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4杯目.飲み会は大人の世界

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

あれから、財布の中には一枚の紙を入れ続けている。

少しインクの滲んだ、数字が並んだ紙を。


連絡を待ってはみるが、そもそも連絡先を伝えていない事に気付いた時は自分が嫌になった。

電話一本すら、満足にできずにいるのだから。


8月の夏の暑さは、外回りの仕事にはこたえる。

蝉の鳴き声、うだるような熱気、どれをとってもいい事など何もない。


今日は商談が一件ある、未だに仕事を取ってこれていないので、会社では無能として扱われている。

これが今の自分だ、何も期待せず、何も成し遂げようとはせず、無難に生きていきたいと願っている。


しかし、今日の仕事が終わっても家には帰れない。

なぜなら地獄の飲み会が待ち構えているからだ。

それだけで鬱になる、このまま太陽の熱で溶けて消えていかないだろうか。


「着いた」


そうこう考えているうちに、とある会社の前に着く、ここが今日の商談先だ。


会社の中へと入り、受付係に声をかける。


「あ、あの…株式会社ネオ・マーケティングの真田と申します。権田社長とアポイントの約束があるのですが」


「真田様、伺っております。こちらにご案内させていただきます」


そういうと奥の部屋へと案内される。

部屋の中には長方形のテーブルが置かれ、両端には椅子が並べられている。

ここまでは案内されたが、どこに座れば。


とりあえず真ん中の席に座って、資料などを鞄から取り出し準備を始める。


暫くすると、部屋の扉が開く。

誰か入ってきたようなので、席を立つ。


「すまんすまん、少し待たせてしまったね」


「あ、いえ…こちらこそ、お忙しい中お時間を頂戴しありがとうございます」


お互いに名刺を交換し、席へと着く。

話しを始めようとすると、ノックが聞こえ、先ほどの受付係の人がお茶を持ってくる。


お茶が机に置かれたところで、話しを始める。


「この度はお時間を頂きありがとうございます」


「いいよいいよ、んで?いい話なんでしょう?」


「はい、こちらの資料をご覧ください」


お勧めの広告宣伝方法について、それによる知名の向上や、新規顧客の増大。

今までの会社のデータを元に提案を勧める。


「方法としては、幹線道路沿いの看板の設置や、SNSを活用したマーケティングなど、様々な方面にて、御社のご活躍を、手助けさせていただきたく思います」


「ふむ…ちょっと資料を拝見するよ」


「はい、是非」


資料を手に取り、読み進めていく。


「看板の設置もさ、SNSもいいんだけど、費用対効果はどうなのよ?最近うちも厳しくてね…」


「それでは、こちらの資料にも目を通していただきたく、御社の希望プランに沿った、ご提案が可能です」


表情が険しいままだ。

資料は、上司にもチェックしてもらい完璧にした。

昔から感じる感覚だ、歯車が噛み合ってないような。

お互いの空気が軋みあっている。


「確約は出来ないが、社内で前向きに検討させてもらうけどいいかな?」


ほら、今回もダメだ。

こう言われて上手くいった試しがない。

ずっと噛み合わない歯車を、無理に回ろうとすると次第に苦しくなってくる。

こちらだけが、徐々に壊れていっている気がする。


「それでは、資料は置いて行かせていただきます。是非、前向きなご検討のほどよろしくお願いします。」


荷物をまとめ、会社の出口までと案内される。

また近日中に、連絡をいただけるそうだ。

期待せずに待っていよう。



会社へと戻り、本日の営業報告を上げる。

それを見た刈谷部長に呼び出される。


「ちっ、またか…俺が一緒になって、作ってやった資料を使ったよな?」


「はい、使いました」


「それでも、返事がもらえなかったと?」


「近日中にはご連絡をいただけますので」


「いつよ?」


「はい?」


「だから!いつ返事が来るかって聞いてんだよ!!」


机を大きく叩き、事務所の中に音が響き渡る。

近くの席から、小さな話し声が聞こえていた。

僕は悪く言う陰口な様な。


「すみません、いつ…とは把握していません」


「てめぇ!じゃあ俺はいつまで待てばいいんだ?」


「すみません、分かりません」


「分かりませんじゃねぇんだよ!!」


今度は両手で大きく机を叩く、周りも流石に驚く。

無理もない、言われたこともできずに戻ったのだ。


同じ間違いも、何度も何度も繰り返している。


「もういい、席に戻れ…いいか?権田社長と、次のアポイントが取れるまでは、二度と俺に話かけててくるんじゃねよ。分かったか?」


「はい、かしこまりました」


「もういい、行け」


刈谷部長が、僕を手で払う。

自分の席へと戻り頭を抱える。

どうしたらいいのか分からない、取り敢えず電話を掛けてみるか?いや…しかし…


「おい、大丈夫か?」


「またやらかしましたね?」


僕の席の両隣にいてる人が声をかけてくる。

左が、僕と同期で[廣瀬ひろせ 憲司けんじ]何でもそつなくこなす、万能ムードメーカーだ。右には、僕の先輩で[和田垣わだがき 千夏ちなつ]静かで大人しい、同じ人種かと思ったが、周りの空気を読み、取りまとめるのに長けた人物だった。


