(93)帰省
椎葉さんと全国津々浦々
なんだろう、旅行気分で周る。
椎葉さんの力は瞬間移動だけど
漫画みたいに思ったところに瞬間移動は
出来なかった。
その力の詳細はよく分からないが
力を出しすぎると身体が壊れてしまうらしいのだ。
自由に移動できる新幹線。
そんなスピード感が正しい。
休憩を挟みながら
僕は椎原さんと全国に点在する
透明教の施設を巡り
怪しいものが無いかを探し回っていた。
「ここは久しぶりだの」
辿り着いたのは
僕たちの住んでいた街。
あの日、僕が九段下単元と
直接対決を試みた場所だ。
捜索をしても、
特に目ぼしいものは見つからなかった。
こんなビルみたいな建物の中に
ミサイルなんかが隠れているわけもない。
「何もなかったね」
「なぁ、今日は何月何日だの?」
「3月12日」
「まだ、よゆーあるし、少し地元を満喫したらどうかの?」
「えっ?」
突然の提案に戸惑う僕。
「会いたい人ぐらい、ゆーにだっているだろうの?」
「ま、まぁ・・・」
僕は即座に
僕の世話をしてくれた眞鍋さんと
そしてもうひとりの顔が浮かんだ。
「ちょっとさ、家寄ってっていいかな?」
「もちろんなのさ」
都市部から離れた地方都市も
物々しい雰囲気が漂っている。
というか日本全国そんな感じだ。
都市部の人が疎開してきたり
治安が悪くなり過ぎて、犯罪が起きるから
あまり人の姿は見かけられない。
少数の人たちは国や地球が続く事を
当たり前のように思って
日常生活を送っていた。
何にせよ、静かだった。
僕はたった数ヶ月ぶりの家なのに
凄く懐かしく感じた。
インターホンは壊れているのか、意図的に通電していないのか
反応はしないから、僕は門を登って突破して
玄関をノックする。
反応はない。
諦めようかな、って思った時に
扉は開かれた。
勢いよく。
眞鍋さんは大粒の涙をただ流し
僕の事を見ている。
ただいま。
そう言ってはいけない。
僕はそう思った。
「無事だよ。また、顔出すね」
僕は涙を堪えて、そのまま
家の敷地を出ようとする。
「・・・塹江さんの支援が・・・打ち切られたとしても、いつでも帰ってきてくださいね」
僕は振り向く事なく
ただ手を挙げた。
キザなやつだな、なんて僕は思う。
でも、振り向きたくはなかった。
泣いてる事がバレちゃうからだ。




