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21杯目.本気と嘘は隠しても相手に伝わる

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

暫く無言の車を走らせ続け、会社に到着する。

権田社長がいないとも限らない。

それでも、車を走らせるようにと言われ来たのだ。


近くのコインパーキングに停め、車を降りる。


「よし、いくぞ…こっちだな?」


「あ、はい」


何も説明はしてくれない。

ただ、資料を作り直していたので、謝罪と再度交渉に向かうのだろうとだけ分かる。


会社に着くと、僕が前を歩き中に入る。

前にいた受付の人に声をかける。


「す、すみません株式会社ネオ・マーケティングの真田です、権田社長はいらっしゃいますでしょうか」


「真田様ですね、確認しますので、そちらにおかけになって少々お待ちください」


そう言いながら、受話器を取り電話をかける


僕たちは隣にあった椅子に座る。

受付の方を見ると、なにやら話し込んでいる。

そりゃそうだ、突然来たのだから。

こちらを確認しながら、話し込んでいるようだ。


電話が終わったのか、受話器を置き声をかけられる。


「お待たせしました、では中へご案内します」


意外だった、帰らされるかと思っていた。

前に商談した部屋へと案内を通される。

話しを聞いていただけるという事だろうか。

まだ、望みは残っているのだろうか。


部屋に案内され、席に着く。

刈谷部長が入り口側の席に座り、権田社長を待つ。


1時間位経っただろうか。

かなり長い時間待たされているように感じる。

待てど待てど来ないのだから。

判決前の罪人はこんな気持ちだろうか、と考える。

急に訪問しといて、自分勝手だとは思うが…。


すると、部屋の扉が開き権田社長が入ってくる。

その顔は険しく、穏やかではなかった。


無言のまま、目の前の席に座る。

先に言葉を出したのは刈谷部長だった。


「急な訪問大変失礼します、重ねてこの度は、私の部下が大変申し訳ございませんでした」

「申し訳ございません」


席から立ち上がり、深く頭を下げる。

僕もそれに合わせるように頭を下げる。


「で?何しにきたの?」


とても冷たくて、重たい言葉がのしかかる。

目を見る事も出来ない、頭を俯けるしか。


「申し遅れましたが、私、真田の上司で刈谷と申します、今一度お話しをさせて頂きたく、こうして突然の訪問とさせていただきました」


内ポケットから名刺を差し出すが、権田社長は名刺をすぐに机に置き、じぶんの名刺を出すことはない。

まるで、話しをしないから渡すつもりもないと。


「もういいよ、他に頼むから、これで終わり?」


「いえ、こちらを見ていただきたいと存じます」


鞄から資料を取り出す。

先ほど作り上げていた資料だ。

権田社長の希望通り、明るいポップな広告の。


「今更なにさ、さっき電話では時間がかかるんだって、真田さんから言われたんだけどね!」


「はい、そちらに関しても私の指導不足と反省しております」


「だからなに?今更出されたって、こっちの気持ちはどうなるのさ、楽しみにしてたのにね」


「はい、お気持ちはごもっもです。権田社長も周りにお伝えしたと聞いておりました、周りの方々にもご迷惑をおかけする形になっていたかと存じ上げます」


「そうだよ!僕だけじゃないからね!?イベントとかやろうと、知人たちに根回ししてさ!」


「はい、おっしゃられる通りだと」


「それを、同じ時間かかるからってさ…」


僕には、なにで怒っているのかが分からないでいた。

僕のミスに対して怒っているのかと思っていた。

だから、信用ならないとことは付き合わないと。


「はい、ですので私の教育不足により、この度、権田社長には大変なご迷惑をおかけしたと反省しております。ですので、私自らこちらの資料を作成し、こうしてお持ちさせていただいた次第でございます」


「………」


「こちらでお話しを改めてさせていただきたいと、私どもは考えております。権田社長含め、皆様のご期待に添えれるよう何卒、よろしくお願い申し上げます」


「………」


「重ね重ねこの度は、誠に申し訳ございません」

「申し訳ございません、でした」


僕は、刈谷部長に合して謝る事しかできない。

今この場で何を考え、何を話しているか。

どんな事が起こっているのか分からないから。


「で、この資料は完成なの?」


「いえ、いくつかの不明な点と、擦り合わせをさせていただきたい部分がありますので、直接権田社長とお話しをさせていただき、完成させたいと存じます」


権田社長は、資料を見ながら暫く考え込む。

考え込んで席を立ち、出て行こうとする。

あ、終わったと思った。


「ちょっとだけ待ってて」


それだけを言い残し、部屋を出ていく。

やはりダメだったのだと感じる。

何をやっても意味がなかったのだと。


少しして権田社長が戻ってきた。


「午後の会議明日に回したから、時間空けたよ」


その言葉は、僕にとって理解ができなかった。

さきほどまで険しい剣幕だった、権田社長の顔が少しだけ緩んでいた。

もう駄目だと言われていたのに、何故。


「ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます!」


「いいよいいよ、で?何をするの?」


「はい、それではですねまず…」


そこからは、何も会話が入ってこない。

普通のやり取りが、普通に行われていた。

このまま、この仕事が進んでいくかのように。


「それでは、これで確認は以上となります」


「わかったよ、ありがとう」


「いえ、こちらこそ、貴重な会議のお時間をずらしていただき、本当にありがとうございます」

「ありがとうございます」


「いいよいいよ、大した会議じゃないから」


「いえ、それでもです。それに、今後は真田が窓口とさせていただきたいのですがよろしいでしょうか、勿論、私が後ろにいて指導をしていきますので、何卒よろしくお願い申し上げます」


