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12杯目.旅の思い出は永遠に(中編)

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


※こちらの作品はフィクションです。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

僕は、本城さんと歩きスマホのナビを見る。

事前に調べておいた古民家レストランに向かう為に。


スマホがあって助かったと感じる、格好良く案内しようかと思ったが、緊張で頭から地図が消えたからだ。

時間も無駄にしないよう、すぐに地図アプリを立ち上げ二人で目的地に向かって歩いていた。


「どれぐらいなんですか?」


「あと少しですよ、楽しみにしてください」


「はい!古民家って聞くだけで楽しみです」


「本城さんが好きかなって、考えて選びました」


「それはそれは、ありがとうございます」


そう話しをしていると、目的の古民家レストランに、無事に到着する。

僕が思っているより雰囲気がいい。


入り口は木々で隠れていて、奥に古民家が見える。

隠れ家的な景観が、周りの景色と混ざっている。


「わぁ…ここですか?」


「はい、ここです」


「なんか、大人の店って感じですね」


「でしょ?僕も想像した以上です」


「高くないですか?大丈夫ですか?」


「ここは、僕に任せてください。本城さんのために計画した旅行ですから、楽しんじゃってください」


「いえ、それは悪い…」


「ではいつか、この日の絵をください」


「えっ?」


僕は、叶わなくてもいいお願いをする。

僕と本城さんが何か、繋がっていられるように。

時間のかかるお願いを…願いを込めて。


「本城さんの絵が欲しいなって思いました」


「いや、それでは釣り合いが…」


「ささっ!行きましょうー!時間が惜しいですよ」


「あ、ちょっと…」


僕は本城さんの腕を引き、レストランへと入る。


木々を抜けた先には、一つの世界が待っている。

この場所だけ、時間が静止したような。


「どうですか?ここまで来て帰りますか?」


「これは…ずるいですね…」


「中はもっと凄いですよ、行きましょう」


「あの、ちょっと待って下さい」


「どうされました?」


手を離し、カバンの中からスマホを取り出す。


「写真、撮らせて下さい。沢山の絵を描かないといけないですから」


そう答える本城さんは、笑っていた。

無邪気に、心の底からの笑顔を。


そして、色々な角度から様々な写真を撮り始める。

スマホを覗くその笑顔は、とても眩しく。

僕も写真に収めたくなるほど、綺麗だった。


ある程度の写真を撮り終えたのか、本城さんが前を歩き、レストランの中へと入っていく。


中は木の温もり溢れ、風情ある空間が待っていた。

窓の外から漏れた光や、家具なども木で作られた。

この統一感は優しくもあり、どこか懐かしくもある。


ふと、あの喫茶店を思い出す。


「ねぇねぇ、あの喫茶店を思い出さない?」


「ははっ、同じ事を考えていました」


「でしょう?」


本城さんも同じ事を考えていたらしい。

離れた場所で、二人が出会った喫茶店を感じさせるこのレストラン、忘れられない思い出になりそうだ。


「いらっしゃいませ、ご予約などは?」


「はい、真田で」


「大変お待ちしておりました、ではお席へご案内させていただきます」


抜かりなく予約は済ましていた。

スムーズに席へと案内される。


「すごい、大人の世界だ…」


本城さんから言葉がこぼれる。

僕は、笑いそうになったが堪えた。


案内された席は、また一際の表情を変える。


丸いテーブルに席がニつある。

周りの窓からは外の景色が映り、紅めき始めながらも、いまだ緑が残る葉々。

外の景色が一つの絵画のようにも感じとれる。


何組か食事をしているのに、静かに感じさせるこの雰囲気も美術館のようだと思う。行った事はないが…。



椅子に座ると、メニュー表を机の上に置く。

秋らしく作られた料理の数々に、目を奪われる。

本城さんは、金額の方にも奪われたみたいだが。


(ねっ、これ…本当にいいんですか?)


(はい、お気になさらず)


(…あの…お言葉に甘えても?)


