(84)加速する物語
僕の新しい仕事場。
縦長の狭い雑居ビルのエレベーターホールで
待機し、来客の会員証を確認して
カーテンの向こうの、僕も知らない所へ
ただ倒すだけの簡単な仕事。
客の多くは政治家で
店に入った人は
おそらく別の場所から
この店を出ている。
正直、怪しすぎる仕事だけれど
僕はお金がもらえるから
なんの疑問もなく、それを
続けてきた。
そして今、目の前に現れたのは
アホの小宮だった。
「小宮?」
「どうしてお前がここに?」
小宮は僕がいる事に驚いている。
「いや、ここ職場だからね」
「は?」
「ここで働いてるよ」
「ちょ、待てよ。お前、ここがどんな場所か知ってるのか?」
「うーん、よく分からない。けど、会員証が無い人が入れない場所ってのは知ってる」
「おいおいおい・・・どうして早くそれを言ってくれねーんだよ」
小宮は残念そうな顔をしていた。
というかコイツ、会員証、持ってるのか?
「小宮は、何故ここに?」
「調査だよ」
「調査?」
「そもそもなぁ、お前、ここがどんな場所か知ってるのか?」
その時。
僕たちの知らないところで
世の中はその話題で持ちきりだった。
「いや、言ったろ、大して知らないよ、ここの事は」
「ここはなぁ、斡旋居酒屋だ」
「は?ナニソレ?」
ー〝都内連続爆発事件〟ー
その事件の発端となる、最初の爆発が
起きていた。
「ここにきた客と芸能人を会わせるんだよ」
「は?芸能人と?」
「お前に見せたろ!あの雑誌の記事!」
「え?つまり?」
「そのカーテンの向こうには、芸能人が山ほどいるんだよ!」
「マジ!?」
「感心してる場合じゃない!そこに小雨さんがいるかもしれない」
「いたらどうしろって?」
実を言えば
この爆発事件は
単なる序章に過ぎない。
そう、速やかに準備は行われていたのだ。
この国を、いや、世界を、そして
地球を乗っとるための準備は。
「ここに集まる客は財政界のお偉い達だ。金も権力もある。そいつらを操る事が出来たら、どうなる?」
「どうなるって・・・」
「今度こそ、乗っ取るつもりなんだよ!三依小雨・・・そして九段下単元は。この国から・・・」
珍しく慌てている小宮。
「とりあえず、どうすりゃいい?」
僕は聞いてみる。
「カーテンの向こう側に!」
「えっ、いや、それはまずいよ!」
「地球、のっとられるぞ!」
えっ、行っちゃっていいのか?
雇い主のイカつい兄貴に禁止されてるのに。
僕は迷ってる暇などなく
冷静にエレベーターを指の銃で破壊して
小宮とふたりで
カーテンのその先へ向かった。
【scene07:おわり】




