(29)エンカウント
10階建ぐらいの高層ビル。
そこが透明教の地方本部。
他の建物と異なる異様な雰囲気を
放っている。
暗めの色調の建物が並ぶ中
それだけは明るい。
夜に異様なライトアップが為されているのも
その不気味さを際立たせていた。
「ここに宇宙人・・・」
父と母が信じていた
その神を崇める人達の集う場所。
「ゆーがこの教団と関」
「関係ないッ!」
断じて違う。
僕は関係無い。
「ごめんなのさ」
「で、宇宙人がいるの?どうするの?破壊するの?」
僕は近寄りたくもない場所に
連れてこられて、苛立っていた。
大通りに面したその建物の反対側・・・
反対側のバス停のベンチに座っている。
「もちろん、破壊するのだけれど・・・」
「けど?」
「ここにいるという情報だけがあるのさ。この建物の中から宇宙人を見つけないといけない」
ふたりでその建物を見上げる。
この時間帯にこの建物内に
何人の人がいるかは分からない。
「なるほどね。それならここで張り込んで、宇宙人が出てくるのを待てばいいんじゃ」
「この建物に住んでるらしいのさ」
そうだった。
住み込みで奉仕だのなんだのと
労働させる。
それが奴らの手口だ。
深みにハマっている奴ほど
そこからは抜け出せない。
「じゃあ、潜入する・・・的な?」
「うむ。それでゆーに手伝って欲しいわけなのさ」
「随分勝手だな」
そもそも、そんな簡単に行くもんか・・・
椎葉さんはポケットからスマホを取り出す。
九段下単元という男が
どうやら宇宙人に擬態しているらしい。
整った顔立ちの写真が画面に表示される。
「九段下、単元。名前は覚えやすいけど、なんというか、無機質な顔だね」
「コイツを見つけて、バキュンと破壊しちゃえば、それで終わりなのさ」
椎葉さんは簡単にそれを言うけど。
僕はやっぱり、出来れば人を破壊したくなんてない。
人殺しだ。
宇宙人だからセーフみたいな理論を
僕は勝手に作り上げていたけれど
人殺しは人殺しなんだ。
でも、この教団の人間に
同じ思いを持てるかといえば
難しい。
僕にはそう思う権利がある。
なんなら・・・
「ねぇ、椎葉さん?いっその事さ、建物ごと、破壊しちゃわない?」
僕はこの団体を全て破壊したって構わないのだ。
そもそも僕だって、椎葉さんに分けてもらった
力がある。これを使って、破壊。
壊してしまっていいんだ。
人殺しはもちろんダメだ。
でも、ここにいる奴らは・・・
「ゆー、何を言ってるのさ」
単純な返答に僕はハッとする。
「いや・・・」
「宇宙人じゃない人は破壊なんてしないのさ」
「あ、ああ・・・」
「何言ってるんだ。宇宙人だって破壊しちゃいけない」
「ん?」
僕と椎葉さんがその声の主に気付き、振り向く。
「いいか?一度破壊したものは戻らないんだよ」
すらりと伸びた身長。
敵とは思えないような雰囲気。
20時過ぎ。
新興宗教の建物付近。
破壊神と創造神が邂逅する。
下部楽風馬が現れた。




