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禁忌魔法使いの世渡り旅  作者: 青薔薇
進展
11/22

依頼

先に動いたのは、ユイカだった。

展開していた『ライトニング』を男に向かって発射した。音速を超えているとは言え、男はそれを軽く避けた。


「そんなもん、当たるわけねェよな!?」


男が叫びながら近付いてくる。


「そんな事、分かってますよ。」


すると、ユイカは『ファイアボール』と『ロックシュート』をユイカの前に無数に展開し、射出させた。

逃げ場が無い程の密度でそれぞれが飛んでいく。が、

男も相当慣れているようで、弾きながら体に当たらないようギリギリを攻めて近付いてくる。


「ひャァ!」


男が手に持った短剣をユイカに向かって振りかざす。

あと少しで当たりそうだ、という所で、ユイカは


「『ロックスピア』」


と詠唱し、地面から先が鋭くなった土を男に向かって刺そうとした。


「ちィっ」


男は避けるしかなく、体を捻り距離をとった。


「なかナかやるじャないか。壊すのが勿体ない位にはな。」


「お褒めに授かり光栄です。」


そう言うと間髪入れずに『ライトニング』を男に向かって射出しまくる。


「そんなばかスか打って、魔力は大丈夫ナのかァ?」


男が煽ってきた。すると、ユイカは


「…っっつ」


と、一瞬苦しそうにする。

男はその隙を見逃さず、さっきよりも速く突っ込んできた。


「貰ったァ!」


基本魔力切れになった人間は動けない。

魔力を切らしてしまえば、それこそ命取りになる。


男は首に向って短剣を振った。

もう少しで首に当たる。首を落とせる。

だが、当たる直前。「『ウォーターブレード』」

と聞こえた。その時には、自分の腕が無かった。


「…ァ?」


何が起きたか分からず、切られた腕を見て硬直していた。


「『ロックスピア』」


そう聞こえ、自分の腹には大きな穴が空いていた。


「ふぅ。」


ユイカは一息ついた。そしてカシアの方を向いた。

その瞬間だった。後ろでカキィィィン…と

音が鳴った。後ろを見ると、カシアがいた。

カシアはこの状況を察し、『クロノシリア』を使っていた。


「ユイカ。戦いは最後まで油断禁物。」


そう言われカシアの足元を見ると、先程まで戦っていた男の短剣が転がっていた。

恐らく、目を離した時に投げられたのだろう。

カシアがいなかったら、死んでいた。


「くソっ…悪あガきもだめか…」


血を吐き倒れながら、男はこちらを見ている。


「残念。私がいなかったら殺せてたかもね。」

「ユイカ。あの魔力切れの所の演技は上手かった。

魔法も上手く展開できてたし、駆け引きも出来てた。最後の所を引いても90点。」


そう言い、男に近寄る。


「カシアさん?どうしたのですか?」


謎な行動に疑問せざるを得ないユイカは、困惑していた。


「いやぁ、こいつ、多分色んな女性を捕まえては遊んで壊してたんだよね。気分最悪だから、少し仕返しをしようと思いまして。」


ニヤニヤしている。あの時のカシアさんは怖い。


「な、な二をする気だ…?」


男は恐る恐る聞いた。


「なにって…お前のき○玉ぶっ潰してやるよ」


ユイカの悪い予感が当たった。あの目は完全に逝っている。あれじゃあの男と一緒だ。男はもう諦めたかのように、言った。


「はっ…最後にシちゃ、悪くねぇカもな。なんせ、ロリに俺のき…」


「ふんっっ!」


言い切る前に、思いっきり蹴った。身体強化マシマシで。男のいい嗚咽が響く。


「生まれ変わったら、悪い事すんなよ。」


死にかけの男に言った。


「ハっ…そリゃ…保証でキねぇな…」


そう言い、静かになった。


場に残ったのは、男の死体、短剣。

あの激闘の跡は、証拠隠滅をしておいた。

男が身につけていた金になりそうなものを追い剥ぎし、死体は骨まで燃やした。責めてもの弔いだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


とまぁ、こんなことがあった事を思い出した。


「多分、その3人の中の1人で間違い無いね。」


キルトが確信したように言った。


「あの男にはウチの人達もやられていてね。このギルドを代表して礼を言う。ありがとう。本当に。」


深々と頭を下げてくるキルトに対し、


「頭を上げてください!そんな事しなくても言葉だけで気持ちは伝わっています!」


焦って頭を上げさせるユイカ。

その言葉に安堵したのか、


「ふっ…君は優しいんだね。」


とキルトはユイカに言った。


「ゴホン…で、その本題と言うのは?」


カシアが2人の空気に割って入った。


「あぁ、そうだったね。…12歳の2人に言うのも少し酷と言うか、自分達が不甲斐ないと言うか…」


キルトが言葉を詰まらせる。

これでだいたい分かった。カシアが口を開く。


「少なくともこのギルドの人達よりも強い私達に、

その賊の討伐を依頼する。ということですか?」


キルトの顔が曇る。


「あぁ…そういう事だ。本当に不甲斐ないが…

この状況では、これが最善だと判断した。」


確かに正しい判断だ。賊の集団のトップ4の男を傷1つ追うことなく倒した2人だ。私でも頼むだろう。


「もちろん、成功すれば報酬は君達の望む物を出来る限り揃えよう。それに、断ってくれても構わない。」


ユイカを見ると、ユイカはもう決断できているようだった。なのでカシアは思っている事を言う。


「その話、受けますよ。ここまで来たら、最後まで助けようと思います。」


キルトは嬉しそうな反面、心配そうに見てきた。


「大丈夫ですよ。これでも私達、冒険者を目指すだけの実力はあるので。」


そう言い残し、部屋を出て準備に取り掛かるのだった。

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