(75)リブート
「よぉ、目の下のクマすげーぞ」
東京での暮らしに慣れて
僕は夜型の人間になっていた。
1日8千円の仕事。30日出れば24万。
5万を支払えばあとは自分のものだ。
まぁ、働いてまだ1週間しか経ってないのだけれど。
眩しさと煌めきが目に痛い。
昼の喫茶店でアホ面と向き合う。
「夜型の人間になったからな」
「ふーん。とりあえず良かったな」
「たまたま、だよ」
「で、本題だ」
そう言って小宮はタブレットを取り出した。
画面には地図アプリが表示されて
所定の位置を示している。
「ここ?」
「ああ。〝エーテルフーズ〟という会社の倉庫にいる」
そういって小宮は写真を出した。
「椎葉さん・・・」
映し出された写真には
大きな板状の氷。
その中に埋め込まれたような
椎葉さんの姿。
まるで氷の水族館みたいな
氷漬けの魚のような。
「写真が撮れるぐらいだから、侵入は簡単だよ」
「なるほど」
「お前と俺で侵入して、氷を壊せばミッションコンプリートってこと」
なんだか、簡単そうだ。
「いつやる?」
「うーん、簡単に侵入出来るなら、別に今日でもいいよ」
というか僕は、あまりにも可哀想な
破壊神・椎葉さんの姿を見て
助けたくなったし・・・
それに・・・
理由は分からないけど
椎葉さんに早く会いたい。
そう思った。
「じゃ、行くか?」
「お、おう」
「ありがとな」
地下鉄に乗る。
「小宮。お前って、宇宙人の癖に悪い事しないよな」
「ああん?俺だってワルよ」
「ワルいのか?お前?」
「俺だって、お前ら地球人を操ろうとしたことはあったよ」
「え?マジ?」
地下鉄を乗り換える。
「うん。でも出来なかった」
「え、それだけの理由?」
「宇宙人全てが、地球を取り返そうなんて思っていない」
「そうなの?」
「地球はいい場所だ」
「いい場所・・・」
僕には居心地が悪い。
「でも、椎葉さんは言ってたんだよな。地球はそのうち滅びるって」
「あっ・・・僕もそれを聞いた」
「滅びんのかなー?地球?」
アホの小宮とバスを待つ。
「全然、分からない」
「だよなぁ」
「隕石とか落ちてきたりするの?」
「僕に聞かないでよ」
「まぁ、アレだ。脅威は近づいている」
小宮は前もそれを言ってた。
「なぁ、小宮、それって何?」
「脅威?」
「ああ」
「小雨・・・いや、美雨さんだよ」
やっぱりか・・・。
そんな事はさておき
僕達はエーテルフーズの倉庫に到着した。
「こっから・・・」
「こういけば・・・」
そう言って小宮に連れられて
行き着いた先には
写真で見た姿の椎葉さんがいた。
「椎葉さん」
僕は問いかける。
気泡も何もない綺麗な香りの板には
中学の時の制服姿のままの
椎葉さんがいた。
「早く」
ここは巨大な冷蔵庫倉庫。
僕以上に小宮が身体を震わせていた。
僕はその氷に向けて
指で作った銃を放った。
氷の板はパラパラと
綺麗な粉のようになって
崩れた。
そこから椎葉さんから現れる。
呆気なく現れた。
あの日、公園で出会ったときのように。
冬眠から目覚めるように
目をゆっくりと開いた。
「椎葉さん・・・」
「ゆー、明るくなった?」
「顔?」
「髪の色」
お前はそっちかよ!
「とりあえず、ここから出るか」
小宮の提案に僕たちは倉庫を出た。




