十五夜
単なる十五夜も見方を変えれば・・・
すまん、今日は、遠慮しとくわ
いつもは断らない仕事仲間の呑みの誘いを
今日だけは断り家路についた
朝、家を出る時に約束したんだ二人の子供達と
お父さん今日は早く帰ってきてね
幼い息子と娘の弾ける笑顔が脳裏に蘇る
月見だんごを前に一緒に月を見上げる
たったそれだけのイベントも大切な家族が一緒なら
とても愛おしく思えてくる
家のドアを開けると子供達が朝と変わらない笑顔で
出迎えてくれた
お父さん早く早く
小さな手で背広の裾を引っ張り和室へ誘導される
準備は万端だった。月見だんご、ススキが指された花瓶
4枚の座布団が俺達を待っていた
夕御飯あとで良い?
妻が飲み物を手に仲間に加わった
子供達と並び見上げた夜空には雲1つない中に浮かぶ満月が
俺達を迎えてくれた
月の光が子供達の顔を優しく照らしてくれていた
その瞳に写り込む満月もまた綺麗だった
ふと妻の方へ振り返ると
まるで3人の子供を優しく見守る母親そのものな笑みを浮かべていた
この特別な十五夜をあと何回送る事ができるのだろうか
子供達こそ成長し変わっていくかもしれない
でも変わらないモノこそ大切にしていかなければと
熱い想いがこみ上げて来た特別な十五夜になったのだった。