(73)個室居酒屋
逃げ出すように東京へ来た。
僕は椎葉さんを助ける前に
東京での暮らしの基盤を整えていた。
塹江さんと縁を切りたいと思ってはいるけど
結局金がなければ
やっていけないのは事実だ。
だからまず僕は仕事を探さなければならない。
「ああん?働きてぇ?」
清水さんの家に居候して
3日後。パチンコで大勝ちして
気分がよさそうな時に
僕は聞いてみる。
「はい」
「金はいくらでもあんだろ?」
「あれは自分の金じゃないですし、いつ打ち切られるか分からないんです」
「はぁ・・・ってもなぁ」
「なんでもやりますよ!」
僕は忍耐強い方だとは思う。
「うーん、まともな仕事はねーぞ」
「働けるならなんでも!」
「うーん・・・」
少し考えた後、清水さんは
手のひらを差し出した。
「紹介料、3万」
「げっ、カネですか?」
「大人の世界は甘くねーんだぜ」
「はいはい。分かりましたよ」
その場所を紹介されたのは
2日後。
指定された場所に行け、とだけ言われて
僕はその場所に到着する。
清水さんの働く歓楽街とはまた別の街にある
煌びやかで大人な街。
その、なんて事のない狭いビルの一室。
「よぉ、まぁ、座れやガキ」
首筋からチラ見出来るタトゥー。
明らかに怖い人。
僕はちょっとビビっていた。
小さな椅子に座る。
「働きたいって?」
「はい」
「ここがどんな場所か分かるか?」
僕は周りを見渡す。
ビルのエレベーターの6階に到着して
すぐに扉があって、その扉を開くとレジカウンターがある。
うーん。
行った事が無いから分からないけど・・・
「もしかして、エロい店?」
「ダハハハハ!!さすがガキだな!」
男の笑い方は、何故か安心する。
コワモテの顔とのギャップだから
なのか?
「違うんですか?」
「ここは、ただの酒が飲める個室居酒屋だな」
「えっ!?すみません」
「お前、芸能人とか詳しいのか?」
「えっ?いや、そんなに」
「ならいい。適任だ。お前の仕事は、客を招き入れるだけ。客以外が来たら、入店を拒否しろ。そして万が一サツが来るようなら非常ベルを押せ」
「えっ?」
「やれんのか?ガキ?」
「や、やりますよ!」
こうして僕の仕事が始まる。




