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10/26

10杯目.仕事の成功後は何食べても美味しい

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

朝、いつも通りに出勤する

昨日のメンバーであれば、ニ日酔いにならなかった。


朝一に電話をしようと思ったが、夜まで我慢する。

休憩時間に、旅行サイトや旅行のまとめサイトなどを見て、提案するための情報を集める。

昨日の電話は恐らく、旅行の話しだろうから。


季節は、少しずつ涼しい風を呼び始める。

葉々が徐々に紅らめいて、表情を変えている。

夏の終わりは、あの日の花火と共に告げていたんだ。


秋の紅葉、寺社仏閣などが見れる鎌倉などがいいか。

前に京都に行きたいと行ってていたが、さすがに…


「真田ー!ちょっと来い!」


「はいっ!」


刈谷部長に呼ばれる。

どうやら、明日の会議資料をまとめないといけない。

こういった雑用も最近は振られるようになった。


非常に面倒くさい。

この前も遅くまで残るハメになったんだから。

今日は早くに仕上げないといけない。

夜には、大事な予定があるのだから。


気づけば、短い針は8の数字を指していた。

周りの同僚たちはもう既にいない、また一人だけ。


最後の一人になった時だ、資料はもう少しで出来るが、スマホを取り出し、連絡帳から本城さんを探す。

電話でもしながら、仕上げようと考える。

あと少しで終わるのだから、大丈夫だろう。


おや、中々出ない。


「おかけになった電話番号は…」


電話に出なかった、仕方ない。

再びパソコンに目をやり、資料を仕上げる事にする。

すぐに電話に出れるよう、スマホを隣に置きながら。


完成した頃には21時を回っていた。

パソコンの電源を落とし、帰りの支度をする。

日付が変わる前には家に帰れそうだ。


事務所の扉を閉めて、施錠する。


夜の静かな廊下に、着信音が響き渡る。

驚きはしたが、絶対に本城さんからだと確信できる。

スマホを覗くと……やはり間違えてなかった。


「もしもし?」


「真田さんすみません、お風呂に入っていました」


思いもならなかった発言にに少し驚く。

想像したわけではない…してない。何も。


「もうゆっくりして大丈夫なんですか?」


「はい、まさか本当にかけてくれるとは…」


「えっ?」


「あ、いえ、お酒を飲むと記憶が無くなるって言うじゃないですか?忘れてるだろうなーって」


「あ、あぁ!飲む量を控えたら大丈夫だよ」


「そうなんですね!…それで、昨日の電話ですが…」


「もしかして旅行の件?」


「そうです!正解です!」


駅までの道は、昼間と違ってかなり静かだ。

静かなはずなのに、かなりうるさく感じる。

この声を聞くと、心臓の音が大きくなるのだから。

顔が見られないだけまたマシだ。

この音は、僕だけにしか聞こえない。


「それでですね、前にお伝えした京都はどうかなーって、来週の土日などに」


「あっ、それだけどね、近場の日帰りでどうかと」


「えっ?」


「鎌倉だったら、この季節秋の紅葉もあるし、寺社仏閣もあるし楽しんでいただけるかなって」


「それは…そうですが…」


「それに、初めてのお出かけじゃない?いきなり京都に一泊二日とかじゃなくて、近場の日帰りでゆっくりとどうかなって」


「んー………」


「ダメ…かな?」


「確かに一理あります、そうしましょうか」


少し元気が無くなったのだろうか。

声のトーンが落ちている。


「鎌倉も近いとはいえ、距離はありますからね」


「分かりました、でも車は絶対に外せません!よろしくお願いします」


「もちろんです、しっかりご用意しますよ」


「では、土曜日などはいかがでしょう?」


「はい、大丈夫ですよ。待ち合わせはこの前と同じ、駅前でいいですか?」


「はい、大丈夫です」


「では、来週の土曜日に」


「はい、楽しみにしています」


そう言うと電話を切る、丁度駅にも着いた。

気のせいであればいいが、よっぽど京都に行きたかったのか、少し声の感じが変わっていた。


僕は精一杯、鎌倉で楽しませようと誓う。

帰りの電車でレンタカーを予約し、鎌倉を調べる。




迎えた土曜日…ではなく、金曜日。

今日は、権田社長に会いにきている。

いつもの会社ではなく、近くの喫茶店に呼ばれる。

この喫茶店もレトロな雰囲気で、中々好まれる。


「いやーすまないね、設備のトラブルで点検業者が急遽入ってしまってね」


「とんでもないです、でもここでいいんですか?」


「大丈夫!大丈夫!ここの店主とは顔馴染みでね、たまに借りているんだよ!な!」


『その分、しっかりと注文してくださいね』


「厳しいねー!ははははっはは!」


どうやら、長年の常連さんらしい。

店主も社長も友達のように話している。


「さてさて、話しをしようか?」


「はい、この度は私どものご提案をお選びいただき、ありがとうございます」


「いいよいいよ、こっちがお願いしているからね」


「はい、つきましては今後の流れと、お渡ししておりましたサンプルから、Web広告、チラシなどの作成イメージを固めさせて頂ければと」


「うん、それなんだけどね、これどうかなって?」


渡されたのはサンプルの一つだ。


