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(37)人並みを望む事



ワックスを手に取って、

霧吹きで水気をなじませて

無造作という造作をする。

出来上がった髪型は

たぶん、数分すれば

変わった形になってしまうだろう。



朝。



いつもの食卓。

僕と僕の世話役の真島さん。


「今日は土曜日だけど?」


そう言いながらも温かい朝食は

用意されている。

僕はそれに手をつけ始めた。


今日土曜日だけど、朝早いね。


そういう意味だった。




早い事には理由がある。





今日は由依とデートする日。





【scene04:デート】





「真島さんはデートとかしたことある?」

僕は正直浮ついていて

彼女にそんな質問を投げかけてみる。


「デート?」

彼女はきょとん、とした顔をしている。

それは僕の質問の内容というより

僕が質問をしてきたという事に

驚いていた。

この人とはいつも一定の距離を保っているから

きっとこの質問は新鮮なのだろう。


「うん。デート」

「そりゃあ、あるわよ」


この人の詳細は知らないけど

未婚者だ。彼氏がいるかは知らない。


「初デートとか思い出あるの?」

「どうしてそんな事・・・もしかして」

「そう、そのもしかして」

なんて含みを持たせた。


歯を磨きながら、鏡を見る。

ブランド物ばかりだけど

僕はカッコいいと思うものを着ることにした。



別に拒否をしてしまえば

それでよかった。

それなのに僕はデートを承諾した。



別に由依のことを嫌いなわけじゃない。

アイツは僕のことなんて気にせず

接してくれるいい奴だ。



でも、好きかと言われて

即答は出来ない。



僕だって人を好きになったことはある。

人並みの恋愛経験を通して

大人になって

家庭を築く。

そんな平凡を願っていた。

でもそうじゃなくなった。



僕は曰く付きの人間。

僕には明るい未来はない。



でも、だからこそ

デートの誘いは嬉しかった。

なんていうか、人並みのイベント。



髪の毛を直しながら

僕は約束の場所に向かう。


駅の東口。

そこに集合して

僕たちは西口で買い物をしよう

そんな話をしていた。


先生は西口に行くなって言うけれど

別に怖いところじゃないと思う。



なんだろう

ここ最近、おかしなことが多すぎて

忘れてた。

なんかこう、普通に楽しむこと。

それを忘れてたんだ。



東口の改札横のパン屋。

そこが僕たちの集合場所。


由依の姿が見える。



って・・・え?



由依の横には、兄・風馬がいた。

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