またまた進展
「ふぅ…危なかったね…」
カシアは気が抜けたように座り込んだ。
「結局、この少女?…ロボット?はなんなのでしょうか…」
ユイカがロボットの周りをウロウロしている。
見れば見る程少女であるが、動く気配も無い。
「まぁ、直してみればわかるでしょ。」
カシアが起き上がりロボットへ近づく。
「直すって…どうやって直すんですか?」
ユイカが問う。それもそうだ。どうやって直すかなんて見当もつかないし、直した所でどうするのか分からなかった。
「まぁ見てなって。」
するとカシアはロボットに触れ、
「『リペアリング』」
と詠唱した。どんどん直っていき、10秒もしたら元通りに直っていた。すると、ロボットの少女は動き出した。
「…………【再起動を確認】…何故?」
カシアに向かって質問してきた。自分で動けるタイプのロボットだったのか。と驚いていながら、答える。
「君には情報を聞きたいしね。あと、単純に面白そうだったから。」
ニッコリして言う。嘘偽りの無い笑顔で。
「…大丈夫なんですか?直したらまた攻撃して来るとかありませんか?」
ユイカがロボットを見ながらカシアに問う。
「まぁコアの位置は分かったしどうにかなるでしょ」
楽観的な姿勢でいるカシアに不安を持ちつつ、ユイカは納得した。
すると少女が口を開いた。
「…わかりました。私の持っている情報でしたら、お伝えします。」
カシアは内心ガッツポーズをし、質問をする。
「じゃぁ一つ目…どこで作られたの?」
これが最大の疑問だ。こんな高度なロボットは中々作れない。どこの国でも成功例を聞いたことがない。
「私は陰世界で作られました。」
陰世界。魔獣や魔族等が暮らしている、この世界とは別の次元の世界。こちらの世界から行く手段は無いが、向こうの世界から来る手段はあるようで、魔獣がこちらの世界に来たり、魔人が来たりする。
そんな世界で作られたと言うロボットに、些か信憑性が持てなかったカシアは、重ねて質問する。
「もし仮に陰世界で作られたとして、製作者は?」
「…お答えしかねます。私は『失敗作』なので、詳しい事は知りません。強いて言うなら、『成功作』は高い地位にいる事です。失敗作と言われて直ぐに人間界の蛮族に売られました。」
…失敗作。その言葉が、カシアの心に反響する。
「カシアさん、このロボットをどうするんですか?さっきから陰世界とか何とか言ってますし、ここで処分しますか?」
カシアは考える。ここで壊しても問題ないだろう。敵なのだ。情けはいらない。だが、失敗作が、どうしても心に引っかかる。
「………あぁもう!こうなったらやけくそだ!」
頭を抱えて叫び、
「君!私たちと一緒に来なさい!」
と言い放った。
「「…はい?」」
ユイカとロボットは固まっていた。石のように。
さっきまで殺しに来ていた奴と行動する?
自分の事を壊そうとした奴と行動する?
意味が分からない。
「カシアさん!どういうことですか!」
「私も同意しかねます。ここで壊した方が得策です。」
2人は反発する。お互い、メリットが少ない気がしたからだ。カシアは言う。
「まずユイカ!すぐ暴れるだの壊すだの言わない!私達の言う事聞いてくれてるんだからいいでしょ!陰世界への道もこの子なら知ってるし!」
「そしてロボットちゃん!自分は失敗作だの何だの言ってるけど!失敗作って言われて成功例をボコしたいとか無かったの!?自我があるんだからそれだけでいいでしょ!」
「以上!私は考えを変えない!変えるならかかってきなさい!」
そう言うとカシアは『グラディオス』で作った刀を手に取り、空中には10本程剣を展開した。
「…わかりました。異論は無いのでその魔法しまってください。」
諦めたユイカは、カシアを宥めながら了承する。
「分かればよろしい。異論は無いね?ロボットちゃん。」
少女に視線を向ける。
「了承。ついて行きます。」
勝てないと学んだのか、あっさり承諾した。
「よし、じゃあ決まりね。ロボットちゃんもっと人間らしくして。あと名前。」
カシアに言われ、ロボットは少しの間静止し、動き出した。
「…あ、あー、分かったよ。お姉ちゃん。」
「おっ、お姉ちゃん!?」
ユイカが一番驚いていた。何年も一緒に暮らしているユイカでさえ敬語にさん呼びなのに、このポンコツロボ、敬語無しにお姉ちゃん呼びしている。
「か、カシアさん!やっぱり壊しましょう!このロボットは危険です!」
面白いくらいヤキモチを焼いているユイカに、カシアは
「もー、いいじゃん。妹みたいで。」
い、いも、うと…
ユイカは膝から崩れ落ちた。
何年もの絆が、ぽっと出の妹キャラのやつに取られた。悲しい。
「そうだ、名前は?」
「名前…うーん…あ!ユアにする!」
結構直ぐに決まったので、理由を聞いてみる。
「なんでユアなの?」
「ユイカのユと、カシアのアを取ったの!」
キューーーン………
2人して、心を撃ち抜かれた。このロボット…あざとい子。ユイカも、さっきの憂鬱は晴れていた。
帰ったらキルトに褒めてもらおう。そう思って帰路に着いた。