(もちろん、財布は気にしないでください)


飛び跳ねたくなる気持ちを必死に抑えている。

抑えきれず、表情からはかなり溢れていた。

ただ一言、可愛いなって思う。


僕は肉料理のプレートを、本城さんは魚料理のプレートを注文する、食前にそれぞれの飲み物と一緒に。


人が多いので、ここでの写真は我慢するそうだ。

必死に目に焼き付けようと周りを見渡している。

少しだけ子犬のようだと、また可愛らしく見える。


そうすると、視線を注がされる香りと共に、それぞれの飲み物とプレート料理が運ばれてくる。


彩りよく盛られたサラダや、キノコの炒め物。

そして、メインの肉料理と、魚料理。

どちらも一つのプレートとして、季節を感じさせるような色どりに、目でも楽しませてくれる。

本城さんは我慢できなかったのか、スマホを取り出し料理の写真だけ撮り始める。


(こ、これなら大丈夫だと思う…よね?)


(はい、料理ぐらいなら大丈夫でしょう)


食べるのが勿体無いと感じるが、冷めてしまってはこの料理に失礼だ。

心の中で(いただきます)と言い、食べ始める。


期待を上回る美味しさだ。

サラダの新鮮さはもちろん、メイン料理も主張し過ぎずに、隣にあるキノコの炒め物と肩を組んでいる。

全体的に完成され、まさにプレート料理。


一つ一つの組み合わせにより、感情が膨らむ。


(美味しいね!美味しいね!美味しいね!)


本城さんは、語彙力を無くしたらしい。

その気持ちも分からなくもない。

それまでにこの料理と店内の雰囲気が、僕たちの心と頭を満たしていくと感じさせてくれる。


本城さんも完食したようだ。

僕は量が少し物足りないが、丁度いいと思う。

完食したお皿を前に、一呼吸つく。


(美味しかったよー、なにこれ)


(はい、ここに来てよかったです)


(私ももう、幸せだよー…)


(まだまだ、お昼ですよ) 


(はっ!?そうだった!まだ楽しみはある)


名残惜しそうに、レストランを出ようと伝える。

ずっと居座ってしまいそうな空気から逃げる。


そうして、木々の間をくぐり外に出る。


「美味しかったね!雰囲気もいいし!」


「はい!とっても良かったですね!」


「ありがとうございます、ご馳走様です」


「いえいえ、お気になさらず」


深々と頭を下げて、お礼を述べる。


次の目的地は、いよいよお寺に向かう。

どうやら、本城さんも事前に調べていたようで、行きたいところがあるとの事。

地図で確認すると、今いる場所と少し離れていたので、車で移動する事にした。


駐車場での清算を済ませ、車に乗り込む。

先ほどのレストランが気に入ったのか、撮った写真を眺めながら笑っている。


「そんなに良かった?」


「はい!人生で一番ですね、これは!」


鼻高らかに答える。

これだけ喜んでいただいたら、あのレストランを予約しておいて本当に良かったと思える。


そこからの車の移動は短かった。

話し込んでいる間に、目的の寺へと到着する。


先ほどの海辺とは大きく変わる。

同じ鎌倉の中でも、ここまで雰囲気が変わるとは。

先ほどが日向だとしたら、こちらは日陰だ。


明るく陽射しが照らし、朗らかな気分になれる。

ここに来ると、静寂に包まれるので、木々のざわめきがよく聴こえるようになる。


「落ち着きますね」


「うん、静かで気持ちがいい」


心が洗われるとはまさにこの事だろうか。

差し込む陽射しが、進む道を照らしてくれている。


あまり会話する事なく、道を歩んでいく。


一歩一歩がゆるやかに、流されるように。



遠くから小川の流れる音が聴こえていた。


「川の音が聴こえますね」


「ここのお寺にはね、川や滝があるんだって」


「あ、こちらみたいですよ、看板がありました」


看板に従い、道に沿って歩いていく。

歩くにつれて、涼しげな空気が漂い始める。

奥からは川が流れていた。

川の向こうには滝も見える。


「凄い…やっぱり実際に来ると違うね」


「静かなお寺の中に、川や滝があるとは」


「力強いのに優しい…」


しばらくこの景色を見ていたいとの事で、僕は近くにあったベンチに腰をかける。


ここで僕は、人生で一番静かな時間を過ごす。

山から水が流れ、滝を伝ってこの場所に川が引き込まれる、永い年月をかけて出来たであろうこの場所に、溶け込んでいくように。

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