(98)でも、やらない
「ああ、君、今は非常事態宣言が出てるから、面会なんて出来ないぞ?」
受付にも人がいなくて
やっと見つけた看守のような人が
僕の質問に対してそう答える。
「いや、どうしても・・・」
「みんなそう言ってるけど、断って帰ってきてもらってるんだ」
「どうしてもなんです!」
僕は大人に強めに訴えるが
相手は冷徹だ。
「これは規則だ。君だけ特別じゃない」
「阿久津首相!銃撃事件の・・・犯人の子供です」
僕は素性を明かす。
その言葉に、相手は少しだけ
顔色を変えた。
しかし、同じ言葉を繰り返される。
「君だけ特別とはいかない」
「どうしてだよ。犯罪者の子供で僕だけは世間に特別扱いされてきたんだ。こんな時ぐらい、特別扱いしてくれなきゃ、おかしいじゃないか!」
「ダメだ」
「なんでだよ!」
僕は涙が出てきた。
「地球が続く事を願うんだな。非常事態宣言が解除されれば、おそらく面会はできる」
「終わったらどうするんだよ!」
「その時はみんな終わりだ!ははは!!」
男は笑みを浮かべながら、僕の腹に蹴りを入れた。
「世の中よぉ、ガキの相手してる暇は無いんだよ」
悔しい。
ここにきて。
一歩手前で。
僕は看守に指で作った銃を向けた。
「何の真似だ?」
「この銃を放てば、お前は粉々になって死ぬんだ」
「何言ってんだガキ」
撃てば、殺せる。
「でも、やらない」
「さっさと帰れ」
「でも、癪だから」
僕は銃を撃つ。
廊下にあったパイプ椅子が
粉々になって崩れた。
その景色に理解が追いつかない様子の看守。
「嘘じゃ無い。撃てるんだ。でも、撃たない。看守さんの言うとおりだ。地球が続いたら、会いに行く」
僕は踵を返す。
僕が親の罪を被るわけじゃ無い。
でも、この地球はなんとかしたい。
だから僕は
ここで破壊行為をして、親に会うなんてことはしない。
そうだ。
良い破壊をして
少しでも人の役に立たなくちゃ。
奪われていた人生のはずだけど
僕は小宮や風馬、小雨さんの
命を奪ったんだ。
償わなくちゃならかいんぁ。
僕は、僕の罪を。




