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22/26

22杯目.反省と気づきで人は成長する

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

仕事終わりに、突然連れて来られた喫茶店。

ハンバーガーが美味しいという、変わった雰囲気のレトロな喫茶店に刈谷部長と二人でいた。


僕と話しをするとの事だ。


「先に行っておくが、クビにしたり怒ったりとかではないから安心しろ」


「えっ?」


「そのつもりなら、こんなとこにはこないよ」


『こんなとこで悪かったね』


「あはっ聞かれてたか…」


『はいよ、お待たせ』


目の前にハンバーガーとポテトが置かれる。

喫茶店で出されるとは思えないほどの、本格的なハンバーガーだ。

かなりボリュームがあり、食べ応えがありそう。


でも、食べる気にはならない。


「先に食べようか、冷めるとあれだし」


「あ、はい、いただきます」


不思議と、食欲が湧かないのに美味しく感じる。

塩気の効いたポテトもかなりホクホクで美味しい。

こんな気分でも、食べ進めてしまえるのだ。


「美味いだろ?」


「はい、美味しいです」


「ここの店主が変わっていてな、さっきの女性がここの店主なんだよ」


「え、そうなんですか」


「あぁ、昔ながらの喫茶店とハンバーガーが好きらしくてな、一緒にやってしまおうって事らしい」


「日本語も流暢でしたもんね」


「な、見かけでは分からないもんだろ?」


「はい、僕も近所に似た雰囲気の喫茶店がありまして、コーヒーとナポリタンが美味しく、そのイメージしかなかったもので」


「そうなのか、よく行くのか?」


「はい、馴染みの店ですね」


「そっか…意外だな」


()()()()()()()()、でしょ」


「ははっ、確かにな」


それからしばらく食事を続ける。

静かに、何も話すことなく。

この食事が終われば、何を話すのだろう。

不安に駆られながらも食べ終わる。


食べ終わるのと同時に、コーヒーが運ばれる。


「さて、話しの続きだが…」


きた。


「は、はい」


「今日の事だが…お前、諦めてただろ?」


「あ、いえ…その…」


「大丈夫、本当のことを言ってみろ」


「…はい、もう終わったと思っていました」


本心を話す。

これ以上に悪くなることはないのだから。

ここで取り繕っても仕方がない。


「自分のミスで商談が潰れて、何を言っても、何をしても無駄だと、そう考えていたのか」


「…はい」


まるで尋問のようだと感じた。

怒らないと言っていたが、怒鳴らないの間違いではないのだろうか。


「それがなぜ、あんな結果になったか分かるか」


「上司が来て、正式な資料を持って謝罪をしたから」


「違うよ…」


違うはずがないだろう。

僕のような新米が頭を下げるより、上司が来て頭を下げる方がよっぽど効果的だと思う。


「あの社長が何に対して怒ってたか分からないだろ」


「僕が、言われていたことを忘れたからですか」


「それもあるが、一番の理由は()()()()


「周り、ですか?」


「言ってたろ、知人にイベントなどを頼んでいたって。周りに迷惑をかけたり、知人の期待を裏切ることを一番に嫌がっていたんだよ」


「自分じゃなく?」


「そう、自分より周りの事を考えてね」


それでもよく分からなかった。

周りの事を考えてあそこまで怒れるのかと。


「あの場で本心で言ってたんだよ、周りに伝えていた、知人にお願いしていたのにって」


「だから、あんなに怒っていたんですか?」


「そう、あの場でしか話をしていないが、あの社長は自分の事より、周りを優先する人なんだよ」


それでも、納得はできても理解はできない。

自分が一番大切に決まっている。

自分のために行動するものだろうと考えるから。

仕事だって、自分が生きるために働くんだから。


「お前だって、周りに助けられた事もあるだろ?」


「はい、あります。まさに今…」


「だろう?そうやって、助けられてきたからこそ、周りを大切にするんだよ」


「自分が助かるためにって事ですか?」


「ははっ、違うよ…相手の事を考えるって事さ」


「それってどういう…」


「あの社長の気持ちを考えて伝えるんだよ、例えば、出来ない事を出来ないって言い切るんじゃなくて、あなたの為に、ここまで努力したけど出来ませんでしたって、伝えるんだ」


