(53)邂逅
「こんにちは」
「・・・こんにちは」
「まさか、来てくださるとは」
「意外ですか?」
「ええ」
「じゃあ、なんで呼んだんですか?」
「意外と思いつつ、貴方が来る事を私が望んだからです」
「そうですか」
「・・・ご両親は大変無念でございました」
「無念・・・」
「この国を取り戻す為に我々を背負って行動に移したというのに、どうでしょう。この国の政治は変わりましたか?」
「ごめん。僕には分からない」
「変わっていないのです。一国の長が命を落とし、貴方の両親は罪を背負ったというのに」
「随分と・・・」
「ましてや、世論は政治と宗教の関わりから、我々透明教に対する批判ばかりに注目が集まっています。何一つ、変わらないのです」
「変わらないから、僕を呼び出して、また何か革命を起こそうと、してるんですか?」
「ええ」
「九段下さん。少し教えてください」
「なんでしょう?」
「父や母に阿久津首相を殺す様に命じたのは、九段下さんですか?」
「意志を具現化したのは私でしょう」
「意思?具現化?」
「貴方のご両親は、世の中を変えたい、そういった気持ちに溢れ、正義感に溢れる素晴らしい人でした」
「そうですか」
「素晴らしいが故に、きっと世の中のおかしさに気付き、憤りのない怒りを覚えていたのです」
「はぁ・・・」
「なので、わたしからお伝えしたのです。行動しなくてはならない。この旧態依然とした世界を壊さねばならない、と」
「破壊・・・」
「世の中のシステムを変えようとするには、0から1までの過程全てを変えなければなりません。それにはきっと1世代では時間が足りないのです」
「時間が足りない・・・」
「だから、提案しました。一番上から、1をまずは破壊し、0にするのだと」
「九段下さん。よく分からないけど、暗殺を命じたのは貴方なのですか?」
「それを聞いて、どうしますか?」
「・・・事実を知りたいんです。そして、次に活かしたい。僕が起こす革命に」
「ならばお答えしましょう。自作の銃の作り方も、あの日阿久津首相が公の場に現れる事を教えたのも、私です」
「よく分かりました」
その言葉を聞けてよかった。
やはりこの目の前の胡散臭い男が
父さんと母さんに暗殺を指示した張本人だ。
僕は指で作った銃を
九段下に向けた。
躊躇うことは、無い。




