(56)リタイア
「ふっ、封印!?」
僕は思わず声を出す。
椎葉さんが下部楽風馬に封印された!?
「そうだ。封印した」
「ふ、封印って」
僕の想像する封印は
箱に入れて、お札みたいなのを貼り付けるやつ。
それが封印だ。
「椎葉しいはとある場所に冷凍保存した」
「冷凍保存!?」
「お前は力を持ってるからな。場所は教えない」
「ちょっと待てよ、全然わかんねえよ!」
「とにかく、だ。馬鹿な真似はよして、帰る事だ。お前は椎葉しいと共謀するなんて辞めろ。三依小雨を狙う事も辞めるんだ。そして、この宗教法人に手を出さなくてもいい。お前はただ、普通の人間に戻れ。普通の生活を送るんだ」
「全然分かんねえ!」
下部楽風馬が魔法のように指を振ると
僕は台車の上に乗っていて、
彼はそれを勢いおく押し込んだ。
僕はそのまま紫陽花の間から出て、
エレベーターホールで転げ落ちた。
瞬間移動した風馬が僕の前に立つ。
「本当なら、お前ごと凍結しても構わなかった。これは神の慈悲じゃない。この前、由依を守ってくれた、兄としての慈悲だ。いいか。お前はもう、普通に生きろ。これ以上、何かを抱える必要は無いし、何かを変える必要はない。普通通り生きろ。頼む。余計な事はするな」
「地球を乗っ取るんだろ!宇宙人って!」
「地球がどうなるかなんて、お前ひとりじゃどうにもならないんだよ。分かったな」
気がつくと僕は1階にいた。
ムカつくほど綺麗に見える透明な板が
僕を出迎える。
作戦は失敗に終わった。
この板を破壊する気にもならない。
たまたまだったんだ。
僕が破壊神の力を手に入れたのは。
よく分からないけど
僕は諦めがついていた。
普通の
後ろ指を差される学生生活に戻ろう。
僕は諦めていた。
ちょっとの退屈に起きた
非日常。
それだけが僕の救いの日々だった。
でも、つまらない日々に
戻りたいと思っていたのも事実だ。
僕は施設を出る。
なんだろう、創造の神に
もうこの辛い状況から、抜け出して良いのだと
そんな許可を貰った気がした。