「大丈夫…ですので」


「なんかトラブルなら聞くぜ?」


「ありがとうございます…大丈夫です」


「そっか、ならいいんだ。何かあれば俺に相談してくれよな」


二人は、入社してからずっと気にかけてくれている。

今回もそうだが、心配してくれているとは思う。


でも、放っておいて欲しい。

助けて、とはお願いしていない。

周りといつも噛み合わない。

無理やり僕の歯車を回そうとしてくる、こちらは回りたくないのに。


また、少し空気が悪くなってしまった。

気にせずにパソコンに向かう、取り敢えずメールを打つ事にした。 〔権田社長 本日はありがとうございました。資料については…〕と。


話しかけるなと言われたので、メールを待ち続ける。

いつ返ってくるかも分からないメールを。


夕方になり、メールの返事がようやく来た。


皆が、飲み会に向けて支度を進めているところだ。

返事の最後の一文に〔また、こちらからご連絡差し上げます。〕と書いてあった。

アポイントの約束はとりつけなかった。


刈谷部長がこちらを睨んでいる。

睨まれたってどうしようもない、アポイントが取れなかった以上、話しかけれないのだから。


徐々に苛立ってきているのか、足音が響く。

パソコンを見ていると、同僚に声をかけられる。


『おい、どうせお前だろ?お前の方向いてるじゃねえか、謝ってこいよ…今から飲み会があるんだからさ』


「そう言われたって…」


『楽しい飲み会が、お前のせいで台無しになるだろ』


「…そもそも楽しくないし」


『おい、何だって!?』


「はいはい、そこまで…二人とも落ち着いて」


廣瀬が間に入ってくる、また来た。


『んだよ、お前だって思ってるだろ?』


「何が?」


『こんな使えねえ奴のせいで、この後の飲み会が台無しになるってさ』


「お前、言い過ぎだよ?俺に成績負けたからって苛立つのも分かるけどさ…」


『あぁ!?今なんつった!』


もうやめてくれ、放っておいてくれ。

周りを見てみろ、また目立ってるじゃないか。

俺が悪いのは分かったから、これ以上事を大きくしないでくれ。俺だけが悪いでいいじゃないか。


「廣瀬…もういいから…」


「よしみんな!楽しい楽しい、飲み会に行こうかー!廣瀬君!場所はバッチリなんだよね??」


「は、はい…大丈夫です」


「よし、じゃあ準備できた人から向かおか!真田!俺といくぞ!お前に話すこ事があるからな!ははっ!」


刈谷部長の隣に、和田垣先輩がいた。

どうやら上手い事話をしてくれて、場をまとめてくれたのだろう。


「真田くん大丈夫?今日の商談の件、私の方から説明をしといたから、なんとか次のアポ取り頑張ってね」


僕の中の歯車が軋む音がする。

少しずつ壊れていく音だ。

噛み合わない歯車を無理に回そうとすると、どちらかが壊れてしまうのは当たり前だ。

形が合わない歯車が悪いのか、速度を合わそうとしない歯車が悪いのか。


僕の中では一人で回る事しか出来なかった。

周りに迷惑をかけずに、ひっそりと、静かに。


そうえば、あの彼女と2人でいる時にはそんな事思わなかった、勝手に噛み合って、流れる速さが心地よく僕を回し続けてくれていた気がした。


何をしているだろうか、また周囲と合わない事に悩んでいるだろうか?それとも、あの喫茶店でいつも通りに、大人の世界を堪能しているのではないか。


そう考えると、笑みが溢れそうになる。


「おぉ!真田!そんなに楽しみか!よし、俺が昔の話をしてやろう!あれはなぁ〜お前ぐらいの時だが…」


またいつもの話が始まった。

昔の自慢話と、苦労話ほどきついものは無い。

この人とは一生歯車が噛み合わないだろう。


財布に入った紙を思い出し、楽しみを考える。

この飲み会を乗り切る為に。

4話、完読ありがとうございます。

若干…私の私情、経験が絡んだ話です。

(最後の方ですが…)


今回は、真田さんだけの物語となりました。

飲み会に参加するのも、また大人の世界でしょうか。


良いことも、悪いことも全てひっくるめて大人になるという事だと思っています。

その良いことや、悪いことは今後の話の楽しみとして…


また次話でお会いしましょう(^^)

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