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ep 3

『ブレイブ勇機!鬼神龍魔呂伝』

第一話:空から来た厄介事(続き)

連携の取れた動きで、黒い狼型ロボット【ヴォルフ・イェーガー】たちが白い兎【ラビーク】に襲いかかる。一機が陽動として正面からクローを振りかざし、その隙にもう一機が背後から脚部関節を狙う。上空からはカラス型【コルヴス・ファントム】が牽制のビームを放ち、ラビークの回避コースを限定していく。

『ピィッ! ヒィィ!』

ラビークから、悲鳴のような電子音が漏れる。巨大な体躯に似合わず、その動きは明らかに恐怖に支配され、ただ姫を守るように蹲るのが精一杯だった。装甲は頑丈だが、集中攻撃を受け続ければ、突破されるのは時間の問題だろう。

「ラビーク! しっかりして!」

コックピットから投げ出されたルミナス姫が叫ぶが、その声は戦闘音にかき消される。

その光景を、たつまろは冷めた目で見つめていた。弱い者が、数の力で嬲られる。見慣れた光景だ。かつての自分ならば、あるいは無視したか、あるいは…もっと違う感情で介入したかもしれない。だが、今の彼は――

「…チッ」

短く舌打ちすると、たつまろは身を隠していた茂みから、矢のように飛び出した。それは、理屈や計算ではない。ただ、目の前の不快な状況を終わらせるための、反射的な行動だった。

最初に狙われたのは、ラビークの側面に回り込もうとしていたヴォルフ・イェーガーだった。たつまろは、ロボットのセンサーが捉えるよりも速くその懐に潜り込むと、跳躍し、膝蹴りを叩き込んだ。狙いは正確に、脚部ユニットの駆動系。ゴッ!と硬い金属が軋む音が響き、狼型ロボットはバランスを崩して体勢を崩す。たつまろは着地と同時に、その倒れかかる機体の腕部関節に、体重を乗せた鋭い拳を打ち込んだ。バキン!と嫌な音を立てて関節が砕け散り、ヴォルフ・イェーガーは完全に沈黙した。

「!?」

「敵性反応! 所属不明、生体!」

「馬鹿な、人間だと!?」

他の帝国ロボットたちが、突如現れた脅威に気づき、動揺する。だが、たつまろは止まらない。次のヴォルフ・イェーガーがビームガンを向けるより早く、その銃口を蹴り上げ、あらぬ方向へビームを発射させると、そのまま機体に駆け上がり、頭部センサーユニットを掴むと、力任せに引きちぎった。火花を散らし、狼型ロボットは機能を停止する。

「な…なに、あれ…人間が…ロボットを…?」

ルミナス姫は、目の前で起こっていることが信じられず、ただ呆然と呟いた。ラビークのセンサーアイもまた、驚愕を示すかのように、激しく点滅を繰り返していた。

『目標を排除! 上空より攻撃!』

上空で旋回していたコルヴス・ファントムの一機が、たつまろを危険と判断し、急降下しながらビームを発射してきた。しかし、たつまろはその軌道を冷静に見切り、最小限の動きで回避すると、先ほど破壊したヴォルフ・イェーガーの残骸の一部――千切れた腕部装甲を拾い上げ、落下してくるコルヴス・ファントムに向かって、槍のように投げつけた。

高速で回転しながら飛んだ金属塊は、的確にコルヴス・ファントムの翼の付け根に突き刺さり、飛行制御を狂わせる。

「制御不能! 墜落する!」

パイロット(あるいはAI)の悲鳴と共に、カラス型ロボットは黒煙を吹きながら近くの森へと墜落していった。

『隊長! こちらポイント・アルファ! 所属不明の戦闘個体により、我が小隊は壊滅状態!繰り返す、所属不明個体は…』

別のコルヴス・ファントムからの悲鳴のような通信が、途中で途切れた。それもまた、たつまろによって撃墜されたのだろう。

わずかな時間で、ラビークを取り囲んでいた黒いロボットたちは、ただの鉄屑へと変わっていた。残ったのは、不気味なほどの静寂と、破壊された機械から立ち上る煙、そして…

砂埃の中、静かに佇む一人の男。

鬼神龍魔呂こと、たつまろ。

彼の呼吸は少しも乱れていない。その体からは、未だに尋常ならざる「気」が放たれているが、それはかつてのような荒々しい殺気とは少し違って見えた。

ラビークの大きなセンサーアイが、ゆっくりとたつまろに向けられる。AIは、恐怖と、それ以上の驚愕、そして、何か別の感情――あるいは「興味」と呼ぶべきものを感じていた。

ルミナス姫もまた、震えながらも立ち上がり、自分たちを救ってくれた(?)謎の男を、恐れと、わずかな好奇の入り混じった目で見つめていた。

言葉はない。ただ、異星の姫とロボット、そして「鬼神」と呼ばれた過去を持つ男の、奇妙な邂逅の瞬間が、日本の山中に訪れていた。

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