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禁忌魔法使いの世渡り旅  作者: 青薔薇
進展
16/22

またまた進展

「ふぅ…危なかったね…」


カシアは気が抜けたように座り込んだ。


「結局、この少女?…ロボット?はなんなのでしょうか…」


ユイカがロボットの周りをウロウロしている。

見れば見る程少女であるが、動く気配も無い。


「まぁ、直してみればわかるでしょ。」


カシアが起き上がりロボットへ近づく。


「直すって…どうやって直すんですか?」


ユイカが問う。それもそうだ。どうやって直すかなんて見当もつかないし、直した所でどうするのか分からなかった。


「まぁ見てなって。」


するとカシアはロボットに触れ、


「『リペアリング』」


と詠唱した。どんどん直っていき、10秒もしたら元通りに直っていた。すると、ロボットの少女は動き出した。


「…………【再起動を確認】…何故?」


カシアに向かって質問してきた。自分で動けるタイプのロボットだったのか。と驚いていながら、答える。


「君には情報を聞きたいしね。あと、単純に面白そうだったから。」


ニッコリして言う。嘘偽りの無い笑顔で。


「…大丈夫なんですか?直したらまた攻撃して来るとかありませんか?」


ユイカがロボットを見ながらカシアに問う。


「まぁコアの位置は分かったしどうにかなるでしょ」


楽観的な姿勢でいるカシアに不安を持ちつつ、ユイカは納得した。

すると少女が口を開いた。


「…わかりました。私の持っている情報でしたら、お伝えします。」


カシアは内心ガッツポーズをし、質問をする。


「じゃぁ一つ目…どこで作られたの?」


これが最大の疑問だ。こんな高度なロボットは中々作れない。どこの国でも成功例を聞いたことがない。


「私は陰世界で作られました。」


陰世界。魔獣や魔族等が暮らしている、この世界とは別の次元の世界。こちらの世界から行く手段は無いが、向こうの世界から来る手段はあるようで、魔獣がこちらの世界に来たり、魔人が来たりする。

そんな世界で作られたと言うロボットに、些か信憑性が持てなかったカシアは、重ねて質問する。


「もし仮に陰世界で作られたとして、製作者は?」


「…お答えしかねます。私は『失敗作』なので、詳しい事は知りません。強いて言うなら、『成功作』は高い地位にいる事です。失敗作と言われて直ぐに人間界の蛮族に売られました。」


…失敗作。その言葉が、カシアの心に反響する。


「カシアさん、このロボットをどうするんですか?さっきから陰世界とか何とか言ってますし、ここで処分しますか?」


カシアは考える。ここで壊しても問題ないだろう。敵なのだ。情けはいらない。だが、失敗作が、どうしても心に引っかかる。


「………あぁもう!こうなったらやけくそだ!」


頭を抱えて叫び、


「君!私たちと一緒に来なさい!」


と言い放った。


「「…はい?」」


ユイカとロボットは固まっていた。石のように。

さっきまで殺しに来ていた奴と行動する?

自分の事を壊そうとした奴と行動する?

意味が分からない。


「カシアさん!どういうことですか!」


「私も同意しかねます。ここで壊した方が得策です。」


2人は反発する。お互い、メリットが少ない気がしたからだ。カシアは言う。


「まずユイカ!すぐ暴れるだの壊すだの言わない!私達の言う事聞いてくれてるんだからいいでしょ!陰世界への道もこの子なら知ってるし!」

「そしてロボットちゃん!自分は失敗作だの何だの言ってるけど!失敗作って言われて成功例をボコしたいとか無かったの!?自我があるんだからそれだけでいいでしょ!」


「以上!私は考えを変えない!変えるならかかってきなさい!」


そう言うとカシアは『グラディオス』で作った刀を手に取り、空中には10本程剣を展開した。


「…わかりました。異論は無いのでその魔法しまってください。」


諦めたユイカは、カシアを宥めながら了承する。


「分かればよろしい。異論は無いね?ロボットちゃん。」


少女に視線を向ける。


「了承。ついて行きます。」


勝てないと学んだのか、あっさり承諾した。


「よし、じゃあ決まりね。ロボットちゃんもっと人間らしくして。あと名前。」


カシアに言われ、ロボットは少しの間静止し、動き出した。


「…あ、あー、分かったよ。お姉ちゃん。」


「おっ、お姉ちゃん!?」


ユイカが一番驚いていた。何年も一緒に暮らしているユイカでさえ敬語にさん呼びなのに、このポンコツロボ、敬語無しにお姉ちゃん呼びしている。


「か、カシアさん!やっぱり壊しましょう!このロボットは危険です!」


面白いくらいヤキモチを焼いているユイカに、カシアは


「もー、いいじゃん。妹みたいで。」


い、いも、うと…


ユイカは膝から崩れ落ちた。

何年もの絆が、ぽっと出の妹キャラのやつに取られた。悲しい。


「そうだ、名前は?」


「名前…うーん…あ!ユアにする!」


結構直ぐに決まったので、理由を聞いてみる。


「なんでユアなの?」


「ユイカのユと、カシアのアを取ったの!」


キューーーン………


2人して、心を撃ち抜かれた。このロボット…あざとい子。ユイカも、さっきの憂鬱は晴れていた。


帰ったらキルトに褒めてもらおう。そう思って帰路に着いた。

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