脅威
まず3人は森に来ていた。
『影世界』へ行く為の検討はついたものの、
まずはそれが正しいのかを確かめければならない。
「と、言うわけで森にやってきたわけですが…」
「魔力の密集してる場所とか、魔獣が出てくる場所とか、わからないんじゃないですか?」
ユイカが疑いの目をカシアに向ける。
当のカシアは気にしていないようで、
「だーいじょぶ、なんとかなるって!」
と、とても能天気な返事をした。
「はぁ…目星はついているんですか?」
ユイカが辺りを見渡して言う。
「まぁ最近『サーチ』の範囲も広がったし、
瞬間移動も使えるから地道に探すしかないねぇ。」
カシアがそう言って歩き出すとユイカは大層不満なようで、
「……甘いものがたべたい…」
と小声で呟きながらカシアについて行った。
「あの、お姉ちゃん」
ユアがカシアの背中をつんつんする。
「どしたの〜?」
笑顔で優しく振り返り、頭を撫でた。
「あの、ちょっと言いずらいんだけど…」
相当言いずらいようで、なかなか言ってくれない。
「どうしたの?何か大変なことがあった?」
「…は、まさか、忘れ物!?」
カシアが大袈裟に反応してみても、
「うぅん。そういうのじゃないの。」
否定して少し空いて、ユアが口を開く。
「……前言った、『成功例』の私の事、覚えてる?」
突然そんなことをいうユアに、どう返せばいいか分からずカシアは
「う、うん。覚えてるけど…急にどうしたの?」
と、ぎこちなく返してしまった。
ユアはゆっくり口を開いた。
「…その、『成功例』の私が…近くにいる。」
その言葉で2人は攻撃態勢に入ったが、一足遅かった。ユアの胸には、既に穴が空いていた。
カシア達が森に入る少し前。3人の話し合いが終わった頃。
『影世界』・未開の地『?????』でも、
話が行われていた。
「おい。『No.09』は居るか。」
部屋の豪華な椅子に座り、魔液晶を見ていた
???・????は近くにいた使用人に声をかけた。
「少々お待ちください。」
使用人が部屋を出ていくと間もなく、『No.09』が扉をノックした。
「親愛なる王よ。失礼します。」
そこには、メイド服を着た少女が立っていた。
「来たか。??よ。」
???・????が名前を呼ぶが、あまり嬉しくはないようで、
「王よ。その名前はやめてください。私は機械です。よって名など不要です。いつものように『No.09』とお呼びください。」
と反発した。
「はは、悪かったな。『No.09』よ。」
???・????は少し笑って言った。
「さて…本題に入ろう。」
「最近、『表世』に繋がる森で魔獣が激減する異変が起きているらしい。」
???・????の顔が険しくなる。
「あそこは唯一繋がる場所だ。問題が起きれば、
『表世』の侵攻に支障をきたす。」
「そこで我が軍の重鎮であるお前に、1つ命を下す。」
「はっ。なんなりとお申し付けください。」
メイド服の少女は1歩前へ出た。
「私たちの世界から『表世』へ行き、門周辺の調査、可能であれば問題解決まで完了してこい。」
「期限は問わん。が…あまり遅いと痛手だ。」
「よろしく頼んだぞ。『No.09』」
「了解致しました。速やかに解決してまいります。」
「では。」
メイド服の少女が部屋を出ようと扉に手をかけた時。
「待て。伝え忘れた事がある。」
???・????が呼び止めた。
「なんでしょうか。」
メイド服の少女は振り返った。
「その問題、どうやら数人の人間が起こしているようなんだが…」
1拍おいて???・????が言う。
「情報によると、その中に、??シリーズの『失敗作』がいるらしい。」
その言葉にさっきまで表情ひとつ変わらなかった
メイド服の少女の顔は、一気に険しくなった。
「…その情報は確かですか…?」
確認の為に聞いているが、1呼吸の度に空気が揺れる。
「あぁ。他の『失敗作』の『No.7』に門を潜らせたが、反応があったらしい。『表世』にいると言う事は1度破損して復旧したようだ。」
「何か変なものが関わっている可能性もある。十分警戒して任務を進めてくれ。」
「…かしこまりました。迅速に解決いたします。」
その言葉のあと、メイド服の少女は一瞬で姿を消した。
「…ふぅ。これが悪手にならなければ良いが…」
???・????は眉間を摘んで呟いた。




