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(40)あの日の出来事


ひた、ひた。

表現するならばそんな音。

この音を僕はよく

思い出す。


ポタポタと蛇口から水が漏れている。

それが台所のシンクにぶつかる音。



建て付けの悪い家だから仕方ないと

母さんは言ってた。



見た目はボロくないけど

そんなアパートで僕は暮らしていた。


リビングの窓際には

透明な板がある。


透明な板は

太陽の光を散乱させ

虹を作っていた。



この世界には

無色透明な物質が存在している。

エーテルとかいう物質。


それを操る事で、魔法だとか

奇跡というものを起こしていたらしい。


そのありがたいエーテルとやらを

凝固させた板。


それが透明な板。


神様が作りし板。

ただの板。

アクリル板。


僕の父や母はそれを大切にしていた。


年々、金を出しては

分厚いものに

買い替えていた。


僕には親の金の事は

分からなかったけれど

うちにゲームやおもちゃが無い理由は

それだったと今は思う。



唯一買い与えられた

安物のゲーム機で僕は

毎日過ごしていた。


友達はいない。


学校から帰れば

水がポタポタと落ち

太陽が反射した部屋で過ごす。



無機質だった。

そこで僕は育った。



日数分のインスタント麺だけ買い与えられて

僕はそれを食べて生きていた。

父や母が帰ってくるのは

稀だった。




・・・だから、あの日も。


僕はゲームをしていた。

小さな画面に夢中だった。


テレビをつけていなかったから

各局が特別報道番組を流している事も

知らなかった。



ただひとりゲームに没頭していると

玄関のチャイムが鳴った。

扉を開くとおじさんが現れた。



それは透明教の信者だった。



「こんにちは。少し時間あるかな?」



おじさんは僕の父や母の名前を出し

知り合いである旨を伝えた。


僕から信用を勝ち取って

僕を車に乗せた。


そしたら僕は気がつけば透明教の信者の住む

マンションに軟禁されていた。



その時僕は気づいていなかった。

世間は大騒ぎになっていたのだ。



当時の総理大臣が

銃殺されていたのだ。



母の手助けを得た

父の自作銃で。



殺されたのだ。



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