(8)人間の流行
椎葉さんが宇宙人について
説明した事を思い出す。
宇宙人というのは
僕ら地球人と同じ姿に擬態して
地球の乗っ取りを計画をしているらしい。
宇宙人が僕たちの地球を乗っ取る方法は
いくつかあるらしいけど
多くの宇宙人は乗っ取りの為に
僕たち地球人を操ろうとするらしいのだ。
「宇宙人は流行を研究しているのさ」
僕の想像していた宇宙人の侵略は
円盤型の飛行物体でやってきて
街をめちゃくちゃにするパターンだ。
そのイメージとは違うらしい。
どういう行動で操れるのか?
洗脳できるのか?
を宇宙人は常々調べ行動に移すらしい。
「人間の流行りの大半は、実は宇宙人が起源だったりするのよ」
「え?そうなの?」
僕と椎葉さんは今、パパ活宇宙人を尾行している。
サラリーマンと若い女。
肩を並べて歩く姿を追いかけていた。
「流行を作り出して人間をどれだけ動かせるかを試しているの」
「へ、へぇ・・・」
「人間はさ、〝みんなやってるからやる〟が好きでしょ?」
「ま、まぁ・・・」
誰かがやらないと不安になる事ってある。
誰かがそれをするから安心だし、真似してみる。
その連鎖が流行りというものなのかもしれない。
流行だけじゃない。
誰かが嘘を教えて、その人の真実になった事が
その人の思想を変えてしまうことがある。
「この街で流行っているパパ活は宇宙人の仕業」
「ば、パパ活が宇宙人発信の流行り・・・」
「そう」
宇宙人がなぜ、パパ活をしているのかはわからないけど
例えば、〝人殺しブーム〟なんて巻き起こってしまえば・・・
確かに地球は大変なことになる。
「宇宙人はUFOに乗って僕達を支配するのかと思ってたよ」
「それは間違い。宇宙人には戦闘力なんてないのさ」
「へぇ〜」
「宇宙人のイメージも宇宙人が自分達を強く見せる為に作ったものなのさ」
なんつーか、意外と地味だな。
宇宙人って・・・
「それにしても、パパ活だなんて」
「〝色恋沙汰〟ってのは洗脳に使い易いのさ」
「なるほど」
洗脳、か。
恋は盲目って聞くもんなぁ。
「あっ、どうする?」と椎葉さん。
追いかけていたふたりが
少し高そうな寿司屋に入っていく。
肉寿司という名前だけは美味しそうなメニューを
全面的に売り出していた。
「お金ならいくらでもあるよ」
僕は財布がポケットに入っていることを確認する。
財布の中身は確認しなくたっていい。
「じゃ、入ろうか?」
「でもなぁ、制服だよ僕」
「何かあったらさ、破壊すればいいじゃん」
椎葉さんは笑顔でそんな事を言う。
そうだ。この人は宇宙人よりも上の存在。
破壊神なんだ。
その理論はよく分からないけれど
別に違法じゃない。店に入る。
僕と椎葉さんはカウンターに並んで座る。
カウンターはL字になっていた。
高級な寿司屋とは程遠い空気感だ。
僕達のいる位置から
サラリーマンと宇宙人が見える。
僕らは美味しくない寿司を食べながら
その姿を観察していた。
パパ活宇宙人はスマホをいじっている。
サラリーマンが何か必死に
話題を振っているけど、反応は浅い。
どうやら男は相手にされていないようだ。
「なんだか、見てて辛い」
思わず僕は小声でそう言ってしまう。
「みーも思った。あれで金貰うんでしょ?」
「うん。食事して、金貰うっぽい」
本当はそれより先の事をする人もいるらしい。
けど僕にはどうでも良いし
椎葉さんに言う必要も無かった。
「さて、破壊しちゃうか」
「はっ!?」
椎葉さんがそんな事を言い出すので
僕は飲みかけのお茶を吹き出す。
ここで!?