(45)未来の明度
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
僕の身体は吹き飛んで、尻餅をついて倒れる。
殴られたのだ。
視線を上に戻すと
濡れた男が僕を見ている。
顔を赤くしていた。
後ろにいる由依は逃げられたのだろうか。
「馬鹿にするなよ。風邪ひいちまうじゃねえかよ」
僕に向けて爪先で蹴りを入れる男。
僕は力無くそれを防ぐ。
痛い。
「お前よォ・・・」
とりあえず、目的は達成出来た。
コイツを破壊せずに
由依を逃せた。
そうすれば、僕がやられたって
構わない。
カッコいいじゃないか。
人を守って、やられるなんて。
・・・少しだけ償って、死ねるなら。
「殺してさ、燃やしてやるよ。人間焚き火だよ」
男はポケットからジッポライターを取り出して
カチカチとフタを開けたり閉じたりしている。
ここで僕は終わってしまっても
構わないんだ。
「誰かぁっ!」
遠くで由依が助けを求める声が聞こえる。
それにしても最初に殴られた
左の頬がすごい痛い。
男は僕に馬乗りになって
僕の左頬を平手打ちする。
その分厚い手から放たれる打撃が
僕の頬を刺激する。
「ガキがよ・・・」
声が聞こえる。
自分の声だ。
撃てよ。
撃たなきゃ、死ぬぞ。
死にたいのか?
死んでもいいよ。
由依が助かれば。
本当にそう思ってるのか?
・・・。
人殺しの子どもは
まともな運命なんて歩めないよ。
さっき由依が言ってたろ。
当たり前のこと。
キミはキミだってさ。
腕は押さえつけられてるんだ。
もうコイツにむけて銃は撃てないよ
グーして、パーすれば良いじゃないか。
爆散させてやろうぜ。
じゃなきゃ、お前死ぬぞ。
僕はそのやり方を思い出す。
破壊したい対象を見つめ、意識する。
意識しながら、グーの手をパーにすれば。
死ぬぞ。
やらなきゃ。
僕にはこの先の人生が分からない。
続くかもしれないし。
続いたとしてもまともじゃない。
分かるんだ。
僕の未来は明るくないって事。
でも。
生きたい。
僕はグーの手をパーにする。
意識して。
爆発が起きた。




