(54)破壊する権利
「なんの真似ですか」
九段下単元の顔は変わらない。
身長は高く、体型は中肉中背。
いま僕が着ているこの気持ちの悪い
正装の上に、さらにもう一枚
ある程度の地位を示すような羽織ものを
着ている。
眼鏡をかけたつるつるの肌は
苦労を知らないような
そんな気持ち悪さがあった。
僕はその男を破壊する為に
銃を向けた。
「お前のせいだ」
「ご両親の事ですか?」
「お前が指示したんだろ」
「私は意志を具現化しただけですよ」
困ったな、なんて顔をしている。
その顔が憎たらしい。
「僕の人生はお前に破壊されたんだ」
この宇宙人に父と母は唆されて
大罪を犯した。
そのせいで僕はまとまな学生生活を
送れていない。
そもそも、こんな宗教に父や母が
入信したせいで
僕は毎日孤独に過ごして
カップ麺を啜って生きてきたんだ。
僕が望んだわけじゃないのに
僕は存在しない神や透明な板に
人生を破壊された。
おかしいだろう。
コイツが僕の人生を破壊したのなら
僕はコイツを破壊する権利がある。
「やはり、あっさりと来てくれた理由は、私に怒りを向けに来たという事ですか?」
九段下単元は呆れ顔だ。
「そうだよ」
「それにしては、丸腰ですね」
「本当を言えば、ナイフでも持ってきて、貴方をグサリと刺したかった。自分の力で、貴方を刺したかった」
九段下の用心深さが
僕の犯行を未遂にした。
しかし、僕には椎葉さんから与えられた
力がある。
粉々にしてやる。
コイツの全てを。
「貴方の人生はそれで解決するのですか?」
僕の指の銃の意味が分からない九段下は
まるで恐怖を感じていない。
「しないかもしれない」
「では、人生を逆転させる方法をお伝えしましょうか?」
「この期に及んで何を」
「世論を変えるのです。貴方のご両親がやった事、それを正しいと伝えるのです。それが貴方に課せられた使命なのです」
「変わらないよ」
九段下が言いたいことは
少しだけわかるかもしれない。
でも、もう遅いんだ、
何をしても
一番大切な人の命が奪われている。
その時点で罪だ。
人殺しだ。
戦争で多くの命が奪われてきた。
いろんな殺人事件があった。
でも、殺した事を正当化された事は
無い。
あっちゃならないと思う。
だから僕は、この宇宙人を破壊する事も
良くないとは思う。
でも、結局
これしかない。
破壊するしかない。
破壊以外の方法はない。
まずは僕の人生に
ひとつのけじめをつける。
僕はその銃を九段下に放った。