写真やイラストを多く使うことで、ポップで明るく、親しみやすい見出しで文字を少なくして作り上げる。

今更だが、権田社長の会社は中古車の買取販売などを行っている。

地域に根付いた、親しみやすい会社を目指すそうだ。

昨今のイメージ低下を懸念しての考え、との事。


「これ…ですか…」


「うん、どうかな?」


「とても良いと思います、ですが、一番最初の広告はこちらのシンプルな雰囲気の物にしませんか?」


「どうしてだい?」


「はい、次からは社長のご提案頂いたものでもいいのですが、最初の物だけはシンプルにして、手に取ったお客様が見やすいようにしたいなと」


「それだと、見てもらえないのでは?」


「いえ、だからこそ会社の真面目さや、最初だからこそ伝えたい事が、しっかりと乗ると思うのです」


「…うーん……」


「いかがでしょうか?」


「分かった、そうしようか」


「かしこまりました、それでは納期ですが…」


一通りの打ち合わせが終わった。

後は会社に戻って、報告と書類を提出するだけだ。


「今日はありがとう」


「いえいえ、こちらこそ貴重なお時間をいただきありがとうございます、今後ともよろしくお願いします」


「ちなみに、お昼まだだよね?」


「え?あ、はい」


「ここのナポリタンが絶品でね!食べていきなさい」


「えっ?いいんですか?」


「もちろん、それに誰かさんに注文するように言われてるからね!はははっ」


「ありがとうございます、ご馳走になります」


そう言うと二人分のナポリタンを注文する。

確かに絶品だった、バターのコクとトマトの酸味、ケチャップの甘味などが程よく麺に絡みついている。

間に挟まれてる、塩味の効いた厚めのベーコン、食感の違いを生む玉ねぎや、ピーマンも変化を生む。


あっという間に食べ終わってしまい、食後にコーヒーも頂く、でも、何故か美味しく感じていた。

苦いと感じていたはずなのに、今日はその苦みすら丁度いいと感じている。


「このコーヒー美味しいですね」


「お、コーヒーの美味さが分かるのか?」


「はい、私も近所の喫茶店によく行くもので」


「お洒落な今風の喫茶店か?」


「いえ、このお店のような落ち着く雰囲気です」


「おぉ、そうか、それはいいな!」


鎌倉旅行に行く時も、あのお店のように、落ち着いた喫茶店に寄るのもいいかもなと考える。


僕は苦いコーヒーが、好きになってきているようだ。


そうして食事を済ませ、帰る支度を整える。

お会計を済ませ、お店を出た直後だった。


「真田さん、すまんがやっぱり最初に提案したサンプルの物でお願いできんかな?」


「と、いいますと?」


「やっぱりさ、明るく親しみやすい会社として認知して欲しいからさ、最初から明るくいきたいんだ」


「かしこまりました、お任せください。また出来上がりましたらご確認お願いします」


「楽しみに待ってるよ、頼んだよ」


さらに直後、スマホが鳴る。

会社からだろうか。

確認する前に、社長と挨拶を交わし離れる。

少し離れたところで確認すると、本城さんだった。


明日の旅行の事で何かあったのだろうか。


折り返し、電話をかける。


「もしもし?なにかありましたか?


「あ、いえ、お忙しい時にすみません!」


「今は大丈夫ですよ」


「明日の旅行なんですが…」


キャンセルなのか?予定が変わったのか?

次に続く言葉に固唾を飲む。


「時間って何時集合?」


「あっ、本当だね」


「ふふっ、お互いに忘れてたね…車を借りるんでしょう?その事もあるから何時かなって」


「今日の仕事終わりに借りに行くから、何時でも大丈夫だよ」


「なら、7時ぐらいでどうかな?」


「おっけ、大丈夫」


「じゃあ,明日の7時に駅前に」


すっかり時間の事を忘れていた。

今日は早くに上がらないといけないので、急いで会社に戻り、報告と書類の提出を完了させる。


「刈谷部長、こちらです、確認お願いします」


「おう、きたか」


書類を手に取り確認していく。


「うん、問題ないな」


「ありがとうございます」


()()()()()()()()()でいくんだな」


()()()()()()()()()()()()()と言っていただけました、終わりにはナポリタンもご馳走になりましたし」


「そっか、良かったな。抜かりなく最後まで頼むぞ」


「はい!」


何か引っ掛かる気がする。

まぁ大丈夫だろう。初めての案件で不安になっているだけだと思う。

それに明日は、待ち望んだ本城さんとの鎌倉旅行だ。


今日の仕事を早くに終わらし、レンタカーを取りに行かねば。

準備は抜かりなく、気合も十分。

せっかくの旅行だ、僕も目一杯楽しんで、本城さんを精一杯楽しませようではないか。




私はこの旅行と、この日の事を後悔する事になる。

公私混同するなとはよく言うが、まさにそれを体現してしまったのだ。

鎌倉旅行さえも、行かなければ良かった…と。

10話のご完読ありがとうございます。


ようやく、二人の旅行が始まります。

好きな人と行く旅行は、全てが輝いて見えますね。

何食べても美味しいし、どこに行っても楽しい。

そんな甘酸っぱい話を、次に楽しんでください。


次話でもお会いしましょう(^^)

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