改めて深く頭を下げてお願いをしている。

なんで、ここまでしてくれるのだろうか。


「……真田さん」


「は、はい!」


「君はいい上司を持ったね、私としてはねこのまま刈谷さんに窓口をしてもらうか、別の人にお願いをしてもいいわけだよ」


「はい、おっしゃられる通りかと思います」


「その方が刈谷さんも楽だろうしね、それでも真田さんを窓口にってお願いしたのだよ、わかる?」


「は、はい……」


「まぁ、後から話しを聞きな、それだけ真田さんに成長して欲しいって想ってるって事だよ」


「はい」


「私としては、真田さんのままで大丈夫です、刈谷さんがいてくれるなら安心もできます」


「ありがとうございます!これからも、真田含めてまして、末永いお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます」

「お願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします……あっ」


「どうかされましたでしょうか」


「ごめんね、さっきは失礼だったね、改めましてこの会社の社長をしてます権田です。お見知りおきを」


権田社長が名刺を差し出した。


「いえ、とんでもないです、頂戴します」


そこからは、前に見た光景が広がっていた。

お互いに仕事で忙しいはずなのに、雑談で盛り上がっているのだ。

入ってきた時とは、違った空気の中で…和やかに。


「あ、もうこんな時間だね!ごめんね!」


「いえいえ、貴重なお時間を頂きました」


「じゃあ、完成を楽しみにしているよ」


「はい、ぜひとも楽しみにお待ちください」


お互いに笑顔のまま、会社から出ていく。

何度も深いお辞儀と、お礼、謝辞を述べながら。


停めていた営業車に乗り込み、エンジンをかける。

僕は最初から最後まで何もしていなかった。

何も理解できていなかったのだ。

オウムのように、復唱するだけで。


暫く走っていると、刈谷部長が口を開く。


「今日は、この後予定ある?」


「へっ、あ、いや何も…ないです…が…」


「そっか、この後の時間貰っていい?」


「はい、大丈夫ですが、何を…」


「ちゃんと話しをしておきたくてさ」


「分かりました…」


刈谷部長が誰かに電話をする。

今日はこのまま帰るから会社に戻らない。

後の事はよろしく。

何かあったら電話はとれると。

それだけを伝え電話を切る。


路肩に止めるように言われるので、停車する。

運転を代わるとの事なので、席を移動すした。


助手席に座った僕は怖かった。

今から何をされるのか、どこに行くのか。

何も分からないまま、車がどこかへ走っていく。


「あ、ごめん、何も言ってなかったな」


「は、はい」


「ちょっとご飯でも食べに行こうかと」


「かしこまりました」


「いきつけのとこでね」


「はい」


それから、また会話は無くなり静かになる。

重苦しい雰囲気に耐えながら、座り続けている。



しばらく走り、車をコインパーキングに停車させた。

どうやら目的地には着いたようだ。


そこは目を疑った。

居酒屋に行くのかと思えば、喫茶店だった。

それも、レトロな雰囲気のレストランだ。


「意外だろ?ここのハンバーガーが美味しくてな」


それまた意外だった。

レトロな雰囲気の喫茶店には似つかない物だ。


言われるがままに店内に入っていく。

内装も、いつも行く喫茶店とは色味が違うが、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる。

空気感は同じなのだろう。


僕は、店のテーブル席に案内される。

水を持ってきた女性の店員さんが声をかける。

金髪で青い瞳をしていた、外国人だろうか。


『おや、また来たのかい』


「ははっ悪いね」


『どうせいつものだろう?』


「頼んだよ」


『おや、二人分かね、了解』


「勝手にすまないね、よかったらオススメをね」


「いえ、結構です…大丈夫です」


何を注文したのか、何があるのか分からないのだ。

まぁ、ハンバーガーが美味しいって言っていたので、おそらくそれが来るのだろう。

少しだけ、楽しみにしながら周囲を見渡す。


「さて、話しをしようか」


急に顔が引き戻される。

何の話をされるのだろうか。

クビにでもなるのか。

覚悟はできてているが、構わない。

黙って受け入れよう。


21話ご完読ありがとうございます。


だけが助けてくれる人がいるって安心しますよね。

でも、それが善意だけだとは限らない。

思惑や、下心、相手を油断させる。

色々な理由があるが、本当に、純粋に心配してくれて助けてくれる人は大事にしたいですね。


見抜けれるのは、センスと経験ですが…。


また次話でもお会いしましょう(^^)

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