(42)好きなものより嫌いなものを
ー〝少年 A〟ー
それがテレビが報じた僕の名前。
実名は無駄な配慮で伏せられた。
でも、調べればすぐ分かることが沢山あったし
インターネットで検索すれば、
それはいくらでも出てきた。
透明教に匿われていた僕は
紆余曲折を経て
慈悲深い事をアピールする為の
嫌味しかない資産家に引き取られた。
居場所を変えて
今の家にいる。
真島さんが世話役をしてくれる
僕の今の家。
転校初日から
僕の存在はバレていた。
「エーくん」
「人殺し」
「やべー奴」
「殺人鬼」
「総理大臣」
「学校くんな」
「ゴミ」
「成金」
「A」
「お前すげーな」
「鬼メンタル」
「アクリル板」
多種多様なやり方で
僕は非難を受けた。
僕は別にどうでも良かった。
そこから毎日、面白くなくなったし
それでも悔しいから義務教育を受けた。
全校集会が開かれた。
僕のいないところで。
そこから、パタリと僕への非難は
収まったように見えた。
そして、嫌なような距離感を
保ってくるようになった。
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「よぉ」
「元気?」
「おはよう」
「おはよう」
テンプレートの会話。
僕もテンプレートで返答する。
誰も近寄らず、離れず。
まるで媚を売るように
ただ僕に接してきた。
「ねぇー、たまにはおはよう以外の会話しようよ」
話しかけてきたのが由依だった。
僕は最初、不意打ちを喰らったように
言葉が出なかった。
「うーん。何を話せばいいか分からない」
「じゃあさ、あれだ!嫌いなヤツの話」
「なんだよそれ」
「好きなものの話より、嫌いなものの方が盛り上がるらしいよ」
「へぇ」
そんな会話だったと思う。
場面は戻る。
僕と由依はデートをしていた。
ランチを食べながら、僕は質問を投げかけてたんだ。
どうして、僕に普通に接してくれるのかって。
「普通に接するって、クラスメートじゃん」
などという当たり前の答えが返ってきた。
僕にはよく分からない。
「いやだからさ、僕の親は」
別に明言めいて発言したわけじゃない。
それはありふれた陳腐な言葉。
それでも僕は嬉しかった。
由依の言葉が繰り返される。
「キミはキミでしょ」




