(38)甘めのファッション
「どうして兄ちゃんが・・・」
ウキウキ気分の僕の目の前に現れたのは
由依の兄貴。
創造の神。下部楽風馬。
つい先日椎葉さんとやり合った神。
「今日、キミとデートって話したら、兄貴がちょっとだけ用事あるって」
風馬は僕の肩に手をかけ、
由依に聞こえない場所まで移動した。
なんだか悪い人に連れ去られるみたいだ。
「今日は神様としてじゃねえ」
「は?」
「由依の兄としてだ」
「な、なんですか」
「泣かせたら許さねーからな」
「なっ・・・」
そういえば
小雨さんの時もこんな感じで釘を刺されたような。
「お前がどうだとか、俺知らねーけど、少なくとも妹の幸せを願うのが兄貴だ。分かったな」
「は、はぁ・・・」
バシっと背中を叩かれる。
先日のテンションと全く違う。
詐欺みたいなもんだ。
「行ってこい。恋愛は素晴らしいぞ」
なんだよそれ!
応援してんのか?牽制してんのか!?
やりづれぇよ!
僕は兄貴の元を離れて
由依の元へ向かう。
「なんの話してたの?」
「いやっその」
「どーせ、兄貴の事だ。釘でも刺したんでしょ?」
兄貴の事はお見通し、そんな顔をする由依。
「そんな感じ。さっさと行こうぜ」
「過保護なんだよ、兄貴はさ」
参ったもんだぜ、そんな顔をする由依。
そんな表情も含め・・・
さっきから僕は
少しいや・・・
結構思っていたことがある。
今日の由依は
すげー可愛い。
彼女の制服姿と体操着しか見ないから
私服は珍しい。
大体、クラスメートの私服を見ると
ガッカリしちゃうけど
今日の由依は髪型もちょっと違うし
なんだか、雰囲気が甘い。
そこで気が付く。
僕は意外と
由依のこと
見てたんだな。
なーんて。
東口から西口への
連絡通路をふたり並んで歩いて行く。
休日の駅構内は賑わっている。
少し声を大きくしないと、
会話にならない。
家族連れにカップル。
なんとなくカップルだけが目線に入ってしまう。
「西口って最近物騒な事件多いよね」
「あー、女子大生細断事件とか?」
僕は無関係を装う。
「そうそう。あと食い逃げ事件とか」
「へぇ〜」
「この前は連続放火犯とか。捕まってないらしいけど」
「情報通だね」
声がかき消されそうだ。
周りの声がうるさい。
人混みは苦手だ。
でも、人混みなら
たぶん・・・
目立たない事もあるだろう。
「ねぇ、デートでしょ」
「うん」
「手、繋ごうよ」
僕の返答を待たずに
由依の少し冷たい手が
僕の手に触れた。
僕はそれを拒否しなかった。




