(96)鉄板
「はぇ。そうかい。東京の友達を探しに」
古い民家の和室に
僕は座っていた。
ばあちゃんのご厚意で
僕は朝ごはんをご馳走になっていた。
どうやらばあちゃんは一人暮らしのようだった。
僕は友達を探しに東京へ向かっているという
あながち嘘ではない話をばあちゃんにした。
3月14日。
連日、報道番組ばかり流れている。
ばあちゃん家の古いテレビが
ニュースを流していた。
緊張感のないヘルメットを被った人が
僕たちに国の動きを伝えている。
ー〝政府は関係閣僚と方策を決定し、これを国の意見としてまとめ各国との協議の上で・・・〟ー
こんな非常時でも
普通通りのスピード感で
物事を進めている国に笑いが込み上げてきた。
「宇宙人なんているんだかねぇ?最近は分からないわ」
ばあちゃんはテレビに釘付けだ。
「宇宙人は居ると思う」
「はぁ〜。若いのは柔軟だこと」
そんな会話をして
味噌汁を飲み終えると
僕は疲れが一気に押しよせて
ことん、と眠りについてしまった。
気がつくと
夕方になっていて
布団が掛けられていた。
「起きたかい?」
「だっ!寝たました!すみません!」
「もっと寝てていいんだよ?」
「いや・・・行かなくちゃ」
「そうかい」
身体の節々が筋肉痛で痛む。
僕は立ち上がり
ばあちゃんに礼を言おうとした時。
テレビが騒がしくなる。
ー〝こちらスタジオです!〟ー
ー〝宇宙人を名乗る者が今、スタジオに!生中継です!これは生中継です!〟ー
テレビに映し出される
中継映像。
小雨さんの姿をした
宇宙人が再び現れた。
ー〝緊迫感の無い地球の皆様の為に、我々は力を誇示します〟ー
そう言った瞬間宇宙人は
スタジオの上を指差した。
ー〝国民の皆様。上空をご覧ください〟ー
僕は空を見ようとする。
ばあちゃんの家の窓から。
その異変にはもう気が付いていた。
朝なのに、外が暗い。
ー〝いま、この国を覆うサイズの鉄板を用意しました〟ー
僕は窓を二度見する。
夜じゃない。あれは鉄板?
ー〝我々の要求を飲み込まなければ、その鉄板は落下するでしょう。この国の人間は圧死します。そして、その大きな物体の落下のエネルギーは他国へと波及するでしょう〟ー
ー〝それでは。良い返答をお待ちしております〟ー
テレビの生中継は終わった。
「ありゃりゃ、どうなっちまうんだいこりゃ」
ばあちゃんが驚きながらテレビを見ている。
とはいえのんびりしていた。
「ばあちゃん、俺、行くよ」
「気をつけてね」
「色々終わったら、働いたお金で、恩返ししに行くから!」
そう言って僕は自転車に乗る。
東京へ向けてペダルを漕ぐ。
自転車を漕ぎながら、
鉄板の破壊を試みる。
しかし、僕の力ではびくともしなかった。
鉄板を阻止する方法はふたつ。
ひとつはすんなりと宇宙人の存在を認める事。
もうひとつは椎葉さんの力で
鉄板を破壊する事だ。
その椎葉さんはいない。
よく分からないけど
東京に行けば会える気がした。
僕は自転車を漕ぐ。
3月15日。
【scene08:おわり】




