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ディストラクション・インベーダー・ラヴコメディ  作者: 大野春
【scene06:それからの僕たち】
72/119

(72)この街で生きる術


「汚ねえ部屋だろ」

「ええ・・・」


仕事終わりの清水さんの部屋に招かれたのは

3時を過ぎていた。

歓楽街から少し離れた場所に

タクシーへ向かった先の

ボロいアパート。

それが清水さんの部屋だった。

香水の匂いがしんどい。


「まぁ、自由に使ってくれていいぜ」


清水さんはそう言ってスーツをかけて

スウェット姿になる。


「あの・・・ありがとうございました」

「ワケありだな、お前」

「まぁ」


「まぁ、深くは聞かない。お前は金を出してくれる限り、ここに住まわせてやんよ」

「ほ、本当ですか!?」

「月5万だ」

「分かりました」

「ルールはある。俺のシャツをクリーニング屋に持って行く事。俺がオンナを連れてきたら、黙って部屋を出る事。いいな?」

「はい」


こんな感じで

予想だにしない形で

僕はとりあえず住処を見つけた。

清水さんはホストをやっているのだと

僕に教えてくれた。


「東京でモテたくてよ、ホストになったんだが、全然売れねーのな」

清水さんはタバコを吸い、飲みかけの瓶に入った酒を

飲み始めた。


「売れてないんですか」

「なんなんだろうな。ホストってルックスじゃなかったわ。トーク力?俺にはねぇよ」

「いや、全然喋れてますよ、清水さん」

「ガキが一丁前に」

そういって清水さんは僕にデコピンをする。

痛くはない。この人は悪そうに見えて、悪いのだけど

多分そこまで悪い人じゃない。


「踏み込めねえんだ、俺は」

「踏み込まない?」

「話をすればするほど、キャストと客の心は近づく。近づけば色恋営業になる。それが俺には出来ない」

「色恋営業・・・」



「恋は盲目だ。周りが見えなくなったオンナ程、怖いものはねえんだよ」



「は、はぁ・・・」


僕にはこの人が凄い大人に見えた。

というか大人なのだけれども。

その日は体育座りで寝た。

翌日には僕が寝るぐらいのスペースが用意されていて

清水さんはパチンコに行くと置き手紙を残して

家を出て行った。


疲れで昼まで寝てしまっていた。

僕は部屋の窓を開ける。

驚くほど、都会だ。


まだ仕事は決まってないけど

僕の新生活が始まる。



【scene06:おわり】

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