(41)テロップ
ー〝阿久津首相 心肺停止の状態 何者かの銃撃を受ける〟ー
これがこの時間の第一報。
ー〝阿久津首相 心肺停止の状態 容疑者を確保〟ー
詳細な時間は分からないし
後になって調べる気もない。
でも、僕が家を出る頃には
父と母は捕まっていたと思う。
現行犯逮捕。
僕が透明教の信者に攫われるのも
今思えば必然だった。
信者達も画策していたのだ。
半日ぐらいが経過して
ニュースの速報の内容は
国民の予想通りとなった。
心肺停止の時点で
この手のニュースは
大抵結末が見えている。
ー〝阿久津首相 死去 62歳〟ー
首相が死んだ。
僕は何も知らず、これまた無機質な部屋で
モンスターをゲットして
戦わせていた。
それだけだった。
だから何も知らなかった。
連れて行かれた部屋でただ
過ごしていた。
時が経つにつれて
世間には情報が入ってくる。
嘘の情報が削ぎ落とされていく。
僕の父と母の顔写真と
名前が報道された。
記録が残る世の中で
それは間違いなかった。
来る日も来る日も
僕は軟禁されていた。
学校に行けないことに疑問は持たなかった。
なんとなく、つまらなかったからだ。
ー〝阿久津首相銃撃事件 容疑者は新興宗教の信者か〟ー
ここから、世論は動いていく。
僕にはどうでもいい話だったけれど
僕には分からない世界だった。
宗教と政治とか、どうでも良かった。
後にわかったこと。
首相が透明教と繋がりがあったということ。
その繋がりが歪になったいったということ。
曲がった情報が、僕の父や母を英雄しした。
国を変える為に、人を殺したのだと。
これは現代の革命だ!などと。
それは全く違うと、僕は思った。
あくまで僕が思っただけで
父や母の考えは知らない。
でも。
ふたりは殺すという選択肢しか
無かったのだと思う。
小さな、権力も持たぬ人間は
暴力を振るうしかないのだ。
悲しい現実だった。
会えたら、聞いてみたい。
どうして殺したの?って。
会いたくないけれど
僕は父と母の遺伝子によって
出来たヒトである。
だから、悲しい事に
僕は父と母に会いたかった。
それは今も叶っていない。
次に世間を騒がせたのは
僕自身が軟禁されていたということだ。
身柄の引き渡しは
メディアが堂々とそれを報じた。




