つ男の、奇妙で波乱に満ちた地球での日々が、幕を開けたのだった。

第二話 冒頭 完

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