「それ前にも…」


「そう、そうしないと自分の気持ちを軽んじた、または無視したって捉えられるからね」


「それってでも、嘘って事ですか」


「違うよ、本心で話すんだよ、相手のことをちゃんと聞いて思いを伝えるんだ、しっかりとね」


それはとても難しい様に感じる。

誰だって、本心を隠すもので話したがらない。

僕だってそうだ、言いたくない事は多い。


「相手のことを考えてないと、何が好きとか、どうして欲しいとかって理解できない。建前で教えてくれるかもしれないが、本心は違う事が多い」


まさに、本城さんの事だった。


「だからあの社長は、周りの事を考えて、常に本心を聞こうとしているんだと思う」


「それに何の意味が…」


「人だからだよ、いつの時代も人と人との繋がりで紡がれてきた歴史がある、それを大切にするんだよ」


「よく…わかりません」


「いいよ!まだ分からなくて、おれもまだ分かった気になっているだけだ……ただな、お前に言える事は、相手に信頼して欲しいなら、本心を曝け出せ」


「本心を…ですか」


「そうだ、お前とも本心で話せたからこそ、こうして一緒に過ごせているって考えてみろ」


本心で伝えるって簡単なことではないと思う。

聞いても、答えてくれるものでもないし。

なにより、待っていては教えてくれない。

本城さんがそうだったように。


「あとは、自分のことだけじゃなく、周りのことも考えて行動する、それが大人ってもんだよ」


「大人……」


「だから俺もまだまだ子供だったって事だな、俺も自分のことばかり考えて、お前にあんな態度を」


「いえ、それは…」


「謝っても遅いと思うが、すまなかった」


刈谷部長が頭を下げた。

もしかしたら、ずっと様子がおかしかったのも。


「こちらこそ、ご迷惑ばかりをおかけしておりました、申し訳ございません」


僕も頭を下げる。

今は建前じゃなく、本心で伝えた。


「まぁ、今回の件は俺も昔に何回もやらかしているよ、もっと酷いのもな」


「そんな事ないでしょう」


「あるんだよ、そうやって成長していくんだ。辛い事や、やりたくない事も経験して、それを乗り越えてお前の先輩たちは、今の場所で頑張っている」


「皆さんが…」


「だから、お前もこれぐらいで諦めるな、すぐに信用しろと言わないが、何かあれば俺がいる。まだまだ経験してない事は多いんだから、楽しそうに頑張れ」


「ははっ、今の僕には少し厳しいですね」


「すまん、それもそうだな」


二人は店内で笑い合った。

昔の僕ならこんな光景になるなんて、想像もできなかっただろう。

本心で何かを伝える大切さが、見に沁みていた。


そして、僕も自分の事だけじゃなく、本城さんの気持ちを考えていたら、あんな事にはならかった。

そう考えてしまう。


それからは、お互いに本心で話し合った。

仕事に対することや、プライベートのことまで。

さすがに本城さんとのことまでは、話してていない。


それでも、前までの嫌悪感は薄れていた。

許したわけではないのだが、自分にも仕事に対する思いで、悪いと思うところは沢山あったからだ。


「そういえば、さっきの出てくる時に襲われた件、本当に大丈夫か?」


「はい、大丈夫です、お伝えした通り廣瀬が助けてくれましたし、部屋の外には人も沢山いたので」


「そっか…ならいいが…」


「あの、先輩はどうなりますかね」


「ん?そうだな、俺の口からはなんとも…」


「そうですか…分かりました」


「大丈夫、上手いことやるさ、任せておけ」


「はい、ありがとうございます」


深くお礼をし、感謝を伝える。

今日の事もそうだし、この場での話しも。

少しだけだが、大人になる事を理解した気がする。


周りの事を考えて行動する。

今までの僕は自分の事ばかりだった。

何もかもが、子供の考え方だったのだ。

自分さえ良ければそれでいいと。


それでは、大人になったとはいえないと。

気づかせてくれたのだから。


一通りの話しを終え、会計を覚ます。

断ったのだが、刈谷部長が奢ってくれた。

また感謝を述べながら車へと戻る。


幸いな事に自宅が近かったので、駅まで送ってくれるとの事だった。

お言葉に甘えて、刈谷部長の運転で移動する。

道中の車内は、重い空気もなく、明るいものだった。

行きたと違って時間が早く感じるほどに。


そうして、最寄りの駅で降ろしてもらえた。


「本日は本当にありがとうございました」


「いいよ、これからもよろしくな」


「はい、こちらこほお願いします」


「権田社長の件、抜かりなく頼んだぞ」


「はい、また分からないことがあれば伺います、その時はまたよろしくお願いします」


「大丈夫、大丈夫、何でも聞いてきて」


「本当にありがとうございました」


「いいって、お疲れ様」


「お疲れ様でした!」


そう挨拶を交わすと、走り去っていく。

清々しい気分だった。

悩みが少しだけ晴れたような。

今日の朝の気分が嘘みたいに。


そうして、自宅まで歩いていく。


すると、ポケットに振動を感じた。


スマホが震えて、電話が鳴っていたのだ。



名前には[ 本城 百合 ]と表示されて。

22話ご完読ありがとうございます。


伝えたいことや、思いが重なりすぎました。

書いては消して、消して、また書いて、消して。

一から読み返して、書いては消してを繰り返して。


同じような経験をした方も多いのではと思います。


さて、ようやく折り返しの電話が鳴りました。

数日経っております。

本城さんのと電話の意図とは。


次話でもお会いしましょう(^^)

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